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蜂蜜とミルクティー  作者: 暁 柚果
〈 3 〉
31/100

31.二人きりの夜+α ~颯人side~


「ったく……どんな意地の張り方だよ」

洗面所の床に小さく縮こまって寝息を立てている杏実に向かって颯人は小さくため息をつく

杏実が萌の精巧なおもちゃと遭遇した時の、ただならぬ怖がりようを考えると、この杏実の行動は理解できないこともない

しかし……”一緒に寝てください”とは…

こいつは俺をなんだと思ってんだ

……危機感がなさすぎる


杏実がその手のことに関して慣れてもいなければ、経験がないことはわかっている

現に至近距離で視線が合っただけで、一瞬で耳まで赤くなり、俺から離れようした

しかし……あまりに慌てたのか、バランスを崩して後ろに倒れそうになった

とっさに助けなくてはと思って手を伸ばしたが、気が付けば杏実を抱き込むような恰好で、布団の上に倒れこんでいた

離れなくては……と思った

しかしその瞬間―――――杏実の甘い香りが濃度を増した気がした


お互いの緊張した息遣いと共に、服越しに杏実のぬくもりが伝わっていた

俺の腕は杏実の細い腰から背中に回されており、服越しでも体型がわかった。杏実の見た目よりも豊かで柔らかい胸が俺に触れると、その感触が直接脳に伝わってきて、たまらなく誘惑された

ふわりとした細くやわらかな髪としっとりと温かい頬を感じたとき、今の状況や杏実が圭の孫であるとか……すべて飛んでいた


――――――触れたいと思った


萌のおもちゃがなければ正直やばかった

そういう意味ではあの腹立たしい(メッセージ)も図星を刺されたと言っていい


そもそも処女、ましてやこんな無防備な女に手を出す趣味は無い

寄ってくる女も事欠かなかったし、二十代前半まではそれなりに遊んでいた。働き始めてからも彼女もそれなりにいた。

しかし4年ぐらい前だろうか……そんな存在が面倒だと感じるようになったので、それ以来彼女は作らなくなった。しかし性欲はそれなりにある。日本に帰ってくるまでは身体だけのあっさりした関係の女もいたのだ

そもそも女の身体に執着したことはない

誘惑されて身体が反応してやったしても、所詮頭は冷静だった

しかし……初めての感覚だった

まるでその香りに吸い寄せられるかのように触れていた

杏実のことはなんとも思っていない

禁欲生活が祟ったのだろうか


颯人は杏実が寝息を立てているのを確認すると、ゆっくり杏実を横抱きにして抱える

身体がひんやりと冷たい

真夏でもない限り、こんなところで寝れば当然身体も冷える

自分の布団が嫌ならば俺と変わってくれと言えばいいものを……バカだなぁと思う


「ん……」

杏実は一瞬颯人の腕の中で体を動かすが、そのまま寝息を立てはじめる

ぐっすり眠っているようだ


杏実の寝顔を見ると、目尻に涙が溜まっていた

颯人は洗面室から部屋に帰ると、先ほどまで颯人が横になってた布団のほうへゆっくりと杏実の体を横たえた

颯人の寝ていた際のぬくもりがまだ残っていたのか、杏実は気持ち良さそうに布団に身体を摺り寄せた

杏実の目尻に溜まった涙をそっと拭う


この旅行が終われば、こいつとも会うことは無い

これ以上フミ婆たちに巻き込まれるのは、まっぴらごめんだ


颯人はそのまましばらくその寝顔を見つめた後、軽くため息をつくと、杏実が初めに寝ていた布団に入っていった



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