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『ハンドメイド・ジュリ』は今日も大変賑やかです 〜元OLはものづくりで異世界を生き延びます!〜  作者: 斎藤 はるき


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2 * 勇者? 現在は転職したそうです。

 



 異世界からの召喚者がこの世界には結構いて、それが一般的な常識の一つになっていて、ハルトやマイケルに実際会って、グレイセル様やライアスたちに色んな話を聞かされてふと思ってきたことを二人に聞いてみる。

「そういえば……異世界からの召喚とか、転生とか、お決まりの【勇者】がいそうだけど、そのへんどうなの? 全くその単語聞かないからもしかしていない?」

 マイケル、なにその顔。

 今にも血管切れそうな青筋立てて笑ってるのが怖いんですが。

 ハルトさんや、どうした。

 人を殺しそうな、凄まじい形相は止めて。


 ん? これはなにかある?


()()()は、この世界に転移してきた人間で唯一有害だな」

「ああ、そうだね、害虫と一緒だね」

 おお!! 【勇者】いたよー!! (笑)

 そして、二人が知ってるひとー。

 でも、ずいぶんなこと言われてるよ、【勇者】さん。

「【勇者】が害虫と一緒って……どういうこと」

 なぜだ。


 聞いた。

 はい、最低の男でした。

 その男、ハルトと同じ時期に、とある神殿に召喚された一人なんだって。

 この【称号】は本来魔物討伐の最重要人物でそれに特化した【スキル】が付きやすく、補正もそれらに付随して能力は非常に多彩なものが与えられるいわゆるチート。【勇者】だから【英雄剣士】のハルトより強い存在であるはずだけど、なんでもこの世界の魔物討伐やダンジョンについて知ったとたん

「ゲームと違うの? は? なにその中途半端な設定。魔王もいない?ラスボスは? ダンジョンの宝箱は? 絶世の美女のお姫様は? 俺の知ってるゲームじゃないじゃん、クソだな!」

 となったそうな。


 そいつ日本人でしょ。

 そう聞いたら。うん、そうでした。召喚時二十二才のゲーム大好き大学生で、召喚された直後は意気揚々と討伐は任せろって息巻いてたらしい。

 でも、自分の中の異世界召喚のイメージと違ったんだろうね。現実知ったら

「はー、やる気出ない。俺さぁもう城で過ごすの飽きちゃったから外に出てもいい?」

 と言い出したんだって。無一文でほうりだす訳に行かないからお金持たせたらしいんだけど。

 娼館通いだって。

 連日通いつめて、散財して。

 初めのうちはその国の王様も我慢してたらしい。相手は【勇者】だからね。でもそのうちお金を出し渋ると

「そろそろやる気だしてもいいかなぁ。けどさあ、それにはそれなりの誠意ってものがあるだろぉ? 嫌なら、この国出てもいいんだけどなぁ」

 って期待させる言葉の裏で脅すようにお金を出させ続けたっていうのよ。

 その時点で最低なんだけど、周囲が冷たくなってきて、お金もどんどん減らされたら、今度は被害者面して喚いたそうな。

「俺は好きでここに来たんじゃない! 仕方なくいてやってるんだぞ!!勇者はいるだけで影響力があるはずだ!! そんな俺を蔑ろにしていいのか!!」

 とかなんとか。

 凄いよね、何にもしてないのにその自信。開き直りかもしれないけど、それにしたってさぁ。一応、【勇者】も私達同様に死を回避できたからここで生きてられるんだよね? その説明を受けなかったのか?

「受けてるよ、本人もそれを話してたことがあるそうだから。それこそ自慢していたらしいよ、『死んでしまうにはあまりにも惜しい人間なんだ』って自分で吹聴してたそうだから」

 うわぁ。マイケルの感情のこもらない笑顔は怖いなー。その顔でしゃべらないでー。


「でさ、その直後だな。俺と他のメンバーで魔物が激増して凶悪化してた問題のダンジョンの最奥まで到達出来たんだよ」

「到達するってことは、凶悪な魔物の殆どを討伐出来たってことだからね。その証拠にダンジョンから出て来てしまう魔物が翌日から激減したし、なによりハルトたちはここ数十年で一番の質と量の魔石を入手したんだ。それこそ売ったら【勇者】が散財した分をゆうに越える額の魔石をね」

「凄いじゃない。さすが【英雄剣士】。それじゃ【勇者】はお払い箱になっちゃうんじゃないの?」

「そういうこと。けどそれも一悶着あったんだぞ。俺が一躍時の人扱いになったのが悔しかったんだろ? どっちが強いか証明してやるって喧嘩売られてよ」

「はあ?!」


 結果、瞬殺されたんだって。【勇者】が。

 ハルトはちょっと覚悟決めてたらしい。だって相手は【勇者】でしょ? 神の恩恵は計り知れないだろうって。でも、それもある一定の努力もしなきゃダメなんだって証明にもなったそうな。

 まさか瞬殺出来ると思わなくて、たった一振りの剣で【勇者】がぶっ飛んで気絶したことに夢か? って思ったハルトの気持ち、分からなくもない。

 その喧嘩、つまり決闘は王様の命令で公開されたから見物人で闘技場は満員になったんだって。理由は明かされなかったけど、【勇者】【英雄剣士】の決闘なんてそう見れないもんね。そりゃ盛り上がるよ。

 でも、やってみたらわずか数秒、ぶっ飛んでひっくり返って気絶したのが、【勇者】。


 え?


 だよね。

 全員そうなるよね。


「王様も信じられなかったらしい。暫く呆然としてたよ。会場がどよめいて我に返った王様がすぐに神官を呼んだんだ。鑑定する必要があるって」


 あ、なんかわかったかも。

【スキル】【称号】って、この世界で生きるための保険であり交換条件でもある。神様がくれた恩恵は人の役に立つことを望んでるからくれたものだと私は思ってる。元々死ぬ運命だった私たちに別の世界で生きるために便利な力を授けるから人のためになることもしてくれたら有難いってことだよね?

【勇者】はそれをしなかったんだ。

【彼方からの使い】なのに、人として最低限の礼儀も守らないし、役に立つ気もない。それなのに【称号】を盾にして勝手気ままなことをしてきた。


「【称号】だけ残されて【スキル】が使用できなくなってたんだよ」

 マイケルの言葉に絶句。

 王様もすぐに疑ったのよね、【勇者】がいくら怠け者でも、瞬殺されるなんてあり得ないって。だから鑑定できる神官を呼んだのよ、【勇者】なのかどうか鑑定させるために。

「神官が鑑定して驚愕の事実が発覚ってやつ。オレも人のステータスは見れるから見てみたんだけど、そいつ【称号】だけ残されて、【スキル】全部停止させられて。ついでに【スキル】のところに新しいのが書き込まれてた。それがさ、そんなんあり?! ってやつで」




【スキル】注意!!

 ※スキルの全てが使用停止となりました。

 解除には条件がありますが、その条件についての詳細の開示は行われません。

 ※この【称号】の変更は不可能なため、そのまま維持されます。ただし全ての能力が【スキル】と連動しているため、使用停止期間は恩恵として与えられていた【補正】も全て機能しません。行動には十分注意してください。


 おお……そこだけ聞くとゲームにしか思えない。

 異世界のシステムよくわからないし私は【スキル】の一つも持ってないので凄いなぁ、としか言えません。


「って、神官がツラツラしゃべってるの聞いてさすがの俺もひいたわ」

「それって、さ?……ただの一般人」

 ということよね? だって【スキル】が使えないだけじゃなく、補正もない。つまり、私と同じだよ。

「そう」

「え? 【勇者】なのに私と同じ【スキル】なしって成立するの?!」

「でも逆はあるだろう?ジュリは【スキル無し称号なし】でぼくらの持っている【補正】すら持ってない。つまり、身体的には完全に地球人のままだけど、【技術と知識】っていう恩恵は持ってる。だから、【勇者】みたいになるパターンだって別に特別なことじゃないのかもしれないよ」

「そうそう。多分これが正しいって形はねぇんじゃねえの? 俺は【スキル】が多いし成長しやすいけど、【補正】がほとんどねえの」

「ぼくは【スキル】は二つだけだけど、この世界の魔法はほとんど使えて、それを使いこなすための【補正】が多いから。人によって与えられるものは全く違うだろうね」


 ほほう、ここにきて情報過多だよ。

 ……結論いうわね。私は関係ない話だわ。


「とにかく、【勇者】は今トンズラしてさ」

「は?」

「逃げ出して各地を転々としてるよ」

「……えー、それ、大丈夫なの? 魔物が闊歩する世界で、地球人生きてけないよ」

「自己責任だろ。それにしぶとく生きてるぜ?今は結婚詐欺で食いつないでる」


 女の敵になったのか。

 この世界、勇者いらないね。


 ちなみに、ハルトの【英雄剣士】。

 ふと気づいた。

 普通【英雄】と【剣士】って別じゃないの? という素朴な疑問をぶつけてみたんだけど。

「ああ、それ俺も聞いたんだけど」


『どっちもなれる素質があったからどっちも試したら付けられたんだ、面白いよお前。探す手間が省けてラッキーだった!』


「って、俺を担当した神に言われた。ぶっちゃけ面倒臭かったんだろ、二人探すのが」


 えーっと、ハルトさんや?

 担当って何?

 神様とお話したことあるの?

 色々言いたい。

 そしてその神様。


 職務怠慢!!!

 神様がやって良いことじゃないよ?!


 ……止めよう、このツッコミは止めておこう、これはあれだ、関わるとロクなことにならないパターンだ。ハルトの担当した神様、どうか私に関わらないでください、お願いします。














「あら、ジュリに干渉する前に嫌われたわね」

「……」

「さすがね。あなたの奔放さは人間にすら疎まれる奔放さだと証明されたわ、凄いわ」

「誉められてないよな?」

「誉めてないわね」

「……」

「誉められると思ってたらただのバカよ」

「……」





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