◇大晦日スペシャル◇ ジュリには宇宙レベルでグレイセルしか合わないという話
今年もここまで読んで頂きまして誠にありがとうございます。
ハンドメイド以外のことが多く語られることもあり楽しみにしてくださっている読者様をヤキモキさせてしまったかなぁと感じることも多々ありつつの更新でした。
来年は……わかりませんwww!! 作者の執筆次第です!!
とにかく一年、ありがとうございました!!
先日クリスマスパーティーをしたばかりですが。
こたつで男子禁制ダラダラの会。毎年これでいいわ……。
女だけでお喋りしたいじゃん?
女だけでちょっとお下品な話とか過激な話とか怖い話とかしたいじゃん?
「ジュリとリンファが揃ってる時点で怖い話にしかならないよね」
キリアが発言とは裏腹の妙にテンション高めの期待のこもった顔をしてるのはなんで?
今年はクノーマス伯爵家の私個人のお部屋で開催となったこたつでダラダラの会。
フィンとライアスはメルサの家で私達のように近所の人達と飲み明かすことになったというのでね。
この世界版こたつを完備して、お酒におつまみ、料理にお菓子にお酒、お酒、お酒。
飲みます! わはははっ!
「楽しみにしてました」
グラスを並べてくれるセティアさんもワクワクした様子で良かった。
「ねえジュリ、この座椅子頂戴。すっごく座り心地がいいわ、改良したでしょ、これ」
既に一人優雅に飲み始まったリンファの自由さは無視。
「久しぶりに作ったから火加減間違っちゃって」
大丈夫よケイティ! ローストチキンの皮は焦げてるくらいが丁度いい、パリッとしててね。てゆーかお料理上手のあなたの作るものは多少焦げててもホントに美味しいから気にしないで。
「明日までここに住み着く……」
そう言って、こたつに首まですっぽり入ったら動かなくなってしまったのはルフィナ。あれ、去年もそんなこと言ってた気がする。いや、その前にあなたの家にもこたつあるのにここでもこたつの住人になるのね、ハルトが『ルフィナがカタツムリならぬコタツムリになって出てこない、相手してくれない』と嘆くのがわかる気がする。
外は雪。でも積もらなそうなチラチラと舞う程度。ククマットの冬らしい天気と言える。
寒い外とは裏腹に屋敷はとっても快適で、私の私室のこたつも絶妙な暖かさ。自然と体は解れゆったりとした姿勢になる。
姿勢がそうなれば心もそれに引きずられるわけで。
お酒が入れば尚更ね。
「グレイセルがいないからこの際だから聞こうかしら」
そう切り出して来たのはケイティ。
「ん、なに?」
「ジュリって、ここに召喚される前に恋人がいたのよね?」
また随分前の話を……。
「いたけど、別れてから一年以上経ってた」
「些細な事で喧嘩して別れたって言ってた気がするのよ、その理由が気になって」
「別れた理由? そんなの気になるの?」
「だって、あなたの恋愛観ってグレイセルとの関係を見るとちょっと特殊なんじゃないかしら」
するとリンファはしみじみした顔で頷いた。
「私も気になってたわ。なぁんか、些細な理由じゃない気がするのよね」
「ええっ?! 普通に喧嘩別れだよ?! 喧嘩して距離置こうってなって、付き合っていけないってなって別れたんだから」
「普通の喧嘩別れ……どういうものなんですか?」
セティアさんの素朴な疑問。だよね、旦那様に溺愛されてるセティアさんからすると喧嘩別れ自体がよく分からないことだよね。
だから喧嘩の発端となった事を話した。
「俺と仕事どっちが大事なんだって言われて」
「「「「……え?」」」」
コタツムリになっていたルフィナまで反応してムクリと起き上がってきた。
「それ聞いてなに言ってんのこいつ、ってイラッとしたの。そのことついポロッと口にしたら、お前のそういうすぐ遠慮なく言葉にするところがホントに腹立つとか言い出して、そこから派手に喧嘩」
あれ、皆なんでポカンとしてるの?
「で、その喧嘩で『こいつ無理』って思ったわけよ、改めて後日別れようって話になってすんなり別れたから……って、え、なに?」
何で皆、ドン引きしてるのよ?
「ねえ、元の世界でもあんたってブラック気質だったの?」
キリアのもの凄く引いた顔!!
「ちがうから!! あのね、とってもいい会社だったの、先輩はいい人ばっかりだし、上司も厳しいけど面倒見のいい人だったし、残業もあったけど月末と月初の忙しい時くらいで、プライベートに支障をきたした事なんてほぼなかったし。強いて言えばそういう恵まれた環境の会社だったから、先輩や上司の飲みの誘いは断る理由がなかったの、それで彼氏との約束をする前に会社の人との予定が入ったりしやすかったってのはあるけど、断じてブラックじゃなかったから!!」
「じゃあなんで恋人からそんな事言われてるのよ?」
呆れた顔しないでよケイティ。
「うーん、そのことなんだけど……多分、『構ってちゃん』だったのかな、と」
「ええっ?!」
そんなに大げさに驚かないでよリンファ。
「学生時代からの付き合いで……当時は『放っておけない』って私のこと物凄く面倒見たがる男と思ってたんだよね、でも今考えるとあれは構ってちゃんだった。当時からハンドメイドでアクセサリー作ったりしてサイトで販売したりするのが好きで作り出すと止まらなくて一人暮らしなのにご飯や洗濯も忘れるくらい没頭する時があったの。で、元彼はそんな私にご飯を買って来てくれたりして」
「あら優しい」
ケイティ、優しい男好きだよね。
「そういうことするのを苦にしない男と思ってたら、その喧嘩の時に『普通彼氏が最優先だろ!!』ってキレられて『そんな法律ねぇわ!』ってキレ返したら泣かれて」
「……ん?」
リンファ、なによその妙な反応は。
「泣きながら『お前は冷めてる』だの『俺なんてどうせ人生の添え物扱い』だのディスるしネガディブ発言連発。で、気づいたの。あ、こいつ構ってちゃんかも、と。私に褒められたくて構われたくて、甲斐甲斐しく私に尽くしてただけなんだなって。そう気づいたら物凄く面倒くさくなっちゃって。で、話し合って別れた。だから普通の喧嘩別れだよね?」
「「「「……」」」」
なんで無言?!
「……ジュリさんが、グレイセル様ととても相性が良い理由が分かった気がします」
「え、なにセティアさん、いきなりだね?」
「あぁぁぁ……本当にね」
「ケイティまで何よ?!」
「うん、ジュリにはグレイセル様がお似合い」
「ちょっとルフィナ?! こたつに潜らず理由を言って!!」
「ねえ、ジュリ」
「……リンファ、顔が怖い」
一口お酒で喉を潤した彼女はとても美しい笑みを浮かべた。
「あなたにはグレイセル。それ以上も以下もないわ」
何なの皆その反応は!! そしてキリアのポカンとした顔がちょっと腹立つ!!
その時。
コンコン、とノック音。
「はーい」
「寛いでいるところすまない」
グレイがやってきた。
「先日話し合った企画を纏めた紙、どこにしまった?」
「私の書斎机に入ってなかった?」
「なかった、セイレックが見たいと言うんだ、興味があるらしくてせっかくだから説明してやろうかと思ったんだが」
「あれー、書斎机じゃなきゃ……作業部屋のチェストか、書庫の書類棚の企画書の所かも。ちょっと見てみないと分からない。私も探すよ」
「いいのか?」
「だって今日見せないとセイレックさんは次いつ来れるかわからないでしょ」
私がみんなに離席することを告げて部屋を出た後。
「ねえ、リンファ。日本人の女性って皆あんな感じなのかしら」
「ケイティ、それを日本人の前で言ったらきっと批判に晒されるわ」
「やっぱり……あの性格と価値観じゃ、普通の男性は無理よね」
「無理に決まってるでしょ、だってあのグレイセルの極度の執着と溺愛と過保護が平気なのよ?! あの男の言動を『可愛いよね』って言えるのよ?! 『まあグレイだから』って笑い飛ばせるのよ?! 普通の訳ないでしょ、あんなのが普通じゃ世の中困るわよ!!」
「ある意味物凄く心が広いってことよね、あのグレイセルの愛情を受け止められるんだから」
「それって広いというのかしら。……愛情表現過多のグレイセルに対してサラッと『鬱陶しい』『そういうの後で』『今いらない』って言ってる時があるじゃない? グレイセルが突き抜けてる事を理解はしてるのよ、してるんだけど、面倒に思う時はあって、それを隠そうとせずズバッと言えるのよ」
「ジュリは構い倒されるのが平気な反面一人の時間も大事にするタイプってことね」
「というか束縛されても平気。事実グレイセルは束縛してるもの。そしてあの男はジュリの面倒を見るのが本気で楽しいと思ってるし、自分以外の男がジュリに釣り合うわけがないと信じて疑ってないのよね。それを隠しもせずむしろ周囲にアピールして牽制しまくりのあの男が、あれが平気なのよジュリは」
「……頭のネジ、ぶっ飛んでるわね」
「ぶっ飛んでるわよ。ジュリは明らかに構ってちゃんタイプではないの、ケイティの言う通り一人の時間を大事にするタイプ。それであのグレイセルが平気なのよ、意味が分からない。どういう神経してるのか未だに理解不能よ」
「そうよ……あの二人って、付き合う前から距離感も狂ってたわ」
「何故かジュリの側にはいつもグレイセルがいたんでしょ? おかしいでしょ、いくら好意があっても普通は相手の事を考えて距離を測るものだわ。それを全くしない男ってどうなの? そしてそんなグレイセルのことを『こういう人』の一言で済ませるってどうなの? ジュリも好意があったとしても普通それはないと思うのよ。……グレイセルの突き抜けたあの執着愛はジュリのせいでもあるわね」
私のいない所でケイティとリンファがそんな話をしていた。
キリア、ルフィナ、そしてセティアさんはそんな二人の会話に無言で耳を傾けて思ったそう。
(召喚されたのって、この世界にグレイセル様がいたことも理由の一つなんじゃ……?)
と。
それを企画書を見つけて戻って日付が変わる直前に聞かされた私は叫んだ。
「んな馬鹿な!!」
大晦日、何故か過去の別れ話がきっかけで、日付をまたいで数時間、『今後あなたの恋愛観で人様の恋愛事情を語ってはいけません』という内容の説教を皆からされました。
……解せぬ。
一年の締めくくりをジュリのおかしな恋愛観の暴露で終わらせてみましたw
去年も似たような話を書いてますが、今回は貴重な過去の話ということで。
お酒が入ってると余計なことまで話すんですよ、それいらないよってことを。それで墓穴を掘る人は沢山いるのではないでしょうか? なので墓穴を掘ってもらいました。しかも話噛み合わなくなるわ最悪支離滅裂になるわで、物凄く深い墓穴になるんです。
結論。素直に話したせいでジュリにはグレイセル、グレイセルにはジュリ、本人たちではなく周囲がそれを改めて認識するというお話でした。皆さんもお酒の席で恋愛観の暴露には気をつけましょう。
明日はアケオメスペシャル更新です。




