Episode-8 見せてやらぁ
『Episode-8 見せてやらぁ』お待たせ致しました!
一週間投稿から抜け出せない作者です。もっと早く投稿したいのですが、プライベートが何かと忙しくなってしまいました。………春休みって怖い( ;∀;)
我が家にPS4なんて来るからいけないのです………
では、本編をどうぞ!
幻想郷に存在するこの森。 その地帯は幻想郷の住民から、『魔法の森』と呼ばれていた。
見渡す限りに原生林が続くこの森は、あまりの木の多さに日が通らず、常に薄暗くじめじめとしている。
胞子に幻覚作用を持つ茸がそこら中に生えている。その幻覚作用は、魔法使いの魔力を高める効果もあるため、この森に住み着く魔法使いも多い。
その森の一角に、西洋風の一軒家が建っていた。いかにも魔女が住んでいそうな、西洋造りの一階建ての家。だが、その家は魔法の森の様な陰鬱なイメージはなく、とても明るい見た目を持っている。
その家の中で、二人の男女が昼食を取っていた。
少女が作った茸シチューを五杯も平らげてしまった天然ストーク・ヘアを持つ少年、鈴木和成と、
片側おさげの金髪の少女、霧雨魔理沙の二人は、明後日に開催される新人戦に向けて、忙しい毎日を送っていたのだが………
和成の恐ろしい食欲を見た魔理沙は、食べる意欲を無くしたのか、呆れ顔でスプーンを机に置く。
「………お前の食欲を見てると、こっちの食欲が消え失せてくる様な気がするんだぜ………一体どれだけ食うつもりなんだよ?」
和成は満足気に自分の腹を撫でながら、間の抜けた声をあげた。
「んぁ?………あぁ、もう流石に食えないわ。ごちそーさん、旨かったぁ~」
「………何処ぞの幽霊を彷彿とさせる食いっぷりだったんだぜ。………お陰で多めに作ったはずのシチューが全滅なんだぜ………」
突如として現れたオカルトチックな言葉に、和成は目を輝かせながら子供のようにはしゃぎ始める。
「妖怪だけじゃなくて幽霊もいんのか!? ホント面白ぇとこだなぁ、ここって!」
和成のマイペース発言に振り回さればかりの魔理沙。当然疲れは残るが、とても面倒という訳ではなかった。
自身も似通った性格だからなのか、魔理沙の目の前にいる子供には好感が持てていたのだ。
いつもつるんでいる霊夢やアリスとは、まるで違う性格。如何なる時も自分のペースを貫いてきた彼女は、好感と共に不思議な感覚を覚えていた。
魔理沙が新鮮な感覚を楽しんでいると、食事を終えたばかりの和成が立ち上がる。
「さてと、腹ごしらえも終わったことだし、練習してくるか!」
和成の衝撃的な発言に、魔理沙は目を見開く。
「はぁ!? これだけ食ったのに、もう練習するつもりなのか!?」
「当然。俺の練習は誰にも妨げられないのだ!」
和成は得意気に胸を張って見せる。魔理沙は呆れた顔立ちで、今日何度目か分からない溜め息をついた。
「………お前が良いならそれで良いんだが………吐かない様に気を付けるんだぜ?」
魔理沙の気遣いを、おうっ、と満面の笑みで受け取った和成は、元気良く外に飛び出していく。
空になった二枚の皿を片付けながら、魔理沙は和成の性格について思案していた。
あの明るすぎる性格、実は裏があるのではないのか。それとも、本当にただの馬鹿なのか。
どちらなのか、肝心なところが一日経った今でも、はっきりとしないでいた。
「………敵を知らずして、勝てる勝負はない、か………」
魔理沙はとある者に教わった言葉を思い返していた。
明後日には新人試合がある、残された時間は少ない。幸いにもあの紫が連れてきた強者がこんなに近くにいる。
相手を知れる絶好の好機、これを逃す訳にはいかない。
「………勝つためなら、どんな努力でもしてやるんだぜ」
決意を固めた魔理沙は、急いで片付けを終わらせ、和成の様に勢い良く飛び出した。
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太陽も沈み、身の回りのことを全て終わらせた二人は、霧雨魔法店の屋根の上に座っていた。
金色に輝く三日月の回りを取り囲むように、沢山の星々が瞬いている。都会では絶対に見れないその光景に、和成はまばたきも忘れる程に見入っていた。
「………す、げぇ………」
「あっちじゃこんな凄いの見れないだろ?」
「………どうだろ………少なくても、俺が暮らしてたとこでは見れなかったな」
『暮らしてた』という言葉を聞いた魔理沙は、ふと頭に疑問が浮かぶ。彼らが一番重く受け止めなければいけない現実、これを聞くのは相当に忍びないが、思い切って訊いてみることにした。
「………なぁ、いきなりで悪いんだが。お前ら、外の世界の家族は大丈夫なのか?………ずいぶんあっさりと、ここに残るって決めてたけど………」
魔理沙がそう訊くと、和成は嫌なことを思い出したかの様に、苦い表情を浮かべた。
「………家族、ね………」
口にするのもおぞましい、といった様なその表情に、魔理沙は慌てて撤回する。
「す、すまん、変なこと聞いたな、今のは忘れて欲しいんだぜ………」
「良いよ、気ぃ使わなくても。いずれ話すだろうとは思ってたし」
和成はあたふたと慌てる魔理沙を、優しくなだめた。彼女が幾分か落ち着くと、微笑みながら話し始める。
「………俺は五歳の時に両親に捨てられた、いわゆる『孤児』ってやつでさ。物心ついた時には孤児院に入れられて、今この瞬間まで育ってきたって訳」
普通の者なら知り得ない重く苦しい現実を、和成はいつもの口調で淡々と告げる。ここまで自分の気持ちを整理するのに、どれだけの時間を費やしたのだろうか。
魔理沙がどれだけ頭を使って考えても、納得のいく結論を出すことはできなかった。
「………信じられないんだぜ………そこまでの経験をしておいて、何でそんなに明るくしていられるんだ?」
浮かない顔で訊く魔理沙とは相対的に、和成は微笑みを絶やさず答えた。
「うーん、何でだろうな、自分でも良く分からないけど………強いて言うなら、そんな馬鹿親を想うために俺の時間を割くのは勿体無い、って思うようになったから………かな。そう考えたら、随分と楽になった」
思いの丈を吐き出し満足したのか、和成は屋根の上であるのにも関わらず寝そべり出した。夜空の星達を見詰めるその目は、決意に燃えていた。
「それに、守らなくちゃいけない存在もできたしな。俺には過去を振り返ってる時間は無いってことが良く分かった。
だから俺は………そして未来を幸せに生きる為に、現在と戦うことを決めたんだ」
魔理沙は思わず自分の目を疑ってしまった。今までの和成とは全く別物の雰囲気、明るく頑固な彼らしい決断。軽視していた彼を見直す材料としては、充分過ぎる程だった。
「………私、勘違いしてたんだぜ。お前、ホントは凄い奴だな! てっきりお前は馬鹿なだけかと思ってたけど、そんなことは無かったぜ」
「馬鹿って言うなぁっ!」
和成の渾身の叫びを、類い稀なる回避技能で受け流すと、和成と同じ様に寝転がった。
「………私は、家族とは絶縁状態にあるんだ。ルールやら何やらで家から追い出されちゃって、そこから一回も会ってないんだ。………だから、お前の気持ちは良く分かるんだぜ………」
しんみりと話を聞く和成を見て、魔理沙はにやりと笑い出した。
「………まぁ、だからと言って勝ちを譲るつもりは無いがな。それらを勝ち取る為の力をちゃんと見せてくれないと、折角の良い言葉も拍子抜けになっちまうぜ?」
魔理沙の変わり身の早さに驚く和成だったが、和成は直ぐに調子を取り戻し、好戦的な鋭い笑みを見せる。
「上等だ。幻想郷の誰もが驚く、圧倒的な力の差を見せてやらぁ」
和成と魔理沙は顔を見合わせた後、思い切り声を出して笑い合った。
辛い過去を明かし、互いに意志疎通が出来た喜びの声が、星が輝く夜空に響く。
和成は幻想郷での生活に早くも手応えを感じていた。ここでなら、自分の力を最大限に発揮できる。ここに居るという『あいつ』の力になることが出来るだろう。
魔理沙と笑いながら、そんな感情を抱いていた。………が、
この時既に、彼等の運命の歯車は動き始めていた。
いかがでしたでしょうか。
引き続き、準備期間の二日目です、和成と魔理沙の生活でした。こういうのは、書いてて本当に楽しいです。
和成は大食いです、シチューを五杯も平らげていました。僕は二杯が限界だと思います。
………小学校の頃、紙パック牛乳を6つ程飲み、腹痛で学校を早退してしまってからは、そんな無茶はしておりません。………大食いって怖い(/´△`\)
三人称はとても難しい表現法だということを、今回も思い知らされました。「ここで頑張らないと、後々キツくなるぞ!」と自分に言い聞かせてはいるのですが、執筆ペースが落ちているのは明らかです。
なので、『試合の時以外は一人称で進めていく』という方法を取らせて頂く可能性が高いので、どうか把握をお願い致します。
次回予告コーナー
とうとうやって来た、準備期間最終日!
アリスの家に泊まった光が、目を覚ますと、衝撃的な光景を目の当たりにすることに………
では、次回も閲覧、宜し………え?前回の『お昼時、ということは………!?』の話はどうしたって?
………ソンナコト書キマシタカ?書イテナイ気ガシマスナ~(棒読)
(申し訳ありません、すっかり頭から抜けておりました。今回の話の様に、次回予告と本題がそれる場合がありますが、どうかご了承のほどをお願い致します。この度は本当に申し訳ありませんでした)
では改めて、次回も閲覧お願い致します!




