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幻想郷で、バスケの頂点目指します  作者: local
第2Q ~幻想郷に現れた天才達~
6/13

Episode-4 誰だと思ってるんだ?

閲覧ありがとうございます。


Episode-4です!更新遅くて本当に申し訳ありません……


この1ヶ月、評価やブックマーク、有力なアドバイス等を沢山頂きました!

『前書きが長い』というアドバイスも頂きましたので、詳しいことは後書きか活動報告に書かせて頂きます。



では、本編をどうぞ!

 

 幻想郷にある我が家、『八雲家』に帰ってきた私、八雲紫やくもゆかりは思わぬ修羅場に立たされていた。


  まさに予想外、まさかこの3人によってこんなことになるなんて、思っても見なかった。

 私は体を痛みにより、感覚がなくなってしまった脚を気にしながら、目の前の現状を受け止める。


 私がされていること、それは……



「紫様っ!!聞いているのですかっ!!?」



「聞いてるわよ~、反省してるってばぁ~」



 そう……私の式神、八雲藍やくもらんに説教されている……しかも外で正座。




 …………誰よ、今『何だ、そんなことか』とか思った奴!



 こちとら『そんなこと』では済まない思いを受けているのだ。


 私が帰ってきて気絶しているこの二人を見るなり、地面に正座させられ説教。なんと、この状態が4時間も続いている。


 最初はあれだけ痛みを感じていた脚が、もう《座っている》という感覚ですらも感じなくなっている。これは流石にやりすぎではないのだろうか?


 ……勿論、言い訳はしていない。『していない』と言うより、『出来ない』の方が正しいだろう。この結末を呼んでしまった原因は私、それは重々承知している。

 


「全く……本当に反省しているのですか!?こんな暴力で解決するようなやり方で、あの3人が『あの話』を了承してくれるとでも思っているのですか!?」



「分かってるわよぉ……だから私の失態だって、さっきから言ってるじゃないの。

 反省してないわけないでしょうが、むしろ反省以外何もしてないわよ」



「反省したら良いって訳じゃありません!」



「『反省しているのですか!?』って言ったのは何処の誰よ!!」



「うっ……そ、それは……」



 私の的確な反論に、藍は何も言い返すことが出来ず言葉を詰まらせた。


 恐らく説教によって、感情がピークに達してしまったのだろう。言っていることが見事なまでに矛盾している。



「と、とにかく!あの2人が起きたら、ちゃんと謝罪してくださいね!?」



「分かってるってば……」



 どうやら説教は終わったようだが、まだ脚への地獄の痺れが残っている。正座を解き直したら……想像しただけで痛くなりそうだ……


 ううっ…やはりが納得いかない。どう考えても、あの2人にも非はあるはずだ。私も悪い!けど、あの子達も悪い!!いつか責任とって貰うんだから!!!


 物凄く理不尽な決意と共に、私は脚を解き直す。勿論、脚全体を地獄の苦しみが襲ったことは、言うまでもないだろう。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「……っくしゅ!……何だ?急に鼻がむず痒く……」




 この和風造りの美しい部屋の中で、男らしからぬ可愛らしいくしゃみを出したのは、桜雷秀おうらいしゅうつまり俺だ。


 つい数分前まで、『目を覚ましたら知らないところに寝かされていた』という異世界フラグを期待させるような、現実味のないテンプレート(?)を味わっていた俺は、くしゃみを出した原因を、



「これは……誰かに噂されてるな」



 と、酷くありきたりな仮説で解決させた後、この不思議な状況を打開する方法を模索していた。



 自分が安全かどうかも分からない危険な場所にいるというのに、俺の頭は時間が経つにつれてどんどん冷静になってきている。


 何故なのか、その答えは少し考えただけで直ぐに出てしまった。


 あのときは『吹っ切れた』と思っていたが、それは間違っていた。どうやら『発動』していたらしい。試合以外でなったのは初めての体験だ。





『発動』というのは、俺がPGをしている上でのとても有利な点の1つ。『冷静思考クレバーシンキング』のことだ。


 スポーツをやっている者ならば、『ちょっとしたプレー1つだけでつい感情が高まってしまい、ミスをしてしまった』という経験は誰しも少なくないはず。


 仕組みは分からないのだが、俺は生まれながらのこの思考のおかげで、そういったことが全く起こらないのである。

 要はいつでも冷静クレバーに戦えるから、感情によるミスがないという訳だ。


 だが、あの少女に出会ったおかげで、完全無欠だと思っていたこの武器に『恐怖』という弱点があったことを、俺は初めて知ることができた。

  後で対策を練らないといけないな。






 さて、その自慢の思考をフルに使った結果、『和成を見つけることが最優先』という結論に至った。


 先程見て分かったが、高級そうな壺や掛け軸などがあるだけで、和成は居ないことが分かった。

 

 寝かせてくれたこの家の人には悪いが、早く見つけておいとまするとしよう。



「……よっと」



 俺は寝かされていた布団に右手をつきながら立ち上がる。


 体をコートに叩きつけられた割には、骨折のような大きな怪我は見当たらなかった。気絶する前にはあんなにあった痛みも、今は全く感じられない。



「……めっちゃ痛かったから、打撲位はあったと思ったんだけど……」



 思いきり伸びをしても、肩を回しても、体のどの部位を動かしても痛みを訴える箇所は無い。これは……どういうことなんだ?



「……いくら考えても分からないもんは分からないんだ。さっさと和成見つけて帰ろう」



「……悪いのだけれど、貴方達を帰らせるつもりは無いの」



「ゎひゃいっ!!」



 背後から聞き覚えのある声が響く。俺はその声に盛大に驚いてしまい、思わず情けない声を上げてしまった。



「ゎひゃいっ!って貴方……なんて、驚き方……して…るのよ……くくく……」



 やはりそうだ。俺の目の前では、こみ上げてくる笑いを必死になって噛み殺そうとしている、例の少女が立っていた。


 コートに居た時のユニフォーム姿ではなく、紫色が主体の生地に白いフリルのついたドレスを着ていた。後ろで束ねていただけだった金色の髪の毛はおろされ、毛先をいくつか束にして赤いリボンで結んでいる。


 特に違いを見せない端整な顔、薄紫色の澄んだ瞳はこちらをしっかりと向いていた。

 当然のこと、笑いを隠そうとしている姿も一目瞭然だったので、俺の羞恥心は天井知らずとなってしまう。



「わ、笑うなっ!!俺はビックリ系が苦手なんだよっ!」



「……そうなの?以外と可愛いところあるのね……ぷぷっ……」



「可愛い言うな!」



「ふふふっ、そんなに怒鳴らないでよ。カルシウムが足りてないわよ♪」



 俺がどれだけ怒鳴っても、少女は俺をからかうことを止めようとはしない。

 なんてガッツだ、逆に尊敬してしまう。



「……もういい……それより、こっちは知らないことだらけなんだが、まだ君の名前すらも知らないぞ?」



 もう噛みついても無駄だと悟った俺は、こめかみを揉みながら弱々しく訊いた。先程まで寝て休んでいた筈の体が、もう疲れを感じ始めていた。

 もしかしたら、和成と同じくらいの強敵かもしれない。困ったものだ……


 俺の『めんどくさい奴ランキング』の上位に食い込んできた問題の少女は、ハッと驚いたような表情を見せる。



「え!?まだ名乗ってなかった!?」



「ああ、名字も名前も知らない」



「…………ごめんなさい……てっきり名乗ってたと……」



 自分の不注意に恥じらいを覚えたらしい紫が、頬を紅潮させながら俯く。


 ……やはり天然だったか……この娘は……


 といったことに気を取られていると、不意に少女がコホンと咳払いをする。羞恥の念は抜けてきたらしく、頬の赤みも消えてきていた。



「……じゃあ今、自己紹介させてもらうわ。

 私の名前は八雲紫、ポジションはSFスモールフォアード。この幻想郷を管理している者よ。以後お見知り置きを」



 恭しく頭を下げる『八雲紫』と名乗った少女。

 先程の自己紹介でとても気になるところを見つけた俺は、思ったことをつい声に出してしまう。



「……八雲紫って言うのか……珍しいな……」



「ちょっ、そこ!?もっと気になる所は無かったの!?」



「あ、ああ、そうだ。じゃあ改めて……八雲、さん?その幻想郷ってのは何なんだ?」



 突っ込み所を間違えた俺は気を取り直し、先程の自己紹介時に出た最大の謎を問う。

 八雲さんは微笑みながら、



「紫でいいわよ、さん付けも要らないわ」



 と、俺に呼び捨ての許可を与えた。俺が頷いて了承したのを確認した八雲さんは、顔から微笑みを無くし真面目な表情を作っている。



「まず、先に言わせてほしいことがあるの」



 真面目な表情に思わず狼狽えてしまう俺に、紫はガバッと頭を下げた。


 ……え?どうして、急に……



「さっきのコートでのこと、本当にごめんなさい。私のせいで貴方達を危険な目に合わせてしまって……なんて言ったらいいか……」



 危険な目……この娘、俺に何かしたか?


 確かにコートで俺の体は宙を舞ったが、その事を言っているのだろうか?いや、一見しただけではか弱く見えてしまう、この少女がやったとは到底思えない。

 だとすると……なんだろう……


 とりあえず、頭を上げてもらおう。女の子にずっと頭を下げられてるのは流石に忍びない。



「あ、あぁ、そのことならもう気にしてない。それより、女の子に頭を下げられるのは慣れてないんだ。そっちのほうが困るよ」



 冗談混じりに許したことを伝えると、紫はゆっくりと顔を上げた。その顔は真剣なままだったが、若干量悲しみの念も混ざっていた。



「……ありがとう。お詫びと言ったらなんだけど、さっきの質問、包み隠さず全て答えさせて貰うわ。

 信じられないかもしれないけど……今から話すことは全て真実よ」



 紫はその目の奥に期待の念を灯しながら、静かに語り出した。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「……と言う訳よ、理解して頂けたかしら?」



 長時間の説明に疲れたのか、ふぅとため息をつく紫。

 紫の疲労度は見ただけはよく分からないが、恐らく俺の方が疲れている筈だ。


 あまりにもぶっ飛びすぎている内容、それを理解するには常に脳味噌をフル回転させなければならなかった。



「……あぁ、殆ど信じられないような話だったけど……かろうじて理解はできた。つまり、まとめるとこう言うことだろ?」






 紫から伝えられたのは、大きく分けて3つ。



 1つ目は、【幻想郷について】だ。


 この幻想郷と呼ばれる世界は、俺達がいる地球とは別次元の世界らしい

 。ここでは人間も存在しているが、それ以外の妖怪やら妖精等、俗にいう《人外》の生き物も暮らしている。ここでバスケが流行りだしたのは5年前からそうだ。


 この話を聞いても、『やはり感じていたフラグは正しかったんだなぁ』としか感想が出てこなかった。異世界と聞いても全く動揺が驚かなかった自分に、逆に驚いてしまった程だ。


 強いて言えば、紫が妖怪だったということに一番驚いた。しかも話を聞いていると、この幻想郷を創ったのも紫、コートで俺達を吹っ飛ばしたのも紫なのだという。

『幻想郷の創造者』、人は見た目に寄らないということを、改めて思い知らされた内容だった。




ーー


 2つ目は、【俺達は何故ここに来たのか】。


『人間界には無い、特殊能力持ちで紫に危険人物と見なされた人物』、『人間界の人類の全ての記憶から忘れられた人物』、『人間界と幻想郷を繋ぐ結界に、偶然迷い混んだ人物』のいずれか3パターンの人間が、この幻想郷に来ることが出来る。


 俺達に該当したのは、当然1つ目の理由だ。つまり、俺達には何らかの『能力』があるということなのだが、能力の詳しいことは全員揃った所で話してくれるらしい。




ーーー


 最後の3つ目は、【俺達にバスケの大会に出場して欲しい】といった内容だ。


 ここでは、バスケが流行りだした5年前から『幻想祭』という、人・妖等の種族を問わない最大級のバスケ大会を開催している。


 3on3形式で行われるその大会は、誰でも手軽に参加でき、幻想郷には無い『バスケ』という物珍しさに興味を持った者達も多かったらしく、第一回目の大会でも人気はあったようだ。


 しかし、種族が多すぎると見過ごせない面も出てきてしまう。

 人間と妖怪の能力の違い、妖怪の羽や角等のプレイに支障をきたす部位等の調整が特に難しかったらしいが、何とか均等になるように出来たのだという。


 その苦労の甲斐があり、大会の参加者も年々増加していき参加制限が出るまでに成長していった。


 だが、それでも人間と人外との違いは、力量の調整だけで埋められるものではなかった。


 大会が優勝に近づくに連れ、人間の参加者の大半は妖怪の参加者に負けてしまうケースが目立ってしまったのだ。そういったことが積み重なり、人間の参加者達は、無意識に『やはり妖怪には勝てない』という概念が植え付けられてしまった。


 そんな幻想祭に出場し、人間の参加者の希望となって大会を今まで以上に盛り上げて欲しいとのことだ。




 ーーーー



 紫に伝えられたのはここまで。改めてまとめてみると、どれもぶっ飛んだ話ばかりだった。最初の『異世界かもしれない』という考えのおかげで驚く回数が減り、結果的に理解できたのだと思う。


 俺なりのまとめた物を伝える。すると、紫は驚きを隠せないような表情を見せた後、



「……よく理解するところまで辿り着けたわね……流石は『確然かくぜんたる頼鷲らいおう』、素晴らしい順応力だわ」



 と、賛称の言葉を贈ってくれた。

 2つ名で呼ばれるのは慣れていない俺だが、折角のお褒めの言葉なので、噛みつかず素直に受け取っておくことにする。



「……自分でも、何故理解出来たんだろうって不思議に思ってるぐらいだからね」



「あ、そうなの……まぁ、理解せずに悩むよりは良いんじゃない?」



「むっ……」



 ……成る程、確かにそうだな。


 俺は感心してしまい、返す言葉を失ってしまう。彼女は結構頭が切れるようだ、天然で策士とは……厄介だな。


 話を理解するだけで疲れていくこの状況の中、分からないことだらけだが、少なくとも『和成以上の手強めんどうくさい相手』だということは確定してしまった。



「……なぁ、和成は何処にいるんだ?あいつにもこの話を説明しなくちゃ」



 俺が和成の場所について訊くと、紫はやれやれと首をすくめるような仕草を見せた後、苦笑いで質問に答えた。

 


「一通り説明はしておいたのよ……けど『ややこしい話は嫌いだっ!』って言っちゃって、聞いてくれなかったわ。今は私の家のコートでバスケしてる筈だけど……

 貴方が説明しても同じだと思うわよ?」



 この話し振りだと、どうやら和成の扱いに手を焼いたようだな……


 仕方無いことだ、と俺はふっと鼻を鳴らした。あの自由翻弄な和成を扱うことは、並大抵の奴じゃ出来ないことを俺は良く知っている。


 俺が急に笑ったことに、首を傾げて不思議がっている紫。そんな紫を納得させるため、微笑みながら言って見せた。



「あいつがキレかけた時、落ち着かせたのは誰だと思ってるんだ?……あいつへの説明は俺に任せてくれ」



 にっこりと自信満々にいい放った俺を見て、どうやら紫は納得してくれたようだ。ふふっと笑い、肯定したように頷いてくれた。



「そうだったわね。……じゃあお言葉に甘えて、和成君は貴方に任せることにするわ。案内するから着いてきて」



「あぁ、宜しく頼む」



 歩き出した紫の背中を頼りに、和成の元へと向かっていく。

 和成に説明をするとは言ったものの、内心にとても悩んでいる自分がいた。


 幻想祭への参加、それはとても興味がある。だが先程の説明で、参加してしまえば元々暮らしていた世界には、しばらく帰れないと紫から告げられてしまった。



 現代の生活に支障をきたしてまで、参加する意味はあるのだろうか。





 俺の心は和成に説明している間も揺れ続けていた。


いかがでしたでしょうか?今回は説明がメインで、少しごちゃごちゃしていたと思いますが、ご了承ください……


さて、二章がスタートしましたね……やっとです。

更新ペースはあともう少しで復活しそうなので、今しばらくお待ちください!


そしてお知らせです。

当作品のpvが3000を超え、ユニークは1700を突破致しました!


評価ポイントも続々と伸びてきています。読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!今後とも、当作品を宜しくお願い致します!




次回、とうとうアイツが登場!幻想祭への参加を迷う秀は、どんな結論を出したのか……


(はっきり言わせて頂くと、次回の内容、まだ大まかな感じでしか決めていません。次回予告と違った内容になる場合がありますが、ご了承ください)



次回も宜しくお願い致します!


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