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『ハンドメイド・ジュリ』は今日も大変賑やかです 〜元OLはものづくりで異世界を生き延びます!〜  作者: 斎藤 はるき


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3 * 気づいたら危険物指定



 ……店内にいた人に『声』が聞こえてたよね?

 グレイセル様も【隠密】も、会計二人も。ちなみにお客さんとして来店してくれたスレインとシーラ、他の二人も。

「他言無用だ」

 突然ものすごい恐い顔してグレイセル様が。

「今の【声】について他言したものは侯爵家が制裁を加える」

 うわ!!

 恐い顔して恐いことを!!

 皆真っ青になって頷いていますけど!!

 ……あまりに不憫で、四人には咄嗟に口止め料としてすぐ側にあったブローチとかを無造作に掴んでいくつか渡した。なんとなく、そうしないとあまりにも可哀想で。侯爵家の制裁なんて、重すぎる。

 グレイセル様、まだ顔が怖いですよ。


 そして。


「レイビス、お前はこの事を王家に報告を」

 あ、この【隠密】レイビスっていうのか。しかも態度からグレイセル様より地位が低かったか、頭が上がらないらしいわ。

「グレイセル様……」

「いいか、ジュリについて、今の出来事について正確にお伝えしろ。王妃様には侯爵家よりジュリの作品をなるべく早く献上させていただくことも伝えてくれ。王妃様ならば必ず話を聞いてくださる、重く罰せられることはないと思うがジュリへの発言についてはそれなりにお言葉を頂くはず、それは心して聞くように。それにしてもなぜ、不敬罪などと……? 陛下の意向か? 王妃様ならばそのような言葉を使わぬようにするはず。それにあのお方は【彼方からの使い】を良く理解なさっているはずだ」


 聞く限り、王妃様はどうやら信頼が厚いらしい。王様は……まあいい。

 こっちよ問題は。

【隠密】は私に向き直るとと青ざめたまま黙礼してきた。

 そういうのいらないわよ、今さら。

 散々自分は王家の使者だと主張して権力誇示したくせに、私が何者か分かってたくせに、【神様】に咎められて、【変革】があるって知って、態度が激変とかありえない。

 ここに私を召喚したのは【神様】だ。

 そんなの王家に関わる人間が知らないはずがない。これだけこの世界に【彼方からの使い】っていう存在が馴染みのものなんだから。そして【変革】がとても重要なことで、それを私が隠していたことは事実だけれど、それでもこの【隠密】は王家が自分の後ろにいることを口にした。それはつまり、最初から私に対して好意的な感情はなかったってことよ。私の言葉の意味も探らず確認せず、いきなり不敬だと言ったのよ。


 バカにしてる。【彼方からの使い】のことも、そして【神様】のことも。

 そんなに王族偉いなら、神様いないでしょ、【彼方からの使い】だって存在しないでしょ。


 なんて思考してんのよ。そんな奴ら、関わりたくない。


「大変失礼しました……改めて出直して参ります」

「あ、そういうのいいんで。迷惑!」

 笑顔で言ってやった。

 グレイセル様も、えっ? って顔に。

 そして【隠密】がもうどうしていいかわからないって顔になって。

 仕方ない。

「グレイセル様、侯爵家からの献上品にするなら今フィンが持ってきたものでも足りますかね?」

「ん? ああ、ジュリの作品を知るには充分間に合うだろう。そうだな、鮮やかな色合いのものなら特に喜ぶかもしれない。足りなくても我が家が追加で購入させてもらうからそれを献上すればいい」

 訳がわからずぽかんとしているフィン。大きな箱に慌てて突っ込んで持ってきたらしく、レースはクチャクチャだし、その上に無造作にハーバリウムとかコースターとか乗ってるんですけど。高価な瓶を割りたくないって騒いでた人なんだけどなぁ (笑)。

 そして私は、鮮やかな色合いの小さな瓶のハーバリウム三本を棚から取ってその上に乗せ、わりと見映えのするレジンのパーツを三種類ザラザラと瓶からひっくり返して全部投入、ついでに小さいレースも瓶からひっくり返して投入して、他にもヘアピンとかブローチとかを乗っけて【隠密】に押し付ける。


「はい、こちらが侯爵家からの献上品です。ということで後ろがつかえてるのでお帰りください。次回来店なさるときは出来ればお店のルールに従って下さいね」












 王家がなんだ。

 かまってられるか!

 と私が顔で思いっきり言ってやった理由。

 扉の向こうから視線で訴えてくる。

 まだ?

 って。

 お客さんが覗き込んでる。


 なのでおひきとりいただきました。

【隠密】が山ほど抱えて帰って行ったのを見て、行列並んでる人たちはびっくりしてたね。どこの高貴な身分だ? って。

 王家です (笑)。


 気を取り直して商売商売。


 グレイセル様はものすごい聞きたいことがあるって顔してたわぁ。

 大丈夫です、ちゃんと話します。

 でも今は無理!!


 後ろで待機しててくれてたおばちゃんたちに会計とか一通り教えててよかった……。

 値札の付け方教えててよかった……。

 売れたの、凄い売れたの。

 どんどん補充してもどんどん売れたの。

 途中から、店で買い物した人に値段を聞いた通行人たちも次々並びだして、一部を除いてネックレス、イヤリング、ブローチ、ハーバリウム、レースも価格が低めの物からどんどん売れ始めて。

 あれだけあったラッピング用の袋は半分まで減って、リボンは足りなくなりそうで慌ててローツさんに高くてもいいからってそれなりに使えそうなものを買ってきてもらった。

 色が真紫だったのには笑った。なぜ紫。そこは赤でしょ、赤いリボン使ってるのに。












 はい。商品がすっからかんです。

 高額商品以外はほぼ在庫なし。明日から店休業しまーす。

 商品ないからね!!

 何とかするしかないわ。

 あと当分一人何個までって制限かけよう。

 無理だわ、これ。色々。


『商品がなくなったから用意できるまで休業するぞ。再開未定、問い合わせても無駄』

 という、またもライアスの威圧的な看板を立てて、扉に鍵をしめて。

「お疲れ様でした」

 私の声に

「……はーい……おつかれさーん」

 弱々しくおばちゃん達が返してくれた。

 さすがにおばちゃんたちもぐったりだ。

 でも現金な人たちよ。

「お疲れ様。今日は初日ということで父から祝い金を預かっている」

 ってグレイセル様が言ったら私を押し退けてグレイセル様の前に一列に並んでた。

 そりゃね。わかるよ、だって金貨だよ。一枚で百リクル。おばちゃんたちがもらわないわけない。頑張ったもん、もらっとけ!!


 明日から皆お休みにしました。

 一ヶ月は休業して、一週間から十日でどれくらい増やせるか確認しつつ在庫増やすしかないけど、レースは難しいなぁ、どうするかなぁ、とお茶で一息ついてると。

「ジュリ、明日うちに来れるか? 迎えにいくから」

 ……わかってますよ。

 自分から行くつもりでしたので大丈夫です。

 あれですよね、【変革】となんか新しくゲットした【選択の自由】という謎のもの。

 てゆーか、私に聞かれてもね。

 ハルトー、来てくれー。











 そして翌日。


「呼んだよな? 来た」

 って!!

 来たーーー!!!

 なにこの男!!

 何かヤバい【スキル】持ってる?!

 え、普通に恐いんだけど。

 なんてガクブルしたら、迎えに来ていたグレイセル様にハルトがちょっと妙な顔を向ける。

「なぁ、昨日レイビス見かけたんだけど、何かあったか?」

 その質問にグレイセル様の視線は私に。

 はい、私ですね、原因。

 それでハルトがまじまじと私を見てから急に訝しげな顔。

「つーかさ、お前はなんてもの与えられてるんだよ。めっちゃ危険物になってんじゃん」


 ………え。


 危険物?


 なにそれ。

 危険人物じゃなくて?

 いやいやいやいや、そもそも物騒な呼び方される覚えがない!!


「何がどうなって【選択の自由】なんて与えられた? それ、ヤバい。【スキル】が可愛くみえるやつ」


 今、なんですと?


 いらない。

 いらないから!

 なんでよぉ!!











 侯爵家で久しぶりに皆さんに会ったけど、顔が恐いわぁ。

【変革】、やっぱり重要なものみたい。

 隠してたのになぁ。

【神様】がいっちゃったもんなぁ。

 不可抗力かぁ。


 ハルトが説明してくれた。

 以前より詳しく核心をついた内容に私もびっくりするしかなかった。


「あの時言わなかったけどさ、【変革】は【彼方からの使い】なら誰でも発現する可能性があるものではある。ただ、発現するには条件があって。ある一定の場所に根付く性質の奴が発現しやすい。一ヶ所から、浸透させて徐々に影響を与えて急激な変化で世界が不安定にならないように緩やかな文化や文明の変革を起こさせるためのものだ。これはこれで周囲への影響力と強制力がある。【スキル】【称号】のないジュリにとっては身を守るに適した恩恵にもなってるな」


 なるほど。【変革】そのものが私を守る力なのか。害意が自然と阻害もしくは弱められるなら確かに身の安全は高まるね。


 それよりも。

 危険物ってなによ?


「ただなぁ」

 ハルトが困った顔をした。

「それよりはるかに強制力が働く三つの力があって、オレはそれを【神の守護】って教わったんだけど……守護っていうより、理屈が滅茶苦茶、凶器だ」


 うん、嫌だわ。やっぱり。

 ほんとになによ? それ。


「【神の守護】は三つ。ジュリの与えられた【選択の自由】。それから【意思の同調】。【運命の干渉】だ」


 なにやら怪しい響きがする。

「【意思の同調】はたとえばオレの思想とか理念に賛同する人には全く無反応、何の効力もない。けどその反対、否定するやつに影響する。オレに反対して俺を否定すればするほど、そいつの周囲に悪影響が出る」

「悪影響ってなによ?」

「勝手に争い事が勃発するんだ、そいつの周りで人間関係どころか実際の小競り合いで土地も人も傷ついて失われる」


 ひぇっ!!

 なにそれ!!


「俺を敵国の人間としてどこかの国が戦争仕掛けてきて俺がそれに気づいた瞬間、なんの脈絡もなくドラゴン現れてドラゴンブレスで敵国焼かれて蒸発するとか、説明出来ない理不尽なことで国が消えるような気がする。俺もよくわからんけど」


 ………。


 言葉が見つからない。


ここまでお読み頂きありがとうございます。


続きが気になる、好きなジャンルだと思って下さったら感想、イイネ、そして☆をポチッとして頂けると嬉しいです。

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