Part7 ごんぶとエルフとカロ〇ーメイトと魔王軍
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「ふわぁ~ いいお湯だった~ お待たせしましたエリーゼさん」
ハーゼルが扉を開けると、驚き狼狽えるエリーゼ隊長が居た……
「はわわわ~っ! はっ、ハーゼル様っ!? やっぱりエルフでしたのね!
そのお美しいプラチナブロンドの髪っ! 透き通った白い肌っ!
そして何よりもその美しい青い目っ! 間違いないですわ!」
風呂上がりのエルフを見たエリーゼの興奮具合に、ハーゼルはちょっと引き気味になりながら、
夕食をどうするか相談することにした。
「エリーゼさん、この山小屋って、非常食か何かを置いていたりしませんか?」
「ん~ 山小屋に食料を置いておくと、魔物が匂いを嗅ぎつけて荒らしに来るのよ、
だから、置いてあるってことはないと思うわね……大丈夫よ、一日くらい食事を抜いても死にはしないわ……」
そうは言ったものの、明らかにエリーゼは暗い表情をしている。
実はさっきからお腹の音がフルオーケストラを奏でており、ハーゼルもそれを心配してエリーゼに相談したのだった。
ハーゼルが持っている食料は、カロ〇ーメイトだけなので、正直この世界で受け入れられるものなのかもわからなかった。
まずい!と、言われて吐き捨てられたりすると、それはもう悲しい気持ちになるだろう。
ただ、先ほどから聞こえてくるエリーゼの腹の音を聞いていると、提供しないわけにはいかなそうだ……
「あの、食料はあるのですが、お口に合うかどうかもわかりませんし、大したものではありませんが、どうぞ……」
そういって、アイテムボックスから取り出したカロ〇ーメイトをエリーゼに差し出すと、
目の前のエリーゼが固まってしまっていた。
「……ハーゼル様、今どこからそれを取り出したのよ……」
「えっと、アイテムボックスからですけどなにか?」
「アイテムボックス!? 収納容量はどのくらいなの?」
「うーん、試したことはないけど、水と食料は無限に入ると思うよ?」
「無限!? そっ、そんなの聞いたことがないわよっ! 王国の最上級クラスでも、
荷馬車の半分も入らないわ、エルフの特殊魔法かなにかかしら?」
「えっと、俺、実は魔法の事よくわからなくて、多分使えると思うんですけど、
教わったことが無いのでまだ使えません」
「はぁっ? 本当なの? エルフって言ったら風魔法とか水魔法の使い手よ?
貴方の育ったところでは教えてくれなかったのかしら?」
「すいません、俺、超田舎から来たので魔法とか全然知らないんです……」
「……仕方ないわね~ 魔王国に付いたら、貴方の魔法特性くらいなら調べてあげるわよ、
アイテムボックス持ちなら、魔石の運搬の仕事も斡旋してあげられるわね!
むしろお願いしたいくらいだわっ!」
「エリーゼさん、ありがとうございます! 初めて王国に行くので楽しみです!
あっ、あと、さっき出したやつが食料なんですけど、食べてみますか?」
「あの黄色い箱が食べ物なの? 紙で出来てるみたいだけど……」
「箱の中に袋が入っていて、その中に食べられる部分が入ってますよ、今取り出しますね」
袋を破ってカロ〇ーメイトを取り出すところを、エリーゼは興味深そうに見ていた。
そして、手渡されたカロ〇ーメイトの匂いをかぐと、一口かじって咀嚼すると、
驚きに目を見開きながら『おいしいいいいい!!!』と、大喜びした。
今回エリーゼが食べたのは、フルーツ味だった。
「何これ! すごく甘くてレモンの味もするし、フルーティーなパンのような味ね!
ほのかな甘さを感じるけど、これって砂糖も使っているのかしら?」
「えぇ、このフルーツ味には、小麦粉、砂糖、卵、レモンピール、アーモンド、グレープフルーツ、大豆、
塩等が入っているみたいですよ、栄養バランスを考えて作られている食べ物です。」
「素晴らしいわ! 魔王国軍の携行食として正式採用したいくらいだわっ!」
「そっ、そんなに喜んでもらえるなんて……なら、こっちのチョコレート味なんてどうでしょう?」
「チョコレートぉ!? ハーゼル様はもしかしてどこぞの王侯貴族でいらっしゃいますの?
私もそれなりの地位におりますけど、滅多な事では口にすることが叶いませんもの……」
この後、チョコレート味に続いて、チーズ味やらプレーン味を出し、メープル味を出したところで、
エリーゼが嬉し泣きを始めてむせてしまったので、ハーゼルはアイテムボックスから"い〇はす"を取り出して、
蓋をとってエリーゼの前に差し出した。
「エリーゼさん、飲み物を出すのを忘れてました、今回のは、みかん味の水ですけど、
普通の水が欲しかったら教えてください、ローテーションで出てくるみたいですから」
「……いいえ、それを頂くわ、ありがとう」
ペットボトルに口をつけて、恐る恐る飲み始めるエリーゼだったが、
途中で目を見開き、勢いよくペットボトルを吸いだし、2秒もかからないうちにペシャンコにしてしまった。
(すげぇ、ペシャンコだっ!)
「おいしい、おいしいわっ! 魔王国にもレモン風味の水があるけど、これは全くの別物ねっ!
程よく冷たくてとっても甘いわね、ハーゼル様はいつもこのような食事をなさっているのかしら?」
「う~ん、いつもというわけではないのですが、今の手持ちはこれしか無いんですよ、
出来れば肉とか魚も食べたいんですけどもね、狩りをしようにも、食べられる生き物に出会わないんですよ」
「そうでしたか、でしたら、魔王国に付いたら沢山肉料理をごちそう致しますわっ!
ハーゼル様のお口に合うかどうかわかりませんが、うふふっ♪」
この世界の情報を聞くつもりだったハーゼルだが、なぜかカロ〇ーメイトの話題で盛り上がってしまい、
夜も更けてきたのでエリーゼをベッドまで運び、自分もほかの部屋のベッドに潜り込んで寝てしまった。
翌朝目を覚ましたハーゼルは、エリーゼを起こしに行ったのだが、
まだエリーゼは一人で歩くことができない状態だったので、朝食のカロ〇ーメイトを食べた後、
再び背負って先を急ぐことになった。
「ハーゼル様、度々申し訳ございませんわね、昨日魔力銃を暴発させたときのダメージが残っているみたいですわ」
「大丈夫ですよエリーゼさん、魔王国まで後ろにいてください、今日一日あれば到着すると思いますから」
「ごめんなさいね、ここからだとお昼前には到着すると思うわ……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ところ変わって魔王城作戦指令室では、先遣隊が将軍に報告を行っていた。
「なんだとっ! エリーゼが敵の手に落ちただとっ!」
「はっ、ゴーレムが破壊された後、エルフがエリーゼ様に拷問を行い、すさまじい悲鳴が聞こえていたとのことです。
何度も悲鳴を上げるエリーゼ様を無理やり背負って連れ去りましたっ!」
「それで貴様らだけおめおめと逃げ帰ってきたというのかっ!」
「もっ、申し訳ございません将軍閣下! ご息女であられるエリーゼ様をお救い出来ず……逃げ帰ってまいりました……
我々先遣部隊一同、これより武装して奪還に『私が行こう』いく所存……まっ、魔王様!」
「なりませんぞっ! 魔王様、このフットルの娘であり、魔王様の姪であるエリーゼと言えども、軍籍に身を置いた以上、
こうなる事態も十分予測しておりましたゆえ……」
「よいのだフットルよ……そなたも聞いておるであろう? 魔力砲の直撃を受けてなお、
敵の進行を食い止めることができなかったとな……」
「はっ、観測班からの報告を聞いた限り、まったくの無傷であったと伺っております、しっ、しかし魔王様自らが出なくとも、
このフットル自らが娘のしりぬぐいくらいして見せましょうぞっ!」
「ならぬ! フットル将軍よ、そなたのオナラブル家は魔力こそ膨大だが、剣戟においては我がタルンドルの右に出るものはおらぬ、それにな、我が妹のベリーがそなたに嫁いでから30年……ようやく身ごもったかわいい我が姪だっ!
エルフなんぞに捕まり、さぞかし恐ろしくて今頃震えていようぞ!」
『『『魔王様ぁぁぁぁぁああああっ(泣)』』』
魔王国の王、デプル・テラ・タルンドルは、人族との度重なる戦争で疲弊しきっていた魔族をまとめ上げ、
大陸の一番東にあるこの地に魔族の王国を作り上げた。
魔族の土地を守るようにそびえたつ王都タルンドルは、堅牢な城壁に囲まれた城門都市であり、
幾度となく繰り返される戦争から、かろうじて魔族を守っている。
しかし、魔王軍にかつて栄えていたころの勢力は無く、最強の戦士であり国王であるデプル自らが先陣を受け切ることも多い。
国民や臣下からの信頼はとても厚く、"税は最低限納めよ"と、お触れを出しても、国民自らが税率の倍以上を収める程だ。
「我が鎧と剣を持ってまいれ! エリーゼ救出に向けて編成隊を組織せよ!
フットルは西門にありったけの魔力砲を集めておけっ! いざとなったら地中の起爆魔石を使ってもかまわんっ!」
「委細承知いたしました。敵がエリーゼを盾にした場合は……」
「わかっておる、その時はこの魔王自らがたたき切ってやるわっ!」
魔王国の王城に、戦時下を知らしめるための真っ赤な旗が掲げられ、場内では慌ただしく兵士が動き出した……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その頃ハーゼルとエリーゼは魔王国西門のすぐそばまで来ていた。
昨日より少し急いで走ったおかげで、2時間程で魔王国が見えてきた。
魔王国はどうやら城郭都市というやつらしく、街を覆うように大きな壁がそびえたち、
中央には大きな門があり、固く閉ざされている。城のてっぺんには真っ赤な旗が掲げられているのが見える。
「エリーゼさん、あれが魔王国ですよね? あぁ~確かに壁に大穴が開いてますね……タイヘンダー(棒)」
「っ!ハーゼル様、大変ですわっ、魔王国は厳戒態勢を敷いておりますわね、王城に戦闘旗が掲げられておりますわっ!
迂闊に城に近づくと砲撃されるかもしれませんわね、せめて内部と連絡だけでも取れればすぐに入れますのに……」
「……わかりました、エリーゼさんはここで待っていてください、俺が事情を説明してきますから、
それまで待っていてください。」
「きっ、危険よっ! それより私を連れて行った方が安全だとおもうわ、私の安否がわかれば攻撃してこないはずよ……」
エリーゼは必死に訴えかけるが、敵に捕らえられた捕虜の為に、本当に攻撃してこないかどうかはわからなかった。
それはハーゼルも同じであり、もし万が一攻撃を受けた場合、エリーゼを無事に守り切れるかどうかわからなかった。
「大丈夫です、エリーゼさん、俺なら撃たれても平気でしたし、こちらからは攻撃せずに城門まで行ってみます。
エリーゼさんの無事を伝えて誤解がとけたら迎えに来ますから、それまで少しだけ待っててもらえますか?
……それに、女性を危険な場所に連れていくこともできませんから……」
それを聞いたエリーゼは、心臓が早鐘を打ちすぎて爆発してしまうのではないかと思った。
(もうっ、このエルフってば、かっこよくて素敵でごんぶとで優しくてっ、もうっ、もうっ!)
「では、ハーゼル様、このペンダントをお持ちください」
そういうと、エリーゼは首か肩かよくわからない場所の肉を押しのけるようにして、ペンダントを外し、
ハーゼルの手にそっと預けた。
「エリーゼさん、これは?」
「それは、我が家の身分を証明するための物ですわ。それを身に着けていけば門を通れると思います。
ただ、戦時下体制ですので、それすら考慮されずに攻撃を受けるかもしれませんわね……」
ハーゼルはエリーゼのペンダントを受け取ると、自分の首から下げた。
美しい意匠が施されており、金細工で薔薇のようなものが描かれている。
エリーゼが身に着けていたので、生暖かいぬくもりが残っており、ハーゼルは少し照れ臭そうに笑った。
「それじゃあ、エリーゼさん、行ってきます!」
「いってらっしゃい、気を付けるのよ? ……あぁっ、行ってしまわれたわ……無事に帰っていらしてね……」
エリーゼを置いてきた街道を抜けると、魔王国の西門前の広場に出た。
相手を刺激しないようにゆっくりと歩きだし、広場の中央に差し掛かった時、足元の地面が一瞬光り、
轟音と共に天地がひっくり返った……
エリーゼ隊長は魔王の姪でした(´・ω・`) 魔王には娘もおります。
恋の行方や如何に?