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荒れた城と魔法の鏡

作者: 誇大紫
掲載日:2013/05/21

 ある荒れた小さなお城にお姫さまが住んでいました。家来も大臣も王さまもお妃さまもおらず、一人ぼっちです。

 昔、火事で城下町まですべて焼け、みんな死んでしまったのでした。今では貯蔵していた食料と、焼けた壁と土くらいしかありません。

 お姫さまは生き残りましたが、それまで身の回りのことは全て召使がやっていたので何もできません。ご飯を引っ張り出して食べる時以外は、日がな一日、お妃さまの遺した鏡台でお化粧をするだけでした。

 ――いつか、王子さまがやって来た時のために。王子さまは、美しい姫でなければ迎えにきてくれないわ。こんな一重まぶたは神様にも許してもらえない。

 お姫様は鏡に映る自分の姿が大嫌いでした。

 ある日、お姫さまは鏡台に向かいます。神妙な面持ちで自分の顔を眺め、「何故こんなにも私は醜いのかしら」とため息を漏らしました。そして置いてあった口紅を手に取ると、鏡に赤く線を引き始めました。それは自分のあるべき理想の形――パッチリとした二重まぶた、美しい瞳の形でした。

 突然、鏡が光りだしました。

 光がおさまると、お姫様は目を見開きました。驚いて声が出ません。

 なんということ、気がつくとお姫さまは鏡に描いた通りの美しい瞳になっていたのです。

 そうです。お妃さまの遺した鏡は、自分を描いた通りの美しい姿にする魔法の鏡だったのです。

 お姫さまはそれから、あごの輪郭を細くして鼻を少し高くしました。

 しかし崩れたお城の一番高い場所に登って、いつ王子さまがやってくるかと待っていますが、いっこうにやってくる気配がありません。

 ――これは美しさが足りないのに違いないわ。

 お姫さまは更にまつげを増やし、胴を細くしました。

 けれども、王子さまがやってくる気配はいっこうにないのでした。

 そのかわり、ある夜、道に迷った騎士がやってきました。お姫さまは隣の国の王子さまかもしれないと思い、急いで鏡台の前で一生懸命お洒落をしてから、彼の前に姿を現しました。

 騎士はお姫様を見たとたんに叫び声をあげ、慌てた様子で剣を抜きました。逃げるお姫さまを背中から斬りつけ、殺してしまいました。

 その後、騎士は町で噂になっていた「城跡の醜い怪物」を退治したということで褒美をもらい、お嫁さんをもらって幸せに暮らしましたとさ。

 めでたし、めでたし。


 え、どうしてお姫さまが殺されたのか、ですって?

 火事で、魔法の鏡は歪んでしまっていたからですよ。

読んでいただいてありがとうございます。

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