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浸食されるこの世界で  作者: 林戸
第三章 雷鳴
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第三章 雷鳴(3)

「まず、わたくしたちの魔法について説明しなくてはなりませんね」

 魔法を教えると決めた次の日、アリスは渋々と優未に魔法の教授を始めた。

「まず、魔法を使うにおいて必要なものは何だと思いまして?」

「必要なもの……?」

「呪文ですわ。ブランクの世界、つまりこの世界のファンタジー映画の魔法ものとかは呪文唱えていましたわね。()()()()()と考えてくれてよろしくてよ」

「でも、みんな呪文唱えているとこ見たことないような……」

 優未はアリスの言葉に疑問を覚える。

「だっていちいち呪文唱えていたら時間かかりますもの。昔のアンブランクは魔法使うごとに唱えていましたけどね」

「でも魔法に呪文は必要だって……」

 優未が疑問を感じると、アリスは自分の手から前のように弓矢を取り出だした。

「そこで登場するのがこれですわ。わたくしたちはこれを『魔具』と呼んでいますわ」

「魔具……?」

「前のあなたのように呪文なしでは微々たる魔法しか使えませんわ。ですけど、これによってそれが改善されるようになりましてよ」

「アリスが弓矢、真希は剣と使用者によって形状は違うんだ」

 武雄はアリスの説明に口をはさんだ。

「これを使えば、呪文なしでも魔法が使えるの?」

「ある程度は、ですわ。魔具にはいくつもの呪文があらかじめ書き込まれていて、使用者の使いたい魔法を即座に使えるって構造でしてよ」

「つまり、どうしても呪文唱えないといけないものも……?」

「そこで出てくるのがこれですわ」

 アリスは魔法陣が描かれた水色のカードを取りだした。

「わたくしたちはこれを『ルーン』と呼んでいますわ。これにはあらかじめ呪文が書き込まれていて、魔具に読み込ませることでこれに書き込まれた魔法を扱うことが出来ますわ」

 それに、とアリスは続けて持っていたルーンを優未に投げつける。

 投げつけたルーンは優未の手前で爆発する。

「きゃあっ!!」

 爆発と言っても軽く、安っぽいものだった。紙吹雪があちこちに散らばったところから、パーティーで使うようなクラッカーのようなものだと優未は推測した。

「このように、遠隔で魔法を使うのにもこのルーンを使いますわ。驚かしてごめんなさい」

「アリスはこのように魔法の遠隔操作が得意なんだ。真希のようなパワーで押していくタイプと違ってね」

 武雄がまた口を挟んだ。

「あっ、そうそう。知り合いに魔具を早急に作ってもらったけど見てみるか」

 武雄はそう言ってクローゼット(結界をつないでいない状態)の中からそれを取りだした。

「これが……、私の魔具……」

「あまりにもベタすぎでしてよ」

 取りだされたものは魔法ファンタジー映画によく出てきそうな木目の杖だった。




「……どうでしたかー? 初任務は」

 武器のメンテナンスをしていた大隈は申し訳程度の敬語で神野に問う。

「出撃前にあらかじめ確認したマルMは全て撃破しました」

「にしては浮かない顔ですねー」

「ただ、一人新たにマルMを発見しましたが、彼女は逃げられてしまいました」

「あらあら。で、武器の性能はどうでしたか?」

「マルMに対して効果がありました。ただ、武器の仕組みを判明したものは防御魔法のようなもので塞がれたとのとの報告がありました」

「なるほどねー。威力は改善の余地ありってことですか-」

 大隈は頭を抱えた。

「まあ、一応威力増した武器の設計図はあらかじめ用意してるんですけどねー。まあでも、予算の関係で全員分用意できないのが現実なわけですよー」

「そうですか。ではその新兵器を扱うメンバーは私が厳選するべきですね」

「ま、そういうことですねー」

 大隈は神野の意見に承諾した。

「あと、逃げられたマルMってどんな感じでしたー? ちょっと気になっちゃって」

「ああ。初見であの銃弾を防御魔法で防いでいたと聞きましたので、人一倍警戒心が強いと考えられます」

「んー。何か言いよどんでませんかー?」

 大隈はたどたどしい神野の発言を指摘した。

「憶測で物事話すのはよろしくないと思いまして」

「いいですよー。別に尋問してるわけではないですしー」

 大隈の言葉を聞いた神野は話を続けた。

「目撃者によれば、他のマルMとは違う何かしらの違和感があったとの報告がありました」

「確かに憶測ととれる発言ですねー」

「マルMは市民を脅かす存在です。憶測で行動すると命が……」

「でも無視はできない」

 大隈は神野の言葉を遮断した。

「違和感あるなら、その違和感が本当か確かめる必要あるじゃないですかねー。ま、勘違いだったら勘違いで済む話ですしー」

「だけど油断はできません」

「それはそうですねー。とりあえず武器の開発に取り掛かりますわ」

 私の言ったこと頭の片隅に置いといてくださいねー、と言い残し、メンテナンスを再開した。




「……ここで魔法を使えばいいのですか?」

「ああ、問題ないよ」

 優未は武雄に魔法の使用許可を貰った。

 優未と武雄、アリスは今、草原にいた。といっても本物の草原ではなく、武雄によって生み出された結界、いわゆる仮想空間である。

「魔具にはあらかじめ多くの呪文が書き込まれているから念じるだけで魔法が使えると思うよ」

「分かりました、やってみます」

 優未は自分が持っている杖状の魔具を前方に向けた。

(杖だから真希ちゃんのように斬りつけるイメージではなくて、炎を吐き出すイメージで念じればいいのかな……)

 優未の視線も前方に向け、炎を吐き出すイメージをした。

「はああ!!」

 優未の掛け声と同時に炎が吐き出される。

 炎は前に彼女が発したものとは格段に違って凄まじいものであり、まるで炎で出来た津波のような多大な放出である。

「すごい……。これが真希ちゃんの力……」

「こんなにすさまじいものとは。想像以上だね……」

 魔法を発した優未とそれを見ていた武雄は、吐き出されたものを見て感嘆していた。

 しかし、アリスの表情は硬いままだった。


「優未さん、はっきり評価しますがよろしくて?」

「どうかな……?」


「全然ダメですわ。点数にするなら0点ってとこかしら」



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