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プロローグ
フロリア大森林。
各国が領土を増やそうと切磋琢磨する中、いまだにその森だけはどうすることもできなかった。
かつて森人族と人間が共存したと言われる国が滅んでから百年ものあいだ、その森は人間を受け入れることはなく、人々はいつしかその森に近づくことさえしなくなっていった。
目が覚めると、そこは自分のベッドの上でも、ましてや自分の家ですらなかった。
見渡す限り木と草に囲われたどこかにいた。
どうなってんだ? 確か俺は……あれ、思い出せない。
状況整理ができずにあわあわしていると、手元にあったなにかに気づく。
なんだこれ。 俺の鞄なのか?
中を見ると、見覚えのある物品が出てくる。
その中に生徒手帳というものがあり、それを開くと中には俺の写真と名前が書いてあった。
「一宮高校二年、も、もり、森内正宗。 俺の、名前?」