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浸食されるこの世界で  作者: 林戸
第四章 闇路
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第四章 闇路(1)

 それは、優未と真希が映画を見に行った後の話だった。

 きっかけは、真希が優未のかばんに付けてた、キーホルダーのキャラクターに関心したところからだ。

 そのキャラクターは『ましゅまろ太郎』というアニメのキャラクターで、それの劇場版がこの時期に公開されるとのことで、それを二人で見ることになった。

「まさか真希ちゃんがましゅまろ太郎を見てたなんて」

「まあちょっとなー。興味が出てきたからDVD借りて見たんだ!」

「でもよかったよね! 特に命がけでドーナツノ介を助けるシーンなんて!」

 いつも下向きなことを言う優未は、真希という親友の前では、このようにはしゃいで話すことが多かった。

「そうだね。私も感動したよ」

 優未と真希は、こうして見終わった映画の話をした。

 その後に二人はファミレスに寄り、繁華街でいろいろな店を回ったりした。

 繁華街では、真希は剣のキーホルダーに興味を示したりもした。

「今日は楽しかったよ! ありがとうね真希ちゃん!」

「……なんか今日が最後みたいだね」

「えっ!?」


「優未さえよければいつでも付き合うよ。いつまでもな」




「目が覚めたかい?」

 優未は再び、武雄の家の客室で目を覚ました。どうやら、数時間ほどここで気を失ったようだった。

(また昔の夢を見てたみたい……)

「アリスちゃんから聞いたよ。外出ちゃったんだね」

「ごめんなさい……」

 優未は、また約束を破ってしまったことに関して、罪悪感を重く感じていた。これなら、見放されても仕方がないと感じた。

「まあ、仕方ないよね。相手があのセシルだから」

「まったく、急に飛び出すものだから手間がかかりましたわ」

 アリスは、そう言いながら部屋に入った。

「アリスちゃんごめんなさい……。私が囮に惑わされなかったら……」

「謝ればいい問題では……。でも、あれはわたくしのせいでもありますし……」

 優未は、アリスの言っていることが理解できていなかったのか、首をかしげる。

「わたくし、ブランクがアンブランクを撃退する組織があるって言いましたよね? わたくしは自分の身の危険もあると思ってスナイパーの部隊をつぶしてしまいまして……」

「あの組織を利用すれば被害は減っていたと私から注意したんだよ」

 武雄が頭を抱えながらそう言った。

「戦いなれてるアリスちゃんだって、こうしてミスするし、僕だってミスすることがある。でもね優未ちゃん、僕は一つだけ言いたいことがあるんだ」

「何でしょうか?」

「戦いというものは過酷なものなんだ。この前のように、人々が犠牲になることがあるし、時には戦いたくない人と戦うこともある。だから、半端な思いで戦いに参加すれば、優未ちゃんの心が持たない」

 武雄は、優未に厳しい言葉を投げかける。

「でも僕は、優未が自衛できるように努力するよ。拘束具も、悪用されないように調整もするし」

 優未は、黙り込んで武雄の言葉を聞いていた。彼女は、この人の言っていることは間違っていないように感じていた。

 しかし、優未は守られてばかりで本当にいいのか、という感情が消えておらず、葛藤を繰り返している。

(これから私はどうすればいいの……)

 優未が悩んでいるとふと、ある人物の顔が思い浮かんだ。


 それは菅田真希だった。




 魔術師による襲撃から後日、AMTのメンバーは会議室に集められた。賢太郎もその会議に参加している。

 そして、その会議室の演台には神野が立っている。

「先日はとても不本意な結果であった。まだ完全に把握しきれていない敵とはいえ、このようなことが立て続けに起きるのも芳しくない。これを機に対策をもう少し考えるべきだろう……」

 神野は重い口調でそう言う。

「とはいえ、能力的に足りない部分はあるだろうから、私も頑張ってるんですよ~」

 前の会議同様に、キャラものの白シャツに白衣+ジーンズというファッションスタイルの大隈が演台に割り込む。

「また大隈か。いつも思うがその服装はどうかと思うぞ。なんだそのへんぴなキャラは」

「ましゅまろ太郎だけど?」

「……もういい。その口ぶりからすると例のものはできたのか?」

「ご名答! ということで私が開発したものを紹介していくよ~」

 大隈がそう言って取り出したのは、ライフルくらいの大きさの銃だった。

「これは一見ただの銃だけど、出てくるのは銃弾じゃなくてレーザーが出てくるようになってるの。まあ、物理的な攻撃が効かない魔術師相手にはうってつけだよね」

「レーザーってSFものではあるまいし……」

「そうでもないよ。レーザーは現実でも出そうと思えば出せるし。まあ、利便性が低いから実用化されてこなかったけど」

 この大きさにするのも大変だったんだぞー、と大隈は不貞腐れながら言った。

「そういえば前に、コストがかかって全員分は用意できないと言っていたが……」

「うんそうだねー。コストがあまりもかかりすぎてね。魔術師相手じゃなかったら、こんなコスト泥棒兵器作らないわよ」

「やはりそうか……。それではこれを扱うメンバーはとっくに厳選してあるから、ここで発表させてもらう。まずは相川祐樹、……」

 神野の口から放たれた人物の名は、ほとんど元SATや元SITのエリートの名ばかりだった。

「……佐伯康太、山口浩紀、()()()()()、以上だ」

 自分の名前が呼ばれた賢太郎は、少し驚いた。まさか自分が、新兵器を扱うことになるとは思わなかったからだ。

(この俺には新兵器を扱う資格があるのだろうか……。あの時引き金を引けなかったこの俺に)

 賢太郎は、ボサボサ頭の魔術師を撃てなかったことを頭によぎり、自分がここにいる資格を疑う。

「会議はこれで以上とする。該当者は兵器の扱いに慣れるように……」

 AMTのメンバーたちは、会議室から出る支度を始めた。賢太郎もその支度をしようとすると、神野が彼に近づく。


「藤元、お前はここに残れ。私から話がある。」


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