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『ハンドメイド・ジュリ』は今日も大変賑やかです 〜元OLはものづくりで異世界を生き延びます!〜  作者: 斎藤 はるき


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8 * 黄色ともうひとつ

※2025/03/04時点のお知らせを掲載致します。


◇600万PVありがとうございます!!◇


ここまで読んで頂きましてありがとうございます。


興味のあるジャンルだな、好みだなと思って頂いてイイねや感想、評価がまだの方は是非お待ちしております。


そしていつものように誤字報告ありがとうございます、助かっております、作者性格的に雑な所があるので心から感謝ですw




先日の更新後、今までにない評価とブクマを頂きました。ありがとう御座います。


ただ、ただ!! 突然で作者ビビっております。


あらすじにも記載しておりますが、魔物はじめ廃棄素材も登場人物も世界情勢も行き当たりばったりで緩めで、ついでにご都合主義で設定し執筆しております。


これは無理な設定じゃないか、矛盾してる、同じ事前にも読んだ、と読者様がご指摘したい点は多々あると思いますがそこは本当に緩く暢気に構えて読んで頂くしかありませんので、これからも寛大な心でお付き合い下さい。


※この件につきましては活動報告に最新の詳細を載せましたので併せてお読みくださると幸いです。

※100話ごとにこちらのお知らせを前書きに記載しますので、重複読みにご注意ください。

 黄色ともうひとつ。


 作りたくても作れないものは今でも多々あるけれど、それでも魔物素材や天然素材に助けられて自慢できる程には頑張って作ってる。

 でも、それでも今まで頭を悩ませてきた最たるものは、色。

 布製品と少し前に仲間入りした白土を使ったもの、もしくは押し花やドライフラワーにはあるけれど、どうしても使えない色があったのよね。

 それが黄色。


 スライム様ありきのうちの店で、そのスライム様で入手出来ていない色が黄色。スライム様は何種類かいて、中でも金属質な色のゴールドスライムとシルバースライムは超レア魔物で出逢うことも稀、見たら幸せになれるとか不幸が訪れるとか、各地で逸話があるような存在。そして次いでレアなのがイエロースライム。他の色つきスライム様もそこそこレアなのに、もっと見つからないって困るわぁ。

 グレイとハルトは一度だけ見たことがあるけれど、マイケルやケイティは未だに見たことなく、そして経験豊かな冒険者のエンザさん、そしてうちで雇っている元冒険者ゲイルさんも見たことないんだって。

 なんでもイエロースライムだけ生態がとても不思議らしく、スライムが発生しやすい土地では発生しないというなんとも矛盾した存在らしいの。そのせいで黄色い透明な作品が今まで作れていなかった。

 特に、初期から販売しているハーバリウムで黄色い花を基調としたものだけさざれ石のように砕いたスライム様が入っていないものしか売り出せていなかった。小振りで価格が低めのものは別として、大きいサイズになると皆あの色のついたガラスのようなスライム様たちが入ったものを好んで買っていく。だから自ずと黄色い花だけの大きめのハーバリウムはどうしても売れ行きが芳しくなく、限られた数しか作ってこなかった。


 でも。

 ここに来て入手したのがリザード様たちの鱗。


「うわぁ! 良い色じゃない!!」

 思わず声が弾んでしまいました。

 トミレア地区で集められた廃棄となる脆いリザード種の鱗。地元の職人さんたちが手間がかかることではないからと色を分けて集めてくれた中にそれがあったの。明るい黄色の鱗の山。

 私が両手で抱えて持つ大きさのバケツ三杯。他の鱗同様例に漏れず一枚一枚には濃淡があるけれど、それでもかなりはっきりとした黄色い鱗も多い。

 この黄色い鱗が廃棄となるのはサンドリザードという砂漠や荒涼地に発生するリザード種。一番色の濃い部分は赤に近いオレンジ色になるそうで、廃棄となる部分はほぼ薄い黄色なんだとか。良くみれば若干オレンジがかった色も確かに混じっている。


 これは嬉しい!!

 実は天然石にもビビッドな黄色は存在しなくて、近いものでもトパーズや琥珀になってしまい、うちのお店で扱える価格のものではなかったからね。

 これはホントに嬉しいよ!!

「ほう、新鮮な色味だ」

 グレイも興味深げにさっそく作った黄色を基調とした、黄色の鱗をくだいて沈めたハーバリウムを手に覗き込んでいる。

「今までなかった色だからね。かなり明るい黄色でしょ、ピンク同様冬の淋しい雰囲気に一役買ってくれそうよね」

「小さなハーバリウムでも黄色は人気がなかった訳ではないからな。ギジレジンが入った物だとキラキラした様子がどうしても目につき惹かれてしまう、これからは黄色の大きめのハーバリウムも売れるようになるだろう」

「そう期待してる」

「で、これは私が貰っても?」

「そう言うと思ってました」

 ちなみに、グレイの屋敷の寝室にある大きな飾り棚には、赤、青、紫、緑色のハーバリウムが並んでいるから今日から黄色も仲間入り。










 リザードの鱗で廃棄となる理由はその脆さだと再認識したのは、剥がしているうちに割れるものもあって、その剥がす行程で割れてしまった鱗はどうするのか聞き忘れたからとバケツで一杯分だけ届けられたから。うん、結構あるね。

「うーん? 全部色が混じってる、これだと用途限られるわよね?」

 キリアはそのバケツに小さいスコップを突っ込んで持ち上げてはザラザラと溢すのを繰り返し首を傾げる。

「そうなんだよね、剥がす時に割れたものはまとめてかき集めたらしくて。でも勝手に捨てる訳にはいかないからって、とりあえず一杯だけ。さて、どうしよっか?」

 細かく砕いた色つき擬似レジンを透明なもので固めたペンダントなどのアクセサリーは売り出している。でも、ここまで大量になるとアクセサリーだけでは捌ききれないよね。どうせ廃棄なんだから捨てれば良い話なんだけど、でもこうして『使うかもしれないから』と期待されてる身としてはその期待に応えたくなるわよ。


 うーん。

 ……色が混じってても、綺麗に見えるもの。この透明感を活かした、砕けた細かい粒を活用出来るもの。

 なにかあったかなぁ。


 そんな事を考えつつ、フィンとライアスと三人で家に帰り夕食を済ませた後、私は久しぶりにとあるものを引っ張りだした。

 それは、材料が揃うなら作ってみたい一覧表。

 お店を開くと決めたとき、ワクワクする気持ちで勢いに乗っていたせいか手当たり次第に作りたいものを書き留めていたのよね。今更だけど見返して『これ無理じゃん』と自分にツッコミ入れるようなものも書き込んでて乾いた笑いも出ました、はい。

「あ、そうか」

 でも、たまには過去を振り返るのも悪くないと思った。

「これ……」

 視線が一つに定まる。


 万華鏡。


 英語でカレイドスコープ。小学校の頃、友達と体験学習で作ったのよね、懐かしいわ。その時に豆知識も一緒に教えられて、覚えているのはギリシャ語の『綺麗な模様を見る』という言葉が語源になったとか、昔は百色眼鏡とか漢字は今と一緒でも『ばんかきょう』と呼んでたとか、色々。作るのに夢中でそれ以外あんまり覚えてないわぁ、残念よ (笑)。後でハルトに聞いてみよっかな。


 色つきスライム様で無駄になるものはなくて諦めていたし、質のいい色ガラスが安定的に入手出来なくて、入手出来ても高額なので諦めていた。

 濃淡の幅が広い、多彩な色が入手できるリザードの鱗なら。


 作れちゃうんじゃない?










 万華鏡で最も重要なのが鏡。三枚の鏡を鏡面を内側にして正三角形に繋ぎ、筒の中に入れる。これが本体の、極めて単純で基本的な形。中の鏡の枚数で見え方が変わるらしいけど、生憎私が知ってるのは正三角形だけなので、他は作るとしたら鏡のカットの試作から入ることになっちゃうよね。綺麗にカットするのもだけど、この世界は鏡がそんなに安いものではないから無理に鏡の枚数や繋げ方に拘ることはしないでおこう。百円ショップでそこそこ大きなスタンドミラーが売ってたのが懐かしいわ。


 手作りキットが簡単に手に入る元の世界ではミラーシートなる簡単にカットできるものがあって、だから子供でも作れたし体験学習や夏休みの自由研究や工作にと書店や文具店では夏前からその手の本に混じって並べられたのを見たことある人も多いはず。

 文明が開花して物に溢れた世界だからこそ、気軽に作れる物だったと今さらながら実感したよ。


 そしてオブジェクトと呼ばれるその鏡に映して観賞の対象となるものは濃く不透明なものより鮮やかで透明なものがその良さが絶対的に際立つ。万華鏡の、限られた極小の空間でありながらあの無限に続く変化を楽しむには覗いたときに光を通しつつも背景に他の物が映り込まないように磨りガラスのようなもので覆う必要がある。どうしても不透明なものを入れてしまうとそれだけ光が遮られて万華鏡特有の輝きや艶が失われる。

 だからこそ、リザードの鱗は最適。

 余程強く振ったりしなければもともと小さい粒にして入れるから砕けすぎて粉になることもないだろうしね。


「一応、出来たが、これが売れるのか?」

「あー、この見た目だから仕方ないのよ。大丈夫、外側はなんとでも装飾できるしね。こうしたのは凡その形を知ってもらうためよ」

 ライアスにお願いして本体を作ってもらったんだけど、作った本人はなんとも言い難い顔をしてる。

 うん、しょうがないよ、だって試作だもん。中にいれる最も重要な三面の鏡が重要だからね、外側はなんでもいいって言ったらちょうどいいサイズの筒がライアスの工房にはなくて、仕方なしに七夕祭りを開催した時に使った竹もどき、『鞭の木』なる魔性植物の幹がカットされて残っていたからそれを再利用。節を切り落としてちょうど良さげな太さのものに鏡を入れ固定してもらったからパッと見はただの竹の筒だもんね (笑)。ライアスがビミョーな顔をするわけよ。


 急遽の試作だったから磨りガラスも用意できなかったし鱗の欠片を入れる部分となる容器も用意出来なかった。とにかくどんなものを私が作りたいか分かってもらうために工夫を凝らす。

 ランプの上に薄い白い紙を乗せ、その上に色が混じった、極小の鱗の欠片たちを少しだけ乗せる。そして筒の片方には小さな丸い穴を開けた紙を張り付けた。

「それで真上から覗いてみて」

 ランプを灯し、筒を渡されたライアスが半信半疑な視線で一度私を見たけれど、無言でランプの上に乗る欠片を覗きこんだ。

「いいでしょ?」

 ライアスの二度見、貴重だわ(笑)。しかも二度目は長い。

「鏡以外の筒や欠片を入れる部分、そして光を取り込む磨りガラス状のもの、色々と試作が必要だけど……作りたいな、と思ってる」

 ライアス、私の話を聞いてる?

 うん、聞いてない。

 まあいいか。


 作ろうとしているのは、オブジェクトを入れた筒状の物を密閉し、本体に直接固定、回転させて見る一般的によく見かけるセルタイプ。本当はワンドタイプと呼ばれる試験管のような筒状のものを固定、もしくは稼働出来る物が回転数を極力減らして楽しめるからそれがいいんだけど、試験管のようなガラス……絶対高額になるから今は諦める。


 そしてオブジェクトと一緒にオイルを入れられるとなお良し。ゆっくりと変化する柄が神秘的なのよねぇ。

 少量で済むから無色透明に近い、変色しないオイルを見つけて使いたい。余程高額なオイルでなければね。


 セルタイプについてはライアスとちょっと話し合ったら試作品としてすぐに形になりそうな案を出してくれたのでそれで試す。

 円形の木の筒をくりぬいて、片面は無色透明の擬似レジン、そしてもう片面には磨りガラスを使う。磨りガラスは職人のアンデルさんのところに売り物にならない溶かされて再利用されるのを待つ小さな欠片がいくつかあったのでそれを指定サイズの円形にカットしてもらい格安で売ってもらった。

「サイズを指定してガラスも揃えられるなら金属板でセルの筒部分を作ってもいいな」

「ああ、それだと作れそう?」

「溶接部分の見た目は悪いが」

「本体に埋め込んじゃえば問題ないよ、金属だといいね、重くなるけど木材は時間の経過で変形する可能性があるし、オイルを長期間密閉するには適さないから」

「ギジレジンと磨りガラスの面の接着は金属用接着剤のでいいのがある。ギジレジンでもいいが使う度にスライムを潰す手間があるから接着剤の方が効率がいい」

「なるほど。ただ、本体に完全に埋め込むと光の取り込み面が少なくなるから必然的に暗くなるよねぇ」

「それは妥協するしかねぇな。ガラスなり擬似レジンなり、オブジェクトを入れる部分は小さい、かなりの試作が必要になるだろ。追々でいいんじゃねえか?」

「そうだね、今は万華鏡を商品化するための基礎の構築だから。改良版として後日出してもいいしね」


 こういった行程の相談と部品や素材の相談はやっぱりライアスだね。サクサクと話が進むから気持ちいいよ。


 そして二日後。

 万華鏡試作第一号から四号までが完成した。


次回は二話更新予定です。本編、季節もの単話を予定してます。

季節ものは記念日や祝日ではなく夏の最後の思い出的なお話です。

シリアス皆無、ハンドメイド無関係のただただうるさいだけのお話になるかと。

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