獣人との出会い1
「一宮高校二年、も、もり、森内正宗。 俺の、名前?」
ってあれ? なんか声高いような?
正宗は自分の体をまじまじと見つめ始める。
ぷにっとしたほっぺた。
肌のもちもち感。
髪の長さ。
体の……。
「女の子になってる!!?」
まてまてまて、落ち着け俺。 まず状況を整理するんだ。
えっと、まずここはどこだ? どうしてこんなところにいるんだ? 誰がやったんだ? なんで女なんだ?
あぁくそ! 落ち着けるわけねぇ!!
こんな漫画やアニメみたいな展開にどうやったらなるんだよ!!?
と、一人で頭を抱える正宗の背後から、鋭く正宗を睨み狙いを定める一匹の魔物がいた。
「そこの森人族」
聞こえたその声に振り返ろうとする正宗を、更に聞こえた声が止める。
「動くな。 お前がなぜこんなところにいるのかは知らんが、ここは我ら獣人の縄張り。 お前は今ここで殺されても文句は言えんのだ。 素直に言うことを聞け」
めっさこえぇぇぇぇぇえ!! なにこれ!? ちょーこえぇぇぇよ!!!
「なぜここにきたのだ?」
俺に質問してるのか?
「答えよ!」
「はひっ!? わ、わかりましぇん!!」
「では何しにきたのだ!」
「そ、それもわからにゃいです!!」
「お前! 嘘をつくのもいい加減にしろよ!」
ガサゴソという音をたてて近付いてくるその声の主が正宗の肩に手をかけ無理矢理押し倒す。
「お前は我らの最後の村まで侵略しにきたんだろ!? エルフめ!」
正宗が初めて見た声の主は、自分より幼い獣耳の幼女だった。
「え、エルフじゃ、ない?」
そしてその幼女は正宗の顔を見て、勘違いしていたことに気づく。
「だって、なんで、この森はっ……! ふぐっ、うぐ……、うぇーーーん! ごわがっだよぉーーー!! エルフだっだらどうじようがどっ……!! びぇーーーーん!!」
そして勘違いだったことに安堵したのか、泣き出してしまった。
ていうか押し倒されたままなんですけど!!?
上に乗ったまま泣かないで! 涙が! 鼻水が!?
それからしばらくして落ち着いたのか、幼女は正宗の上からおり、正座をする。
「急に襲ってごめんなさい」
礼儀正しい!?
正宗もつられて正座をする。
「えっと、名前、聞いてもいいかな?」
「……ノウラ」
「なんで俺を襲ったんだ?」
「エルフが攻めてきたと思って」
エルフが攻めてきた。 その一言から正宗が察することができるのは、エルフが強くて獣人が弱い、ということだった。
「えっと、俺は人間なんだけど……」
「見ればわかる」
見てわかるはずなのに襲ったの!?
「エルフは皆加護をつけてるから」
「加護?」
「アクセサリーの形をして体についていて、エルフはそれを外すことができない」
それがなかったから人間だってわかったのか。
「じゃあ、俺は無害なんで、見逃してもらえます?」
「それはできない。 我らの村に連れて帰る」
えぇー……。
そして正宗は獣人の村に連れていかれることになった。