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スライムマスター菊地 〜最強粘体生物伝〜  作者: 熊乃げん骨
第四章 王国大防衛戦線
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第四話 礼儀

 城門にたどり着いた王子一行を待ち受けていたのは三人の人物だった。


 執事服を着た美青年と、その両脇を固める二人の大男。

 執事服の男はキクチの親衛隊である一郎だ。彼の役割は王子一行を案内し、エスコートすること。

 そしてその隣にいる人物、彼らの名前は「右門」と「左門」。どちらもハイ・スライムだ。

 スライムたちの中でも人化状態の体格が抜きん出ている二人は門番として村を警備していることが多い。


 キクチは見た目からして強そうなその二人を門番として配置することで王国側にこちらの武力を誇示し、この村は安全なのだとアピールしようとした。


 しかしこの企みは結果的に裏目に出てしまった。


「隊長。あいつら……ただものじゃありません」


「ああ、分かっている」


 騎士団は三人の強さを見ただけで察知する。

 城壁のせいで警戒心が上がったところに、更に強者が複数名現れたことで彼らの警戒心はMAXになってしまう。

 スライムたちには彼らに危害を加えるつもりはないのだが、騎士団からしたらそんなこと知りようが無い。


 特に一郎はキクチに「王子一行には出来うる限り最大限に丁寧にもてなせ」と命じられている。

 しかしそのせいで気合が入りすぎて人を殺せそうな目つきになってしまっている。これでは騎士団が警戒するのも無理はない。


 しかし一郎は相手が警戒しているなどとは全く思わずに話しかける。


「ようこそいらっしゃいました、王子御一行様。わたくし今回皆様をエスコートさせていただく一郎と申します。どうかお見知り置きを」


 そう言って一郎は軽やかにお辞儀する。

 その様を見ていたフロイ王子は驚く。まさかこの村に礼儀作法に精通している者がいるとは。

 それにスライムを何体も従えていることは知っていたが、まさか人間の仲間もいるとは知らなかった。

 おまけにこの城壁。スライムマスターの仲間はいったい何人いるんだ?


 フロイは一瞬で様々な憶測を立てるが、これだ! という結論に達することはできなかった。

 しかしそれも無理ないことだろう。常人ではスライムが人に変化できると言う発想にはならない。


 そんな中騎士団長エッケルは一郎の前で馬から降り、名乗る。


「私はエクサドル王国騎士団団長、エッケル・プロムナードと申す。この度は急な訪問に応じていただき感謝する。キクチ殿は中におられるのだろうか」


「ええ勿論。我らが主人は中でお待ちです」


 やはりキクチが彼らの主人なのか。

 フロイはその事実を知り少し胸を撫で下ろす。

 もしかしたら自分たちも知らないもっと上位の存在がいるのではないかと考えていたがその心配は杞憂だったようだ。

 もしキクチが弱かったら今回の件はご破算になってしまうので心配していた。しかしその心配がなくなった今、フロイが心配なのがキクチが強すぎたらどうしようということだ。


 もしキクチの持つ戦力がこちらを遥かに超えていた場合、自分たちの頼みなど良くて門前払い、悪ければここで殺されることもあり得る。


 フロイの部下はそこまで考えていないようだが、彼は最悪の自体まで想定していたのだ。


 しかし幸いな事にキクチの部下は礼を重んじている。これならこちらが非礼を働かない限り大丈夫だろう。

 フロイは国を、そして部下のためにもキクチたちに最大限の礼儀を尽くさねばと心の中で誓った、


 その為にもフロイは自ら馬車から降り、その身を晒す。

 騎士団の者たちは慌て馬車に戻るよう頼むが、フロイはそれを制す。


「いいんだ、一人身を隠すのは礼儀に反する」


 フロイはそう言うと一郎の前に立つ。

 その瞬間フロイは身がすくんでしまう。目の前の人物から恐ろしい気配を感じたからだ。

 この気配は強者のみがもつ特有のオーラ。

 騎士団長エッケルからも感じたことがあるこのオーラだが、それが自分に向けられたのは初めてだった。

 思わずふらついてしまいそうになるフロイだが、必死に足に力を入れ踏みとどまる。


「私がエクサドル王国第三王子フロイ・エクサドリアだ。私からも礼を言わせてもらう」


「これはこれは王子自ら御丁寧にありがとうございます。では立ち話もなんですし中へどうぞ」


 一郎はそう言い、パチンと指を鳴らす。

 すると城門がギギギギ! と音を立て開き始める。


 フロイたちは一体中はどうなっているのかと興味津々に覗く。

 しかしその中にいたのは彼らの想像を絶する光景だった

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