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第八話 後ろ盾

「ちょっといいか?」


 俺は二人の話を遮って割り込む。

 するとミギマは俺の方を見て少し眉をピクつかせる。表情にこそ出てないが気分を害したようだ。気をつけねば。


「はい。えーとあなたは……」


「俺はキクチ、今回はロバートの護衛でここに来ている」


「そうでしたかぁ! 挨拶が遅れて申し訳ございません、私はミギマと申します」


 ミギマは丁寧に挨拶をしてくるが、仕草からどこか余所余所しさを感じる。

 俺のことを意地汚い傭兵だとでも思っているのだろう。やはりこの国では商人以外は肩身が狭いか。


「理解してくれると思うがこことタリオ村は遠い(・・)。だからここに頻繁に来ることは出来ない。それは理解していただけるか?」


「ええ勿論わかってますともぅ。しかしこっちも慈善事業では無くてですね、今回っきりの取引というにおは私たちにメリットがありません。一度こんな高品質な物を売りに出してしまえばまた要求されちゃいますからねぇ」


 宝石や魔道具などの一点物であれば一回きりの取引でも問題ないだろうが、生憎俺たちの持ってきた者は何回も使う消耗品ばかりだ。

 少量しか入荷出来ないのなら入ってこない方がマシなのだろう。


「……もし。この件を断ると言ったらどうする?」


「別になぁんにもしませんよぉ! ……まあウチを蹴ったと周りが知ったらこの国では商売をしにくくなるかもしれませんがね♪」


 分かりやすい脅しだ。

 だがもしここでこの件を白紙にしては本当にこの国で商売を続けるのは難しくないだろう。

 俺たちには後ろ盾がないからな……。


 ……ん?後ろ盾?


 よく考えればあるじゃないか。

 俺にも頼れる後ろ盾、が。


 俺は首から下げているタグを服の下から取り出しミギマに見せる。

 するとそのタグを見たミギマは今までの余裕だった表情を変え真剣な顔になる。


「そのタグは……そうでしたか。冒険者だったのですね」


 俺が冒険者。しかも銀等級であることを知りミギマは態度を改める。

 冒険者組合は大陸でも有数の力を持つ組織だ。銀等級はその中でも上位20%に入る存在、無下に扱っては彼の立場も危ういだろう。


「……このタグを見せた理由がわかるか?」


「ええ、先ほどの脅迫めいた発言は取り消させていただきます。ここでは何もなかったことにいたしましょう」


 今度は俺が脅迫しているみたいになっちまった。

 違う違う、俺がしたかったのはこんな事じゃねえ。


「さっきこの商会の中に冒険者組合のエンブレムがある馬車を見かけた。ここは冒険者組合とも売買をしているんじゃないか?」


「ええそうですが……それがどうかしました?」


「冒険者組合が何かを出荷することは無いだろう。つまり冒険者組合は何かをここから買っているという事になる。そして冒険者組合が欲しがるものとすれば想像はつく。回復薬だ」


 ローナさんは商国と王国に定期便があると言っていた。その一つがここアクィラ商会と冒険者組合で繋がっていたのだ。


「たいした想像力ですね。その通りです、我々と冒険者組合は回復薬を取引しています、しかしそれがどうし…………あ。まさか……!」


 ミギマは喋ってる途中でなにかに気づき驚いた声を出す。

 どうやら俺の考えていることがわかったみたいだな。


「ま、まさか、我々と冒険者組合の定期便にあなたたちの商品を運ばせる気ですか!?」


「ああ、その通りだ」


 俺は自信満々にそう言い放った。

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