Episode-6 約束しよう
『Episode-6 約束しよう』、お待たせ致しました!
ちょっと長めの回ですが、どうかお付き合い下さい。
それでは、本編をどうぞ!
気絶していた俺が目を覚ますと、すぐ近くに紫の従者で9尾の上級妖怪、八雲藍の姿が目に入った。心配して看てくれていたらしく、俺が目を開けるとほっと一安心したように胸を撫で下ろした。
「………目が覚めたか、良かった。………急に気絶するから心配したんだぞ?大丈夫か、秀?」
「………ごめん………ちょっとショックが大きすぎて」
正直ちょっとどころの騒ぎではなかったが、これ以上心配させるのもどうかと思った俺は、出かけた言葉をグッと飲み込んだ。
「それにしても、何故俺を女子だと思ったんだ?自己紹介で桜雷秀って名乗ったのに………」
まだ心に残った感情を悟られないように、陽気的かつ皮肉っぽく話を転換させると、藍は恐縮といった様に身をすくめた。
「すまない………それには深い理由があるんだ。言い訳かと思われるかもしれないが、聞いてくれるか?」
相手がこう言ったとき、俺はなるべく断らないようにしている。話し方や言う内容の整理の仕方で、相手の性格や考え方を割り出すことが出来るからだ。
特に深い意味はない。だが、相手の心理を読み取るのがとても好きな俺は、それを1種の趣味にしてしまっている。こう言った1つ1つの情報が趣味に役立ったりするので、こればっかりは欠かせないのだ。
そんな下心を抱えながら俺が頷いて了承すると、藍は神妙そうな面持ちでゆっくりと話し始めた。
「………この幻想郷は君達がいた世界とは違い、弱い者が死に、強い者が勝ち残る、弱肉強食の世界だったんだ。
そのような世界に生まれてしまったら、強くあるしかない。しかし、そこには、どう足掻いても抗えない壁が存在していた。それは………」
「………『生物の性別』、簡単に言えば『男と女の実力差』………」
彼女は俺の意見に「その通りだ」と肯定した。
「妖怪にも人間と同じように、男女の差が生じていたんだ。不利な立場にあるせいで、女性は迂闊に周りに頼ることさえもできない。自分を守る術は自分で見つけ出さなくてはいけなかった。
そこで行った行動、それは『相手に性別と悟られないこと』。名前や見た目を変え、自分を強く見せたんだ」
「妖怪は人間よりも寿命が長い、という話を紫から聞いたことがある。妖怪の藍は、そんな幻想郷を長い間見てきた筈。見過ぎてしまったせいで、つい俺とその状況が重なって見えてしまった………」
俺なりの仮説を藍に伝える。どうやら正解だったらしく、藍は微笑みながらゆっくりと頷いた。
藍の話には、1つ1つに説得力があった。話の内容は当然のこと、話し方のレベルも非常に高いため、『言い訳』と言うにはあまりにも相応しくない。
藍の説明に完全に納得した俺は、彼女のように優しく笑みを浮かべた。
「良く分かったよ。そう言う訳だったらしょうがない」
「ありがとう、君なら分かってくれると信じてたぞ」
お互いにふふっと笑い合う。話したことで俺にも藍にも心残り無くなっていた。
………強いて言えば、俺の下らない趣味で藍の心理を試そうしてしまったことに罪悪感が残っているが………
まぁ、結果が良くなったから良いのだ、と考え直すことにした。先程のサーチで、藍はまともな性格であるという事が分かった。恐らく俺の負担は減るだろう。
周りは疲れるやつばかりなのでこの結果は有難い。
とても僅かだが、期間中負担が軽減されることへの嬉しさに顔を綻ませていると、不意にこの部屋の障子が開いた。
そこには、先程俺を言葉のみでノックアウトさせた猫の妖怪、橙が立っていた。橙は俺と目が合った途端、にゃはっと明るい笑顔を見せた。
「あ、秀様!起きたのですね!良かったぁ、橙が話し掛けたら気絶しちゃうんだもん。びっくりしたんですよ!」
先程人見知りをしていたとは思えない程ハキハキと喋る橙に、少し圧倒されながらも、俺は笑顔を絶やさないことを意識した。
「ああ、もう大丈夫、心配してくれてありがとう。………で、何か用があったんじゃないのか?」
どうやら橙は本来の目的を忘れていたらしく、俺の質問に目を見開き、ポンッと手を打った。
「そうだった!紫様が、居間に来てくれって言ってました。準備が出来たらで良いそうなので、お願いしますね!」
「分かった、もう少ししたら行くよ。伝言ありがとう、偉いな橙」
俺が褒めると、橙は元気良く「はいっ!」と返事をした。
褒められた事がよほど嬉しいのか、にゃふふと満足気に笑い、スキップしながら部屋から出ていった。
あの変わり身には少し圧倒されたが、よそよそしく人見知りされるよりは、こっちの方が良いだろう。
「………良い子だな、橙は………あんな子、あっちでも中々見ないよ」
橙への正直な感想を藍に告げるが、返事が返ってこない。それどころか、藍は口に手を当てふるふると震え始めていた。
何事だと顔を覗き込むと、眩しいほどに目がキラキラと輝いていた。心なしか目の中にハートが写っているように見える。どう考えても心ここにあらずと言った感じだ。
これは………どういうことなんだ?
この和風造りの部屋を静けさが包む。
「お、おーい、藍。どうしたんだ………?」
沈黙に耐え切れなくなった俺が、ぼうっとしている藍の顔の前で手を振った。俺の手に気付いた藍はあわわと動揺しながら、俺の肩を掴んだ。女性とは思えない程の力で掴む藍、俺の肩は段々と痛みに襲われだした。
「………ぐあぅっ………ら、藍………い、痛いんだ、けど………」
「………ちぇ………、か………ぎ………」
しどろもどろ状態の藍が、ぶつぶつと何かを呟いた。あまりにも小さな声で、全然聞き取れない。
「と、とりあえず放してくれ………これ以上は………」
「………ちぇ………、かわ………す………」
俺がいくら懇願しても、藍は聞き入れようとしなかった。完全に冷静さを失っている。このままでは肩が………
悲惨な結果を想像してしまった俺は、無理矢理でも引き剥がすために、藍の腕に手を掛けた。
その時………
「ちぇ、橙が可愛すぎる………」
「………へ?」
思い掛けない言葉の登場に、俺の目は丸くなる。それと同時に、藍の手から力が抜けた。が、その代わりに藍は俺の体を勢いよく揺らしながら、部屋の天上に向かって力強く叫び始めた。
「橙が可愛すぎるっ!!」
「………」
前後に激しく揺れる頭で考えているからなのか、俺は今の状況を全く理解できていなかった。しかし、これだけは確実に言える。
………前言撤回、藍はまともな性格ではなかった。
藍は自分に対する認識が180度ガラッと変わったことなど露知らず、橙への愛を叫びながら俺の体を揺すり続けていた。
とりあえず、ずっと揺すられていたら埒が明かない。俺は藍の手から逃れるように身を引くと、急いで立ち上がった。
「じゃ、じゃあ、俺はそろそろ行かないと。藍も落ち着けたら、居間に来てくれ」
さっさと障子を開け、『今』だ見ぬ『居間』に向かって歩を進める。
『いま』だけに。
………自分で思うだけでも寒くなってくる。柄にもなくダジャレなんか言ってしまったからか、普段感じる気温の寒気よりこっちの方が勝っているような気がした。
言葉が人体に及ぼす影響を再確認した俺は、居間を見つけるために屋敷内の探索を開始した。
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紫に指定されていた居間を見つけ中に入ると、そこにいたメンバーに違和感を覚えた。
その居間には、今は柱に寄りかかり眠っている、バスケ馬鹿の和成、幻想郷の天然な管理者の紫、急激な変わり身を見せた猫妖怪の橙、藍と光を除いたメンバーの他に、3人の見知らぬ少女がむっと不機嫌そうに座っていた。
その少女達は、3人が3人とも、とても個性的な容姿をを持っていた。
一番左の1人目は、黒いセミロングの髪に、赤い大きなリボン。特に目を引くのが、独特の『巫女服』だった。
それは、赤と白の非常に目立つカラーリングを施されている巫女服で、何故か脇の部分の袖が無かった。袖無し襟付きのショートベスト風の服と、独立した袖を腕の部分につけているといった、なんとも不思議な格好の少女だった。
その隣、すなわち真ん中に座っている2人目は、片側だけおさげにして前に垂らしたロングの金髪に、リボンのついた黒い三角帽を乗せている。
彼女は、黒系のドレスに白いエプロンという服装。さらには箒までもが彼女の近くに転がっていて、いかにも魔法使い風の身なりをしている。
最後の3人目は、一見すると人形に見えてしまいそうな容姿を持っていた。
金髪ショートヘアの頭に、ヘアバンドのように赤いリボンが巻いている。青のワンピースのようなノースリーブに、ロングスカートを着用していて、その小さな肩にはケープのようなものを羽織っていた。
勤勉な性格なのか手に分厚い本を持っていて、ペラペラと捲っている。
入ってきた俺の姿を一番最初に見つけた巫女風の少女が、無表情でじろじろと俺を見詰めた後、ふぅと溜め息をついた。
「紫が連れてきた位だから期待してたのに、1人は寝てて、後の2人も遅刻………とんだ拍子抜けだわ。本当にあっちの世界で優勝したメンバーなのかしら?」
清楚な見た目からは想像も出来ないような横暴な態度に、俺は呆気にとられてしまう。そんな俺の姿を見兼ねたのか、魔女風の少女が俺に助け船を出してくれた。
「お前は初対面の相手に、何を言い出すんだ。そんなんだから神社に人が寄り付かないんだぜ?」
「うっさいわね。妖怪とかあんた達がわらわら集まって来るから、参拝客が来ないんでしょうが」
じゃれ合うように話を進めていく2人。その隣で呆れた表情を浮かべている人形風の少女が、2人を静めるために口を開いた。
「あんた達は一体何をしに来たの?私は早く用件を済ませて帰りたいの。少しは静かにしなさいよ」
ジト目で睨むその目は、この状況に納得していない不機嫌さが見て取れた。どうやら、同意の上で連れてこられた訳ではなさそうである。
彼女の一言で周囲が落ち着いたことを確認した紫は、優しくかつ、怪しく微笑んだ。
「じゃあ、本題に入る前に………貴女達、軽く自己紹介して頂戴ね。まずは霊夢からよ。ほら、早く立って!」
紫の催促に巫女服の少女が、面倒臭そうに溜め息をついた。ゆっくりと立ち上がると、渋々と自己紹介を始める。
「………博麗霊夢、ポジションは………SG、で合ってるわよね?博麗神社の巫女をしているわ。神社に来るときは、お賽銭持って来なさいよ」
それだけ言った霊夢は、即座にストンと座った。本当に巫女かなのか、疑いたくなるような自己紹介だったが、彼女を見る限り、大きな嘘を言うようなタイプではない筈、ここは信じるとにしよう。
霊夢の自己紹介が終わると、その隣にいた魔女風の少女が元気よく立ち上がった。
「次は私だな!霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ!ポジションはPF!バスケも段幕もパワーだぜ!」
被っている帽子のつばをピンっと弾いた。どうやら魔理沙は男勝りな、明るい性格らしい。まだ人格の全てを把握した訳ではないが、少なくとも、霊夢よりは良い好印象を持てた。
さて、最後は………
全員の視線を一身に受けた人形風の少女が、霊夢の様にゆっくりと立ち上がった。
「………アリス・マーガトロイドよ。ポジションはPG。宜しくお願いします」
3人の中で一番無難な自己紹介を見せたアリス。『宜しく』と言ったのも彼女だけだった。まともな性格を期待して良いのか、それとも藍の時のような結末を想定した方が良いのか。
俺が悩んでいると、居間の襖が開いた。そこには光が立っていた。
光は相変わらず、引きつった笑みを浮かべて恐怖を隠そうとしている。室内のほとんどの者が、苦笑いで光を見る中で、1人だけ頬を朱に染める者がいた。
ショートヘアの金髪に、ヘアバンドのようにリボンを巻いた少女。
「………か、格好良い………」
そう、アリス・マーガトロイドだ。
両手で口を押さえながら、紅潮していくアリスの顔を見た俺は、一瞬にしてその意味を悟った。
………まさか、アリスは光のことが………
その手に関しては鈍すぎる光はそんなことに気づける筈もなく、
「お、遅れてごめんね、ちょっと勇気を振り絞ってた」
と、いつのまにか移動した部屋の隅で、体育座りをしながら言った。本当に相も変わらず残念な奴である。
「良いのよ、流石にこの状況じゃ仕方がないわ。秀君、和成君を起こしてもらえるかしら?」
そんな光を笑って許した紫。やはり天然同士、どこか理解しあえるものがあるのだろうか。
紫の要望通り、和成を叩き起こす。和成は目を覚ますと、すぐに霊夢達の存在に気づき、驚いたように、開いたばかりの目をごしごしと擦った。
「だ、誰だ?見覚えないやつがいるんだけど………どういうことだよ、紫?」
「自己紹介もついさっき終わっちゃったし、それは後で教えるわ。とりあえず、本題に入るわよ」
前置きをして俺達の注目を集めた紫は、初めて俺に説明したときのように、ゆっくりと話し始めた。
ここで紫から伝えられたのは、俺達が幻想入り来た最大の理由、『幻想祭』の他にもう1つ、参加するべき大会があったこと。そして、その大会が開催されるまで、今日を抜かして後3日間しかないことだ。
その大会の名は、『幻想郷新人王決定戦』。その名の通り、幻想郷の新チームが集まり試合をするというものだ。この大会でベスト8の成績を残せたチームのみが、『幻想祭』への出場権を手にすることができるのだ。
そんな大事な大会が、3日で開催される。そのような最悪なアクシデントは、過去にあっただろうか。何故そんなタイミングで俺達を連れてきたのか、その意図だけが全く読めない。
「………どうかしら?3人とも、完璧に不利な状況にあるけど、もうここからは逃がさないわよ♪」
紫のサディスティクな笑みと言葉により、元々感じていた不安が一気に膨れ上がる。
そんな状況に焦りを感じつつも、内心にワクワクしている俺がいることに気づいた。
焦りや不安、それを覆し勝利の頂きに返り咲く、それを感じることの出来る者は、逆境に立たされた者だけ。
俺はそれを感じたことがある分、尚更引けない物がある。もう俺の気持ちは1つに固まっていた。それは俺だけでは無い筈だ。光も和成も興奮を抑えられず、うずうずとしている。
和成に馬鹿馬鹿と散々言っているが、やはり俺達の思考回路は、どこかで繋がっているらしい。考えることは同じだ。
「………ハッ、上等じゃん、誰が逃げるかよ。時間がないギリギリの環境、マジでアガるわ、そういうの!」
俺達の中で一番最初に口を開いたのは和成だった。好戦的な眼差しで紫を睨み付け、不適に笑うその姿には、迷いは1㎜たりとも存在していなかった。
「まぁ、そう言うことだよ。オレらは逃げるつもりは全く無い。むしろ願ったり叶ったりだよ」
にこにこしながら和成を肯定する光。いつも通りに見えるその言動には、静かなながら力がこもっていた。
こうなってしまえば仕方がない。俺だけ逃げるわけにもいかないし、何よりこんなチャンスを見逃すほど、俺は馬鹿じゃない。
「………乗った、参加させてもらうぜ。………この新チーム、『星陵』のキャプテンとして、人類の希望となることをここに約束しよう」
俺の言葉に、紫と橙は満足そうに笑った。霊夢達3人も興味深そうに俺達を見詰めている。
すると、紫が突然ハッと何かに気づき、開いている障子から外の様子を確認し始めた。その視線に釣られるように横を向き、外をの景色見る。
外はオレンジ色に包まれ、今にも日が沈みそうだった。コートで気絶してから、少なくても5時間以上は経過しているだろう。
「やっぱり、もうこんな時間ね………よし、秀君達!早く準備しなさい!もうそろそろ出発よ!」
「………え、出発?今からか?」
突然の出発宣言に首を傾げる俺達、どうやら霊夢達も聞かされていないらしく、不思議そうな顔をしながら紫を見ていた。
そんな視線も意に介さず、
「………うん、これで良いわね。では、秀君は霊夢、和成君は魔理沙、光君はアリス、君達はこれからそれぞれの家に3日間、バラバラの状態で泊まってもらいます!」
「「「「「「………は?」」」」」」
6人の言葉が重なり、同時にこの居間の空気を震わせた。
その後、中ば無理矢理、俺は霊夢の家、和成は魔理沙の家、光はアリスの家といったように、散らばって泊まることとなった。
こうして、俺達の短すぎる3日間の準備期間が幕を開けたのである。
いかがだったでしょうか?長すぎましたね………すいません。
今回の話で、2章も終了です。もうここまで来ました、自分的にはとてもあっという間な気がします。
2章は3話分しかない、短い章となりましたが、内容的にはとても濃いものとなりました。大会も後もう少しで開催されますし、ようやくバスケ小説っぽくなってきました!今後の展開をご期待ください!
今回の話では、霊夢、魔理沙、アリスの自機組が登場しました。やはりこの3人が出ると、『東方projectの2次小説』って感じがします。大満足です。
次回予告コーナー!!
準備期間の1日目、秀と霊夢の生活を私の小説人生初の試み、『三人称視点』で描く!
(本当に初の神視点なので、どうなるかは分かりませんが、どうか宜しくお願い致します!)
次回も閲覧、お願い致します!