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蜂蜜とミルクティー  作者: 暁 柚果
〈 3 〉
24/100

24.おでこに…

え?


その意外な言葉にびっくりして、思わず顔を上げて颯人を見る

颯人は困ったような表情で、杏実を見ていた

あの時のような――――冷たい雰囲気はどこにもない


「初めてだったって知らなかった、とはいえ……とんでもないことしてたんだな。罰ゲームだったし、しかも人前で…舌まで入れた気もするし」

その生々しい表現にその時のことがよみがえってきて、さらにいたたまれなくなる


「ちょっと俺もイライラしてたんだよな……あんとき。はじめからお前だけ慣れてない感じだったし――――――あいつの罰ゲームを強制されそうになったとき……普通に連れ出してやればよかった………最悪だった。ごめん」

颯人は杏実の目を見て、きっぱりそう謝罪した


拒絶されなかったとしても、迷惑に思ったに違いないと思っていた

あの時のことは、結果的に颯人に助けてもらったのだ

謝ることなんてなにもない

そう思うと弁解せずにいられなかった


「そんな……違います。私は朝倉さんに助けてもらって感謝しています。………御曹司の顔が近づいてきた時、寒気がして本当に……本当に怖くて気持ち悪くて嫌で……もしあの場でされていたらと思うと―――ぞっとするんです。確かに私キスは……は…初めてでびっくりしましたけど……朝倉さんは嫌じゃなかったから……いいんです」

そういうと颯人は驚いたように一瞬目を開き、そのままじっと杏実を見つめてきた

なにか探るような―――問いかけるような瞳


「おまえ……自分がなに言ってるかわかってんのか?」

「え?」


何を?

颯人に罪悪感を感じてほしくなくて必死で言葉を紡いだ


なにか…気に障ることを言ってしまったんだろうか?


困惑する杏実の表情を見ながら、颯人は呆れたように苦笑する

やがてゆっくりと杏実の顎に手を伸ばし、上を向かせると親指で杏実の唇を優しくなぞった

ビクッと杏実の身体が跳ね上がる

自然と颯人を視線が絡む

颯人の表情からは何とも言えない色気が漂っていた


「あ……朝倉さん?」

「俺は嫌じゃないんだろ?」

「!?」

杏実は自分が言った言葉の意味に気が付く


まるで告白したようなものだ


杏実の表情を見て意味に気が付いたとわかったのか、颯人は意地悪そうに笑みを浮かべた

杏実の顔は、依然がっちりと颯人の手で固定されて動けない

そのままじっと颯人から見つめられる

その黒い瞳の中の……底の見えない色気と妖艶な笑みに、杏実はくらくらと吸い込まれそうになる


「抵抗しないんだな?」


抵抗なんて……無理な話だった

杏実は颯人に会いたくて近づきたくて……思いを募らしていたのだから

ゆっくりと颯人の顔が近づいてくる


……そして―――――おでこに軽いキスをされた


温かく柔らかい感触

その瞬間ガクッと膝の力が抜けて、その場でしゃがみこんでしまう


「おっと…」

とっさに颯人がその体を支えるが、力が抜けて立ち上れなかった

おまけに緊張の糸が切れたのか………目から涙がこぼれた


泣いちゃダメだ……迷惑かけちゃう


そう思ってるのに涙が止まらない


「ご…ごめんなさい……」

必死で謝罪の言葉を繰り返す杏実に、颯人は苦笑しながら杏実の頭をポンポンとたたく


「やりすぎた……泣くな。悪かったから」

「違うんです……朝倉さんは悪くありません。……泣くつもりなんてないんです」


止まれ……止まれ…


繰り返し願うが、杏実の涙はなかなか止まらなかった



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