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『ハンドメイド・ジュリ』は今日も大変賑やかです 〜元OLはものづくりで異世界を生き延びます!〜  作者: 斎藤 はるき


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◇大晦日スペシャル◇ 今更なことを言われた年末

今年一年、『どうせなら〜』をお読み頂きましてありがとうございます。


日々、感想含めてブクマやイイネが増えているのを実感し、感謝しております。


今年最後のお話はスペシャル特有のゆる~い&短めのお話です。

もしかしてこういう家庭結構存在するんじゃなかろうか、という内容にしてみました。


 大晦日。

 皆さんはどのように過ごしてます?

 私は日本にいた頃、他の家庭とはちょっと違った年末年始を過ごしていたかもしれない。

 何せ両親が仕事の関係で海外にいる事が多くて。帰省は不規則で私が高校を卒業するとなおのこと、『お互い好きに過ごそう』という考えの両親だったから私とお兄は祖父母の家に行く事が多かった。

 そこで年越しそばを食べて、新年はおせちとお餅……とならないのが祖父母だった。

「年越しと言ったら麻雀だろ」

 こんなことを言うのは父方。祖父だけならまだしも、祖母もそういう人だったわけよ。年越しそばやおせちは麻雀より順位が低い。

 そんな環境だとね、何が起きるかというと、年末年始に食べるものは全部、買う。

 お節は当然、餅もなにもかも、全て、そのまま食べられる、温めて食べられる、そういうもので正月を過ごす。

 要するに何が言いたいのか、というと。


 父方、嶋田家の年末年始は祖母や母の味というものが一切出てこない。というか、食べやすいものが良いからと寿司と湯煎やレンジで温められるちょっと豪華なおかずやおつまみが出てくる。


「買ったほうが美味い、微妙な味のものを作る労力はネット検索に回せ、そして注文すればいい」


 この言葉は祖母の名言だとお兄が言ってたよ……。


 んじゃあ、母方なら所謂おふくろの味を味わえるんじゃ? と思うでしょ?

 母もそうだけど、その母つまりは祖母も料理に執着がなかった。要するに、料理がそんなに得意ではない。

 私の料理が上達しないのは家系であり、遺伝だ、だから気にするな、と母はもちろん父にもに言われたときは微妙な気持ちになったわ流石に。

 なので。

 母方に行っても結局は手作りはほぼ出てこずプロの作ったもの!!

 しかも母方の祖父母は何故かジャンクフードが大好きで、おせちは最低限で気持ち程度しかなく、メインはチキンなどがぎっしりのオードブル。そしてプリンやシュークリームが出てるし、餅も少ない、というか食べるかどうか聞かれ、そんなにいらないかなぁ的な事を言うと焼くのが面倒くさいからと出てこない。


 何でこんなことを長々と話したか。

 ハルトよ。

 私の顔を見て。

「栗きんとん食いたい」

「黒豆食いたいなー」

 とか言い出したの。

 だからしっかりと私のルーツとなる祖母たちと母について説明してやった。

「……つまり、作れねぇってか?」

「作れる顔に見える?」

「……手伝いとか、一回くらい」

「一回もどっちのおばあちゃんも母も作ったの見たことないけど」

「作ろうと思ったことは」

「ない。買えば確実に美味しいから」

「……」

 無言で打ちひしがれてるよ。


 グレイと結婚して初めての年末年始。


 でも変わりません、私達は。


 そして大晦日を迎え。


 ライアスとフィンの家にレッツ・ゴー!!













 で、普通に、当たり前のようにハルトとルフィナがいるのは一体何なのか。

「お宅もこたつ、導入したよね?」

「した」

「何で今年も来てんのよ」

「何となく」

 この奇妙なやり取りをしていたらフィンから耳打ちされた。

 ハルトがブルさんの肉やコカトリス、オークといった上質な肉の他に海産物も大量に差し入れしてくれた、と。フィンがニコニコだ、なるほど。

「フィンを丸め込んだわけね」

「わはは」

 フィンの機嫌がいいなら問題なし。


 そして先日の私とハルトのお節の会話を聞いていたフィンがなんと気を利かせて作ってくれてたの!!

 流石よね!!

 よっ、お料理上手!!


「あんたたちの話じゃどんなものかよくわからなかったからさ、適当に栗と豆を使って作ってみたよ」

「いいよいいよそれで! うわ、美味しそう!!」

 私と一緒にグレイとルフィナは彼女の料理上手を褒め称え持ってきてくれたものを見ながら『もう食べたい』『明日じゃないの?』なんて会話を交わしながら和気藹々。

「ちょっと、待て」

 ハルトが割り込んで来た。

「栗きんとんと黒豆どこだよ!!」


 ……何を言ってるのか、この男は。

「当たり前でしょ」

「え、え、何で?!」

「はぁ? あんたも私も作り方一切知らないんだから、栗きんとんと黒豆が出てくる訳がないでしょ」


 フィンが作ったもの。


 栗のタルトと数種の豆の具沢山スープ。


 絶対美味しいよこれ。


「そもそも、お節がないのが当たり前だった」

「マジか」

「中華のオードブルとピザとちらし寿司、そして焼き鳥。ちなみに中華のオードブルに辛うじてお節に入ってるものが気持ち程度入ってた気がする。そして父方も似たようなものって話したじゃない」

「組み合わせが独特だよ……」

「珍しいのか?」

「珍しいと思うぞ」

 グレイとルフィナはお節に興味津々、でもそれをちゃんと説明出来ない私に代わり、ハルトがスンとした顔でお節について説明していた姿が印象的だった。


 夜、フィンがやっぱり気を利かせてくれてこの辺ではなかなか手に入らないお蕎麦をハルトが持ってきてくれたからと茹でてくれた。

 蕎麦ウマーイ!

「ちなみに聞くけどさ」

「うん、なに?」

「年越し蕎麦はどうしてたんだよ?」

「あー、それね。父方の叔父さんが蕎麦アレルギーだったから年越しうどんだった。母方に行くとお祖父ちゃんの好物ということでカップ麺の蕎麦が出てくるから各自食べたいものを用意」

 ハルトが両手で顔を覆った。

「独特が過ぎる……」

 そうなの?


 去年とは違いちらほら舞うだけの雪。

 それでも外は氷が張るほど凍える空気。

 明日は初日の出を拝みに行こうという私とハルトに対してルフィナは断固拒否、仕方ないので戻るまでここにいるように言えば喜んでいた。この世界では新年に日の出を拝む意味が分からないというのは当然なので、何で寒いのにわざわざ毎日見ているものを拝まなきゃならないんだとルフィナがハルトに絡んでいる。お酒だいぶ飲んだせいだな、これは。


 まあいっかあ。


 大晦日だし。


 ルフィナ同様どうせ私達も酒臭くなって、こたつでダラダラするだけよ。


 テレビもネットもないこの世界の年末は、大人たちが駄目になる日ということで。


 去年も同じこと思ったような……。


 ということは、毎年思うってことよ。


 よし。


 飲もう、食おう! そして怠惰になろう!


 はははっ、一年の締めくくりとして最高の休日、それが大晦日!!











「お節の、再現は……」

 ハルトが未練がましく呟く。

「今更そんなこと言われてもね、言うなら召還前、しかも小学生の頃にでも言ってほしかったわ。その頃言われてればちょっとは料理頑張ったかもしれないし」

「その頃赤の他人じゃん、しかも、出会ってすらねぇよ」

「だね。つまり、この世界ではお節とは縁が無いってことよ」

「縁がないのか……」

 打ちひしがれた。

「それこそあんたのその無駄に何でも出来ちゃうチートな能力【スキル生成】とかでどうにか出来ないものなの?」

 ガバ! と身を起こしたハルト。その勢いにこっちが仰け反ってしまったじゃないの。

「そうだよ、俺にはそれがあるじゃないか!!」

「まあ、がんばってみてよ、来年のお正月に期待してるから」

「おう!!」


『来年はお節を用意してみせる!』と豪語したハルト。


 しかし。

 私は言いたい。


 そもそも彼はお節を食べたことはあるけれど、材料は勿論調味料もよくわからないはず。そしてお子ちゃま味覚の彼にとってお節は渋いラインナップとなっているため、その中で食べるものは限られているのではなかろうか。だからこそ、彼の口から栗きんとんと黒豆が出てきたわけで、他のものを食べるのかと問えばおそらく『ノー』に近い答えが返ってくるはず。それなのにお節を用意する意味はあるのかと、私は言いたい。

「言わないのか」

「言わない」

「何故?」

「ハルトが食べないなら私が食べるから」


 来年の今頃、このお家のテーブルにお節が乗っていることを祈っておく。






明日は◇アケオメスペシャル◇です!!

当然ゆる~いお話。


まだ☆やイイネをポチッとしていない読者の皆様、今年最後の大盤振る舞い是非お待ちしております。感想や誤字報告も是非!!


コロナや物価高騰などなど、世の中が何かと振り回された一年でしたが、個人としては長期休載することなく無事大晦日まで突っ走った一年でありました。

来年もコケずに突っ走れたらと思います。


それでは皆様、良いお年をお迎え下さい。

改めて今年一年ありがとうございました。



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― 新着の感想 ―
 一人暮らしだと料理好きでもなければ、作らないよなぁ。栗きんとんと海老つかった惣菜くらいしか食べない。
[一言] つまり……ジュリさんも麻雀が打てる?
[良い点] 家の親も毎年「もう今回でおせち創るのやめる」と言いながら欠かさず煮物を大量生産してるのでホントやめて欲しいw どうせ3日で飽きるのにww [一言] 今年も大変楽しませて頂きありがとうござい…
感想一覧
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