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夜の蝶はダメ人間  作者: ほろ苦
3/5

蝶々が三匹

読んで頂きありがとうございます(*^-^*)

 数日後、国王主催の晩餐会が開かれていた。


 いつもの夜会とは違い高貴な者しか招待されていない特別な夜会でロイはいつものように第三王子の護衛を兼ねて参加していた。

 流石、国王主催なだけあって気品溢れる美女が多く参列しており、ロイがあたりを見回すと数人の淑女がニコリと微笑み歩み寄って来たので第三王子の姿を確認しつつ軽く会話を楽しむことにした。

 ホールの中心では社交ダンスが始まり、お喋りをしていた淑女たちは殿方からの誘いを今か今かと待っている。

 ロイも誰か誘って踊らねばと思っていたが、どうも気が乗らず適当に目の前の子でいいかとすら思っていると、周りがザワつき徐々に人々の視線は一点に集つまりつつあった。

 ロイも何かあるのかと視線の先を追いかけるとそこには黒いドレスの腰部分に光加減で淡く虹色に輝く大きなリボンを揺らし黒髪をハーフアップにした美女の後ろ姿が目に入る。

 項に少し垂れる髪が白く美しい首筋に揺れ優雅で品のある動作に言いようのない魅力が後ろ姿でもわかる。しかも、その女性をエスコートしている燐国の皇族衣装を纏った第三王子。

 ロイは目を見開き一時固まって眺めていると女性と王子は仲睦ましく社交ダンスを始めた。

 ステップを踏むごとに揺れるリボンがまるで蝶の羽の様にフワフワと踊り、完璧なダンスとその美貌に会場の視線は夜揚羽蝶と隣国の王子に釘付けとなった。

 一曲が終わるとまた次の曲も踊り続けている二人を黙って眺めていたロイは顔を曇らせ、自分に話しかけている淑女の言葉が全く耳に入らない。

 二曲目が終わるとロイはズカズカと二人に近寄り話しかけた。


「王子、これはいったい何の冗談ですか?」


 ロイからいつもの笑顔が消えて静かに皇太子を見下ろす。

 イリーナは二人の様子を黙って見ていたが、王子は口角を上げてイリーナの腰に手を回しダンスホールから人目を避けるようにバルコニー移動した。

 ロイも黙ってその後について行く。

 三人はバルコニーに出ると皇太子はイリーナの腰に回している手に力を込めて近づける。


「…タイガ王子」


 明らかに不愉快という顔を浮かべるロイはちらりとイリーナの顔を見て、また顔を曇らせる。

 イリーナは何も言わず視線をタイガに移すとタイガはムッとした顔をして不愉快げにロイに話しかけた。


「見ての通り、イリーナ嬢は私を選んだのだ」

「…それは本当ですか?」


 何処か冷たく疑っている言葉がイリーナの耳に突き刺さる。


「はい。ごめんなさい…」


 出来るだけロイの目を見ない様に俯いていると急にロイの手がイリーナの顎を無理やり上げさせ視線を合わせられた。


「ロイ!」


 タイガが非難の声をあげるが、それを無視してロイはイリーナを睨んだ。


「私の目を見て言って下さい。やはり、あなたは噂通りの女だという事ですか」

「っ、わたくしの噂よりもご自分の噂の心配してはいかがですか?」


 イリーナは気丈に振る舞いロイを純粋に睨み返した。

 心を弄ばれたら、こんな気持ちになるのよ!わかったか!と、言ってやりたい。

 ロイは何か言いたそうにしていたが、グッと飲み込みイリーナから手を離した。


「王子もお戯れは程々にして下さい、国の品格にかかわります。ここ数日、コソコソしていると思ったら…」


 小さな声で呟くとロイは目を細めため息を吐き、再びイリーナを睨み視線を逸らして背を向けその場を去ろうとした。


「ロイ様、アマリアによろしくお伝え下さい」


 イリーナの言葉にロイはピクリと反応したが、振り返らす去って行く。


「…ちょっと予想外の反応だったな」


 イリーナの腰に回していた手を離し少し距離をとってタイガが頭をポリポリとかいた。

 確かに、本当に傷ついている…ようだった。

 作戦が成功して喜ぶ所なのだかモヤモヤしてスッキリしない。

 イリーナが暗い表情をしていると、タイガが椅子に座るようエスコートしたのでバルコニーのベンチに静かに腰を下ろす。


「まさかの第三王子様とは…騙されましたわ」


 燐国の皇族衣装に身を包まれたタイガは何処からどう見ても王子様だ。

 タイガ王子は少し照れながら笑っていた。


「所詮わたしは三番目だ、国は兄達が継ぐし、お飾り程度な存在だ」

「失礼ですがお幾つですの?」

「…16だが」


 おう、私の歳の約半分…

 イリーナは精神的ダメージを受けた。


「そ、そうですか、まぁなんにしても協力して頂きとありがとうございました」


 イリーナがニコリと微笑み頭を下げるとタイガ王子は頬を染めまた視線を外した。


「うっ。ロイもコレに少しは懲りて女遊びを控えると良いのだがな」


「そうですね。協力してもらったお礼を何かしたいのですが…わたくしめにお役に立てる事がありましたらおっしゃって下さい」


 イリーナはニコリと微笑んではいたが心の奥底で先ほどのロイが自分を睨みつける顔が忘れられない。

 彼が情熱的な瞳で自分を見ることはもうないのだと思うと少し寂しい気がする。


 自業自得よ…


 タイガは少し元気がなくなったイリーナを見つめ何か考えて顔を赤く染めた。


「どうかいたしましたか?」


 タイガ王子が口を尖らせて何かボソボソ言っている。

 イリーナは首を傾げると意を決した様にイリーナを見つめ


「じ、実はそのひとつ頼みがあるのだが!」

「はい、何でしょう?」

「えーっ〜・・と、その…」

「?」

「トギヲタノメナイダロウカ」


 真っ赤になり固まっているタイガ王子が棒読みで口にした言葉を頭の中で整理する。

 トギヲ?都議?研ぎ?…伽?!


「ちょ!、ちょっと待って下さい王子様?」


「私もずっと嫌がって断っていたのだが、将来の為にと周りが色々煩くてな。その、経験豊富な貴女が相手なら良いかと…悪いようにはしない。考えてくれないか?」


 顔を真っ赤にして真っ直ぐ見つめてくるタイガ王子にイリーナは顔を引き攣らせた。

 自分より一回り以上若い王子のまさかの提案(お願い)に困惑した。

 一般的にそういった事を任せられる女性はある程度お年をめしていてパートナーに先立たれたなどの熟女的な方が選ばれ、それなりに優遇された将来を約束されると聞いたことはあったが、まさか独身の自分にそんな声がかかるなんて…

 イリーナのショックは隠しきれない。

 男性経験がほとんどない自分には絶対無理だ。怯えた目をして小刻みに首をふるイリーナにタイガは頬を赤くし


「貴方のその相手を虜にするテクニックをぜひ教えて頂きたい。これから出会う色々な女性の対して免疫がほしいんだ。正直わたしは女性が苦手で…」


 ああ、解る。

 タイガ王子は基本目を合わせて話してくれないし、すぐに赤面する…。

 そんな彼が一部勘違いしてイリーナが男を弄ぶテクニシャンに見てたらしい。

 多少はあっているが、何度も言おうイリーナは男性経験がない。


 そう、処女だ


 素で怯えるイリーナを尊敬の眼差しでこれも男心をつかむ演技なのだとタイガは思っていた。

 無理です!できません!と断るイリーナに色々な好条件を提示してくるタイガとの押し問答がしばらく続き、最後にはイリーナは逃げる様に帰ることになった。

 なんとかタイガが帰国するまで逃げとおせればいいのだが…



 国王主催の晩餐会の数日後、アマリアがイリーナを訪ねてやってきた。イリーナのイケメン執事のクロスと甘い空気を漂わせていたが、心なしかいつもより少し無口に思えた。


「イリーナ、ロイをフッたらしいわね」


 ほらきたとイリーナは思い不敵な笑みを浮かべるとアマリアは目を細めた。


「ええ、こんな私ですもの。彼とは不釣り合いよ」

「そうかしら?」

「女性を弄ぶのが趣味なんでしょ?エレナに聞いたわ。どうしてそんな人を私に仕向けたのよ」


 イリーナの顔は笑っていたが目が笑っていなかった。

アマリアは少し黙って視線を落とし、少し悲しげな表情を浮かべる。


「貴方の王子様にぴったりと思ったからよ」

「…」

「彼ね、あなたと似てるの」

「私と?」


 特定のパートナーが出来ない所だろうか?


「ロイの家と商売上交流があって、私達小さい頃からちょこちょこ顔を合わせる仲だったのよ。昔から物腰が柔らかく甘いマスクでね、とてもモテてたわ。大人になると周りの女性たちに言い寄られ、ある事ないこと噂を次から次に流され、上っ面だけの自分に自信がなくなって部屋に籠って本を読み漁っていたわ。誰かさんと同じ、残念な男よ」


 私と同じ…

 本当に本が好きだったのか。


 ジワジワと湧き上がる喜びとその一方で周囲の目や中傷に押しつぶされそうになる苦しさをロイも味わっていたと思うと胸がギュっと苦しくなる。


「でもね、私が間違っていたわ…もっと普通にあなたに紹介していたらこんな結果じゃなかったかもしれない」


 ごめんなさいっと小声で誤るアマリアの側にクロスが近づきそっと肩を抱いた。イリーナは小さく微笑み紅茶を一口飲み込むとふーと息を吐き窓の外を眺めた。


「アマリア、普通に紹介されても結果は変わらなかったと思うわ。だってほら、私こんなのだし、ロイ様は私には勿体無いわ」


 少しハニカムように笑うイリーナにアマリアは納得がいかないという表情をした。

 明日、タイガ王子が燐国に帰国する。

 晩餐会の日から毎日のようにタイガ王子から花束と手紙が届けられ内容は予想通り例(伽)の件だったが、断り続けている。


 もうロイに逢う事もないだろう。

 ここまで気になる異性は初めてだった。

 もしかしたら、これが初恋だったのかも…

 イリーナはひとり苦笑を浮かべた。



 それから一月後。


 薄暗い書庫のソファにゴロリの寝転び、買ってきたばかりの本をニヤニヤしながら読んでいるイリーナがいた。


「やっぱり、この人が犯人だったのかー」


 満足気に頷き近くにおいてあるお菓子を手に取り頬張った。

 扉をノックする音がして、侍女のアンが書庫に入ると顔を引き攣らせた。


「お嬢様!!なんですか、これは!」


 ソファに寝転がったイリーナは髪の毛ボサボサな上にお菓子の食べ過ぎでお肌もガサガサ、全く外出しなかったので少し太ってしまった。

 カンカンに怒っているアンから隠すようにお菓子を集めてソファの後に置くとアンはお菓子全て奪いとった。


「ああーわたしのお菓子ー」

「まったく、お嬢様のぐうたらブリが悪化してます!来月にはアマリア様とクロスの結婚式があるのにそんな身体だと恥をかきます!」

「ぶーぶー!もう、いいのよアン。私は背伸びをするのを止めたの。自分の身の丈にあった方とお見合い結婚でもするから過剰に磨き上げなくてもいいのよ」


 そう言うとイリーナは手に持っていた本に視線を戻し続きを読み出した。

 侍女のアンは口をあんぐり開けて呆然と佇んだ。

 タイガ王子が無事に燐国へ帰国した後も3日おきぐらいに花束と手紙が届き続けている。

 内容は以前と少し変わり、自国の話や身の回りで起こった事と、たまにまだ諦めず伽の誘いが書いてあり、イリーナも返事を書くので軽く文通状態だ。

 イリーナは夜会に出る事を止めて両親にお見合いしたいと相談した。

 もう歳も歳だし親が決めた自分に相応しい相手と結婚しておけば間違いないだろう。

 偽りの自分を作り夜会に参加するのは疲れた。

 今は目の前の新刊の本を読む事と来月の親友と執事の結婚式が楽しみだった。しかし、そんなに怠け者のイリーナを母と侍女が許す訳もなく、無理やり着飾され夜会に行くよう屋敷を追い出された。


「もう!なんで行かなきゃダメなの?私は部屋で本か読みたいーーーー!!」


 馬車の中で頬を膨らますイリーナの向かい側に結婚式をまじかに控えたイケメン執事クロスが苦笑いを浮べる。


「ずっと屋敷に篭りっぱなしだったじゃないですか。皆、心配をしているのですよ」


「別に本が読みたいだけよ、心配される事は何も無いわ」


「お嬢様…」


 そうこうしていると夜会の会場に到着し、渋々馬車を降りた。

 今宵の夜会は手広く商売をしているバレッチト家が主催で行われ、会場もバレッチト家の大きなお屋敷で開かれていた。

 イリーナはいつもに増してやる気がなく、早く帰りたかったのだが、殿方は久々のイリーナに我先にと声を掛けてきた。

 笑顔で相槌をうち、卒なく断るを繰り返しグッタリと疲れた頃一人の若い紳士から声をかけられた。


「隣よろしいでしょうか?」

「はい、どうぞ」


 黄金色の長い髪を後に束ね、深く黒い瞳は鋭く燐国の礼服を身に着けていた。


「わたくしガルシア国にて薬剤の商売をしておりますジル・サクラガと申します。どうぞ、お見知りおきを」


 イリーナは何処かでサクラガという伯爵家の名前を聞いた事があったが思い出せない。

 ガルシア国と聞くだけで胸が少しチクリとして少し顔を曇らせた。


「わたくしパルキア伯爵家のイリーナと申します。燐国の方とお知り合いになれて光栄ですわ」


 疲れていたイリーナは自己紹介とお決まりの文句を言ってサクサク済ませようとしていた。

 今はあまり隣国の方と仲良くしたい気分ではない。

 そんなイリーナの心情を知らないジルは積極的だった。

 腰に手を回し体を寄せ、必要以上に手を握りイリーナを口説くジルにイリーナはうんざりした。

 たまにいるのだ、こういったスキンシップの多い殿方


「どこか人気少ない所に行きませんか?」


 他愛のない会話を一通り終わらてとっとと帰ろうと思っていたイリーナの耳元でジルが甘く囁く。

 夜会で人気の少ない所に誘うという事は✕✕✕しようと誘っているものだ。

 まだ、社交界にデビューしたての時なにも知らず付いて行って危うい目に合った事をイリーナは鮮明に覚えている。


「ジル様、わたくしちょっと気分がよろしくないの。今日はもうお暇しようかと」


 片手を口にあて、あー気持ち悪いと顔を背けたイリーナだったがジルはイリーナの両手首を掴み薄気味悪く微笑む。


「イリーナ嬢、私は貴方を逃がすつもりはありません」


 イリーナはジルの鋭く熱い瞳にたじろいだ。

 このままでは拉致があかない。

 イリーナは目を細め不快な顔をしてジルを軽く睨みつけた。


「わたくし、失礼な男性は好きではないの。失礼するわ」

 と怒ったフリをして手を振りほどき立ち上がって馬車に向かった。

 しつこい殿方にはこの対応が一番いい

 周りの視線もあるのでこれ以上強引な事は出来ないとわかっていたのだ。馬車に戻るといつもクロスが傍に控えているのに今日はいなかった。


 おかしい…


 馬車の運転手に聞いても首をふるだけでクロスを探しに行くべきか悩んでいるとあの失礼な紳士がゆっくり近づいてきた。


「イリーナ嬢、何かお探しですか?」


 不敵な笑みを浮かべるジルに何か嫌な予感がして警戒した。


「ええ…」

「優秀な彼の居場所でしたら私がご案内出来ますが、いかがしますか?」

「…」


 ジルがそっとイリーナの前に手を差し出しエスコートを促すとイリーナはジルを睨みつけ黙ってその手を取った。


毎度のことながら、本線から脱線して暴走してくるパターンになってる!?

いやいや、今回はちゃんと完結してますよー(笑)行き当たりばったりだけどね!はっはっは!

文章能力残念な私の小説ですが、最後まで読んで頂きありがとうございます(´・ω・`)b

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