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『ハンドメイド・ジュリ』は今日も大変賑やかです 〜元OLはものづくりで異世界を生き延びます!〜  作者: 斎藤 はるき


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2 * 開店準備は順調

本日二話更新しました。

 


 店舗は直ぐ決まりました、以前は仕立屋だった一軒家です。

 他にも見たんですよ、イチオウ。でもね、しっくりくるのがなくて、やっぱりあそこだわ!!となりまして。

 路地一本入った先にあることと、規格が決まっているククマットの建物のなかで四段階あるうちの一番下、個人商店向きの小規模物件ということで家賃が予算内だったことも決め手になりました。うん、家賃大事。

 見栄を張ることではないので余計な出費をするつもりないわよ、ローン組んでますから!!

 侯爵夫人との契約でお金を借りたわよ、ないよりはあった方がいいのがお金。元手にあったお金は万が一に貯えておきなさいという助言を素直に受け入れた形ね。借金したせいか、先日から私の気合いが違う (笑)。


 改装については結構好きにしていいことが発覚して、お店のメインになる入り口両脇にある窓は窓枠と硝子を変えてもらった。薄茶色の煉瓦作りに屋根は濃い緑、それが小規模店舗の(およ)その作りになっている。それを守れば正面を抜いて八百屋も出来るし、窓無しの怪しい占いの館も (実際に近所にあった)も営業できるので、私のように窓枠と硝子を替えるだけの人はむしろ少数派とのこと。


 ドアは濃い茶色のアーチ型で真ん中より上に正方形のガラスが嵌め込まれていて可愛いのでこのまま活用。いずれステンドグラスにでも変えたいわね。

 それに合わせて窓枠は濃い茶色に塗り直してもらった。ちなみに、両脇のガラスは奮発して侯爵家の窓に使われている物を入れてもらうことに。気泡無し、歪み無し、くすみも色も無しの窓ガラスは高額。でも私のやりたい店は外から見て入りたいと思えないと意味がない。

 なので、ガラスは質を落とせなかったので侯爵家が用意してくれるとなったときは小躍りしたからね。


 店内はカウンターと棚はそのままで、壁両面にある立派な棚は私の背丈 (約百六十センチ)以上は全部はずしてもらった。元は仕立屋だから天井まで無駄なく布を立てていたのかもしれない。

 でも私の商品は基本小さいものばかりになる。視線を考えれば上は吊るして見せる大物がいいと思ったので、棚は今後も改装が必要そう。

 そして中央には長方形の大きな平台を作ってもらって、その両端に細い柱をたてて、その柱の間に棒か幅の狭い板を何本か張るつもり。

 柱と柱の間には引っ掻けて見せるアクセサリーを、平台には細かなものをずらりと並べたい。

 そして二つの窓辺にも台を付けて貰う。そこには見映えのするものや新商品を飾って人の目を引きたい思惑があるので。


 そして奥の作業場は、工房と呼ぶことにする。

 そっちのほうがそれっぽいから (笑)。

 この工房に元からあった大きな平台は撤去してもらい、その三分の二ほどの、下に収納があるどっしりとした安定感のある物を今作ってもらっている。私は裁縫関係はレース以外手を出す予定はあまりないので、大きな台はいらないし、初めは動きやすい空間がいいはず。後から変更することもあるしね。

 二階は、フィンの意見を取り入れた。二部屋ある片方は完全なる倉庫。今すでに糸もパーツも凄い数と種類になっている。徹底した在庫管理には一部屋は必要だろうと。そしてもう一部屋はフィンや他の人も作業が出来る環境と、話し合い等ができる大きなテーブルを入れて人の出入りも想定した部屋にする。

 他にはお金を保管できる金庫とか店をやるからには絶対必要な事務や経理関係のスペースを確保して、そこはパーテーション的なもので仕切ることも考えている。


 こんな自分の希望を言って職人さんにテキパキと案を出しながら現場を見学しつつ、相談し合っては変更をお願いしてたりしたら、グレイセル様にびっくりされた。

 女性でここまで最初から考えて使える実用性も兼ね備えた店を計画する人はほとんどいないらしい。

 そういうところも、変わるといいなと思う。女性進出させろとは言わないけど、少なくとも女性の意見で良いものが出来る事って沢山あるからね。そういうのが浸透してくれると嬉しい。


 そんなわけで、職人に面倒臭いうるさい客だと思われながら改装を進めること二週間。

 口出ししながら改装した甲斐があり、非常に納得いく仕上がりになった。

 特に壁を占めていた棚が大幅に外されたので、店が広く見えるようになった。カウンター後ろの棚はそのまま残しつつ、横にも縦にもしきりを増やして大きすぎた下の扉付きの収納も引き出しに一部変えたり、細かいものを収納するのに適したものにして満足だ。


 二階もすっかり様変わり。作業場になる大きなテーブルを入れた部屋はパーテーション代わりに奥行き浅い天井まで届く棚を作って、物を入れられるようにして、仕切った狭い空間は事務作業ができる机棚をその幅に合わせて作ってもらい、引き出しや金庫が置けるようにもしてもらった。

 倉庫になる部屋は、取り敢えず家具屋で売ってる棚を入れた。どれくらいのものをどれくらいいれるかわからないので、家具は余程汚したり傷つけなければ買い取りしてくれる店も多いという意見を取り入れた形。


 さて。


 素材と備品の搬入なんだけど。

「俺さぁ、和牛の差し入れに来ただけなんだけど、なんで働いてんの?」

「暇なんでしょ? 私に差し入れに来るくらいだから。ギルドで依頼も受けてないんだからいいじゃない」

 力持ち【英雄剣士】ゲットです。

 というかグレイセル様が捕獲してくれた。話を聞いてそそくさと帰ろうとしていたのを格闘して引きずってきたとか。

 さすが【称号】持ちと互角に渡り合える天才騎士。

 そういえば、この二人お友達なんだよねぇ。

 こんなに強い二人が仲良しなのって国にとってはやっぱり強みだよね、何かあれば手を貸してくれる仲なわけでしょ? 良好な関係なら得は合っても損はないよね。

 グレイセル様は侯爵家の人間だから表だって他所の国に手を貸せないかもしれないけど、それでも影響力は大きいはずだし、【英雄剣士】なら【彼方からの使い】としてどこでも歓迎される立場だし。


 ……外国進出するときは、ハルトが籍を置いてる国からだな。色々便宜図ってもらえそう。


 なんてことを考えつつ、掃除をしてたら。

「あれ! もう来たの?! 露店店番してからじゃなかったっけ?」

「そうなんだけどね。準備があるんだから行っておいでよって言ってくれてね」

 近所のおばちゃんたちが気を使ってフィンの露店の店番を代わってくれたそう。ありがたいね。フィンは開店日が決まり次第露店は完全に離れることになって。もはやマクラメ編みは朝飯前、かぎ針を使ったレース編みは恐ろしい速さで上達してて、テーブルクロスサイズの大物もすでにいくつか作り上げて、最近は独自のデザインなんかも研究を始めてるのよ。私の手を離れてフィンは職人の域に到達したっぽい。


 なのでこちらの世界だと特許のような個人が持てる権利『特別販売占有権』の登録をフィンに名義変更しちゃったから!!

 あのね、ホント凄いのよ。編む速さが私をとっくに追い越して、正確だしキレイなのよ。グレイセル様にそのこと話したら

「【彼方からの使い】の恩恵を強く受けることが出来る人間がたまにいるとされている、その影響かもしれないな。ジュリの場合人間の殺生には無関係な【技術と知識】だろう? そういうものは害があまり発生しないためか恩恵として影響しやすいと考えられているんだ」

 とのこと。

 それだけ凄い人なんだから私の代理として時々お店任せることもお願いしちゃおうと。


 ハルトにその話をすると、確かにそうかもな、とさらに教えてくれた。

「俺の影響もそれなりにやっぱりあるからな。パーティーを組んだ仲間は微々たるものだったけど回復力とか魔力が上乗せされてるって言ってたし。俺の場合は一緒に行動してるときしか影響なかったけど、お前の場合は【技術と知識】だから、恩恵受けた奴は自分のものにできるわけだろ? しかも継続して近くにいれば上達とか進化とかしやすいんだろうな」

 とな。


 フィンにはさらに進化して貰うべく私の近くにいて貰うことが決定したのはいうまでもない。

 ついでに、ライアスやおばちゃん達で非常に意欲的な数人も巻き込んで側にいてもらうとしよう。

 恩恵発動おねがいします。

 目指せ職人天国。









「しかし、お前よく動くなぁ」

「当たり前でしょ自分の店なんだから。他に誰が率先して動くのよ」

 ハルトに妙に感心されつつ、いる間はコキ使ってやろうと決めた時。

「ジュリ、棚の幅のことで職人が確認したいことがあるそうだ」

「あ、はーい。今行きます」

「それとうちの管財人が契約書類の最終確認をしたいそうだ、いつなら大丈夫だ?」

「今日の夕方では急ですか?」

「問題ない、私も同席するがいいか?」

「むしろ助かります、お願いします」

「じゃあその前に軽く食べよう、ライアスとフィンの分も用意する。うちで用意させるが何でもいいか?」

「文句いいませんよ! ありがとうございます、ワインはありますよ!!」

「ちょい待ち」

 なによ? ハルト。

「普通にグレイが開業準備に加わってることに違和感覚えるのは俺だけ?」

 ……それは言わないで。


 あのね。

 私も思ってる。

 でも、いる。

 なぜか。

 しかも非常に優れたサポートをしてくれてる。

 ライアスとフィン、そしておばちゃん達でさえさすがに違和感を感じてる。

 でも言わない。

 ツッコミ入れられない。

 本人が堂々としてるから。顔が正しいことしてますってめっちゃ主張してくるから。


「気にするな」

 ニッコリ笑顔で言われてもね。


「お前、外堀から埋めてくタイプ?」

「そんなつもりはないが、そうだなぁ……私より劣る人間にこの立ち位置にいられるとイライラして潰したくなるから私がやるのが色々と周囲に被害を出さないだろうな、と」

「ああ、うん、そうだな……」

「虫除けにもなるし」

「そだね……」

「やれることは全てやるつもりだ、そのどれかに引っ掛かって釣れるかもしれないだろ? とびきりの獲物を逃がす気はないんだ、どんな手を使っても一生かかっても捕まえる」

「怖い怖い、お前マジで怖い」


 男二人で何の話をしてるのよ?

 無視する。

 忙しいんだから私。


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 や は り か!(笑)>ほぼ常勤の騎士様
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