◇夏休みスペシャル◇ 夏の夜のくだらない話、その壱。
本日より夏休みスペシャルとして三夜連続更新します。
※注意!!
本編に全く関係ありません。
とても短いお話です。
そして思いつきで書いたどうでもいい話です。
一夜目、ハルトの語り。
この世界には【彼方からの使い】が広めたものが沢山ある。
特に【美食家】【食の匠】【料理人:極み】など料理に関する【称号】持ちの奴等が広めたものが多い。
俺が住むロビエラム国にもかつて料理に精通する【彼方からの使い】がいたお陰で食文化が発展してくれていた状態の所に俺が召喚された。なのでぶっちゃけ食事が不味いとか口に合わないとかなんて不自由なくここまで来れた。これには正直感謝したよ、マジで。
中でも俺が感動したのは蕎麦。
あったの、普通に。
ざる、かけ、はもちろん天ぷらに肉、山菜などなど『そば』が付くものがちゃんとあるんだよこれが。
醤油っぽい調味料に、鰹節っぽいものとか、本場の日本とは違うものではあるけどそれでも創意工夫されかなり忠実に再現されてて、多くはないけど『蕎麦屋』があるんだぞ!!
「『コシ』というんだったかな? 噛んだときの歯ごたえがいいね」
「浸けるスープ、これ味が濃くて結構イケるわね」
蕎麦初体験のマイケルとケイティはざる蕎麦を食べ、そんな感想。
「皇宮近くにある蕎麦屋とはまた違う趣ですね」
「バールスレイドは温かい蕎麦屋しかないから。冷たいのも美味しいわ」
バールスレイド国で既に何度か蕎麦を食べたことがあるリンファとセイレックは冷たい状態の蕎麦を食べていつもとは違う感覚に面白そうな顔をしている。
そんな中、一人。
無言で食ってるのはジュリ。
俺のオススメのざる蕎麦が旨い店に連れてきて出て来たものを食べ始めてからずっとひたすら食ってる。
ちなみに、グレイは蕎麦がそんなに好きではないとかでつまみにと天ぷらだけ食ってる。
ズルル、と豪快に啜ってざる蕎麦をひたすら食う女。
「旨いだろ?」
「うん旨い」
それしか喋らない。色気はない。うん、食いっぷりは素晴らしい。
「うーん、甲乙付けがたいねぇ」
「私は冷たいの好きだわ」
蕎麦を気に入って温かいのも食べたいとマイケルとケイティが追加注文し食べた後に始まった蕎麦談義。
「私は温かい出汁で食べなれてしまったせいかしら、これも悪くはないけれど食べて満足するのは温かい蕎麦ね」
「ああ、それ分かります。食べた後にホッとする感じが温かい蕎麦にはありますね」
リンファとセイレックはどうやら温かい蕎麦、マイケルとケイティは冷たい蕎麦と好みが分かれたようだ。ちなみに俺は冷たい派。
で。
旨い、しか言ってないジュリはどっちだろうか?
「鴨せいろ」
は?
「めんつゆ熱々、蕎麦冷たい、鴨せいろが好き」
……。
えーっと、温か、冷は。あれ、その場合麺は冷たいから、冷たい派ってことか?
「鴨せいろ一択。ごちそうさまでした、美味しかった!」
「美味かったならいいんだけど……つゆも蕎麦も冷たいかあったかいかならどっちだよ?」
「基本どっちも好きだよ? でも一番好きなのはめんつゆ熱々冷たい蕎麦の鴨せいろ。ネギはちゃんと炙ってるのがいい」
俺たちがポカンとしてるのを無視してグレイは店員を呼んで酒を追加注文。自由だな。
「あ、私も飲みたい」
「じゃあグラスを持ってきてもらおう。きのこの天ぷらというのもなかなか旨いな」
「あー、クノーマス領って天ぷら自体出してる店がほぼないもんね。美味しいよねきのこの天ぷら。今日ないけどナスも美味しいわよ?」
蕎麦屋に来て蕎麦を食わない男と、温か冷の問いに微妙にズレた返答をする女。
「ま、ジュリとグレイセルだからね」
何がどうなってそんな言葉で締め括る気になれたのか分からないがマイケルは笑って。
「ジュリにそんな質問するハルトが悪いのよ」
何故かリンファに責められた。
え、俺が悪いの?
「天ぷらは塩と天つゆどっちが好み?」
「塩だな」
「あ、私もー」
何なんだよお前ら! 蕎麦もそれくらい簡単に言えるだろうが!!
「私は苦手だからそもそも答えようがない」
「だからぁ、鴨せいろ」
「こういう意見もありますよね」
セイレック、なに『まとまりましたね』って顔してるんだよ。
「あんた人のこと言えないでしょ」
「なんだよ?」
「ハルトは薬味、何が好きなのよ?」
「何にも入れない」
「……」
「……あ、ごめん」
思い付きで書いてみたものの、まったく話が広がらず本編にも単話にも出来なかったのですが、『いるいる、こういう人』と共感してくれる人がいるかもしれないと思いきって投稿決めました。
ちなみに作者はお蕎麦もうどんも冷たいのが好きです。
あと二夜、こんな緩さが続きます。
コロナ、全国的に大変なことになってますね。
もう自粛も限界に来ている最中でこの広がり。早く明るい兆しが見えてこないかと切実に思います。




