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幻想郷で、バスケの頂点目指します  作者: local
第1Q ~全ての始まり~
3/13

Episode-1. 11戦目

Episode-1です。


今回の話でバスケシーンが出てくるのですが、バスケを知らない読者様の為に、この作中で出てくる用語の意味は詳しく書いていくので、把握を宜しくお願い致します!。


 この青く澄み渡った空に、1つの物体が飛んだ。


 オレンジ色の表面に、黒い線が4本引かれた丸い何かは、規則正しく回転を続けながら飛んでいく。


 そう、それはバスケットボールである。

 やや型遅れなそのボールは、空中に弧を描きながら進んでいき、やがて赤色に塗られた丸い輪、リングに吸い込まれるようにして、くぐっていった。





 ーーーーパッ





 

  ネットがボールを撫でる、心地よい音が辺りに響く。

 その音の余韻に俺、もとい桜雷おうらい しゅうは存分に浸ろうとする。しかし、その後に来たボールの弾む音によって、その余韻はかき消された。


  ここは、東京に存在する某公園の中にある、屋外コートにいる。このコートは、沢山の木々に囲まれていて、都会特有の車の行き交う騒音や、多すぎる人々の話し声などは全く聞こえてこない。



「だあぁっー!負けたぁー!!!」



  辺りの静けさとは対照的な叫び声が辺りに響く。この、コートに横たわり、手足をバタつかせている若干金色混じり髪の男は、和成、鈴木すずき 和成かずなりという。俺と共に男子高、星陵高校せいりょうこうこうに通っていて、同じバスケ部である。

  また、同じ二年生ながら『星陵の最強エース』と呼ばれるところまで登り詰めた男だ。



「……ふぅ、エース相手ならざっとこんなもんだろ……なぁ、もうそろあがらないか?疲れちまって……」


 

「何言ってんだ、副部長様よぉ!いや、『確然たる頼鷲』の桜雷 秀様って言った方が良いのか!?

 まだまだやれんだろ!それに2連敗のままで終われるか!まだ帰らん!」



「その2つ名で呼ぶな!それに……もう10回はぶっ続けでやったぞ……あーそういやまだ光来てないな……」



  和成はまだやれる体力があるらしい。どこからそんな体力が沸いてくるのだろうか。いつも疑問に思うが、いつもの通り結局結論はでない。


 いやいや、そんなことはどうでもいいのだ、それより……



ひかる、遅いなぁ……」



  光とは、俺と和成とまたまた同じ星陵高校に通っている高2だ。こいつもまた星陵のレギュラーである。今日ここで光と待ち合わせをしているのだが……

  いつまでたっても光は現れなかった。結構前に連絡はしたのだが……返信は来ただろうか?

 

  俺は光からの返事を確認するため、ベンチに置いたバックの中から携帯電話を取り出す。毎度お馴染みのメッセージアプリを開き、メッセージ欄を見る。他の人からはあったものの、光からの返事は見事に1つも存在しなかった。

 

  ため息混じりに光以外のメッセージに返信をしていく。すると、1つの名前が目に止まった。

 この名前、確か…和成の……! そうだ!そう言えばあの後は!?

 しばらく話を聞かなかったが、仲はどうなっているのだろう。

 俺は若干、否、がっつりニヤニヤしながら和成を話しかけた。



「和成~お前、東風谷さんとはどうなったんだよ~」



  俺が言った『東風谷』とは和成と交際をしている、東風谷美琴こちや みことのことである。和成から聞いた話だと、東風谷は生まれつきの緑髪が特長的で、今時の現代っ子では珍しい神社の娘らしい。

  和成とは、幼なじみの関係で、幼稚園の頃から中学校までずっと一緒の学校に通っていたのだと言う。

 

  中学校の卒業式の後、和成から告白。そして東風谷も和成が好きだったと想いを明かし、めでたく交際までに発展した、という話を和成から聞いたのだが……



「は、はぁ!?何だよそれ!?そ、そんなの今関係ないだろが!!」



 和成が顔を真っ赤にしながら飛び起きる。てかまだ寝てたのか……



「照れちゃってぇ~まだ仲は良いみたいだなぁ~」



「っるせぇ!……あぁー!もういい!」


 和成は、顔を真っ赤にして突っかかった後、拗ねたようにまたコートに

 倒れ込んだ。



「そう拗ねんなって、てか寝るな。後でなんか奢ってやるから、機嫌直せ、なっ!?」



 そう俺が言うと、和成はニンマリと笑った。



「よっしゃ!あんがとなー!」



 ……何だよ、芝居だったのか……


  やれやれともう一度ため息を吐いた。そして忘れかけていた光のことを思いだす。

  待ち合わせの時間からどれだけ時間がたったのかを知るため、時間を見てみる。携帯電話の電子時計は、9時ちょうどを指していた。約束の集合時間時間から既に1時間も経過している。こんな遅刻、今まであっただろうか……?



「なぁ、あいつ、流石に遅すぎやしないか?」



「んぁ?あ、ああ。そう言えばそうだったな……」



  どうやら和成も忘れていたらしく、考える素振りを3秒程見せた後、



「どうせ寝坊だろ、気にすんなって!」



 と、天真爛漫に笑った。うん、やっぱ3秒位じゃこんなもんか。



「そうか……そうなのか?」



  寝坊ならそうであって欲しいが、本当に気のせいなのだろうか?何か事故に巻き込まれたのでは……

 俺がうんうんと唸りながら考え込むと、不意に和成がガバッと飛び起きる。先程の1on1で転がったボールを拾い上げると、俺に投げつけてきた。



「ほら、さっさと続きやるぞ!」



「光の事はガン無視か!?」



  駄目だ、こうなっては誰も和成を止められない。やるしかないか……

  俺はしかめっ面でそれを受け取ると、フリースローラインまで歩いていく。ボールを片手で弄びながら、ため息混じりにこう言った。



「5本先取、最初は俺から。これでいいんだろ?」



「おーっ!流石は秀!そう来なくっちゃ!」



「これ終わったら光探しに行くからな!」



「おうよ!」



  和成が目を小学生のように輝かせ、了承の意を叫ぶ。

  そんな顔を見て俺は無意識に考えた。

 ……来年には受験受けなきゃなんないのに、大丈夫か?こんな子供っぽくて……

 

  俺が和成の将来を心配していると、急にピンッと張りつめるように空気の雰囲気変わった。先程までのふわふわした雰囲気は消え去り、誰もが和成の本気を悟る程の雰囲気に、辺りは支配されていた。



「おいおい、もう本気モードか?入れ込み過ぎだっての」



「集中し過ぎて困ることはない!それに10回やってどっちも5回ずつ勝ってるだろ?次で勝負つくじゃねぇか!」



  そう言えばそうだったな、今両者の勝ち数がが4-4。これで永遠に続くかと思われた1on1にようやく決着がつく……!

 ……よし、どうせ最後なら………



「……どうせ最後なら、勝たせてもらうぜ」



「これ以上勝ちはやんねーよ?3連敗は流石にやだ!」



  お互いに闘う前の売り言葉を交わすと、俺がボールをつき始める。

 俺のドリブルを合図に、ここまで続いた勝負の決着がつく、11戦目が

 始まった。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「……っしゃぁ!とったぁ!」



「くっ……流石に11回目はきついな……」


 

  俺達の勝負はどちらも一本も落とさない、※ランガン勝負という形で進んでいった。



 ※ランガン勝負

 点の取り合い、攻防が激しい試合展開



 今の和成の一本で、両者4-4。後一本で勝負が決まる。


  俺は呼吸を整えながらボールを拾い、これで5回目になる、フリースローラインへの移動を終えた。

 ボールをつきながら、俺は和成に向き直る。



「……後一本、俺にくれよ、疲れちまって……」



  俺は冗談半分で、こんなことを言ってみた。が、案の定、和成ははっと笑い、予想通りの言葉を返してきた。



「俺が素直にはいどーぞって渡すと思うのかよ?」



  やっぱそうだよな、お前はそういうやつ。そんなこと……



「冗談だ、思うわけないだろ?」



「なら、どうするかもう分かんだろ!来いっ!」



  ……俺から始めたけど、何かよく分からないバトル漫画の様なやり取りをしてしまった……恥ずかしい……


  俺はそんな思考を一瞬で切り替える。その直後、俺は高速のドライブを仕掛けた。

 今までの疲れた様な演技が効いたみたいだ。和成は一瞬の硬直を見せ、

 反応を遅らせた。だが、すぐに俺との距離を詰め、進行方向を塞ぐ。



「まだまだぁ!」



「流石にこれだけじゃ抜けないか……なら!」



 ダムッ!!



  俺はドライブの勢いを殺さずに、※ビハインド・ザ・バック、※レッグスルー、※クロスオーバーと連続で繰り出し和成を左右に揺さぶった。



 ※ ビハインド・ザ・バック

 ドリブルしているときに、背中側を通して逆のサイドへつく、ドリブルの動き。


 レッグスルー

 股の下を通して逆の手へボールを送るドリブルの動き。


 クロスオーバー

 ボールを素早く左右に切り替えるドリブルでディフェンダーを振り切る

 動き。




  静かなコートにダムッ、ダムッ、ダムッとボールが弾む音が響く。

  揺さぶるとによって相手のバランスを否応なしに崩させて、相手を抜き去るテクニックの1つである。


  しかし、和成はそんなの効くかと言わんばかりの涼しい顔で、俺を容易く止めた。

 本気出したつもりだったんだが……参ったな。これ以外の選択肢、他にあるか……?


  俺が次の行動を模索していると、考えていることに勘づいたのか、和成は今まで以上に俺との間を詰めてくる。

  ここまで来て今日一番のプレッシャーだ。どうやら俺が次の手を考え付く前に終わらせる気らしい。


  なら!



「これが正真正銘、最後のドライブだっ!!」



  俺は一番最初のドライブよりも、一段と速く踏み出し、俺の残った体力のほとんどを使い、ドライブを繰り出す。詰めて来ていた和成をかわし、見事抜き去った。

 

  常人ならこれだけでも十分過ぎる。しかし、ここで終わらないのが『神速の豹』と呼ばれる和成の由縁だ。

  和成は人間離れした反応とスピードで、俺との距離を縮めてくる。


 あまりの反応の速さに思わず驚いた俺、だが進行方向を塞がれた訳ではなかった。和成はただ『ついてきているだけ』だ。

 これ位のスペースがあれば、一本はギリギリ取れるだろう。



「これで終わりだ!」



 俺は和成に終わりを告げ、レイアップの体制に入る。

 和成の「ああっ」という驚きと焦りの声を聞きながら、1歩、2歩と踏み切り、跳躍する。空中でボールを置くようにしてレイアップシュートを放とうとした、その時。



「ちょっといいかしら、貴方達!」



 突如後ろから響いた女性の声に、俺と和成はビクッと体を震わせる。

 

  その拍子にボールを離す動作が遅れてしまい、思い描いた軌跡とは大きくずれてしまった。ボールはネットに収まることなく、リングを通りすぎる。

 着地した俺は、弾むボールの音よりうるさく聞こえる心臓の音を落ち着かせるように、大きく深呼吸をした。



「……び、びっくりした……」



「きゅ、急に何なんだ!誰だよアンタ!」



  和成が驚いた腹いせに、大声を出した少女に向かって声を張り上げた。

 その少女は紫色が主体の生地に、脇腹の部分に白いラインが入ったユニフォームを来ていた。後ろに束ねた美しい金色の髪の毛を風に揺らし、鮮やかな薄紫色の目で俺達を見詰めると、



「私?私の名前が知りたいの?そうねぇ……ふふっ、良いこと思いついた♪

 じゃあこうしましょう。私と『賭けバスケ』をしないかしら?」



 と言い口元に笑みを浮かべながら、俺らを鋭く睨み付けた。



 刹那、空気がビリビリと震える様な雰囲気に俺たちは包まれていた。



  俺と和成は戦慄した。今まで幾度となく他校と試合をしたが、全く見たことがない威圧的な雰囲気、その美しくどこか妖艶さを纏っているが、とても力強い雰囲気に俺も和成も圧倒されていた。



「おい……マジかよ……」



「これ程までの奴が、まだいたのか……?それも女子に……?……ははっ、久しぶりだ、この感覚」





 思わず笑ってしまう俺の頭の中を、無意識にこの言葉がかき回す。



 


  ……………勝てる気が………しない……………



 


 

どうだったでしょうか?

次回はバスケシーンほとんど無いと思います。

(そして光は次回も出ません。次回の次回、もしくはそれ以降に出そうと思います)


この回を書いてるときに2つほど思いました。


①バスケ小説ってバスケ知らない方には読みづらいのではないかという点

②東方小説って、東方project知らない方には読みづらいのではないかという点


読みづらい要素がどんどん増えていくこの頃……しかし、僕はその要素をぶち壊す!


①の解決法・・なるべく、バスケを良く知らない方の為にも、試合のシーンが全くない回も多めに製作したり、ルールを詳しく書き記していこうと思います。


②の解決法・・『東方wikipedia』と調べると、東方キャラの特長等が書かれている便利なサイトがあります。

お手数ですが、『このキャラどんなキャラなの?』と疑問に思った方は、『東方wikipedia』を活用して頂けると、もっとこの作品を楽しく読めると思います。

でも、皆さまがそのサイトをご覧にならなくても、充分楽しめる作品に仕上げていくので、あまり大きな心配ではありません!


(②の解決法は、読者様に任せてしまう形になってしまいましたが、そこの所はご了承ください。)



次回、謎の少女の実力が明らかに!!


お楽しみに!



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