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蜂蜜とミルクティー  作者: 暁 柚果
〈 2 〉
15/100

15.ぼんやり覚醒

「ひぁっ!」


杏実は頬に当たる冷たい感触に、驚いて目を覚ました。突然、目の前にドアップの朝倉の顔が飛び込んできて、さらにびっくりして立ち上がる。

途端に足元がふらついた杏実を、とっさに朝倉が腕をつかんで支えてくれる。

そのまま朝倉は先ほど座っていたベンチに杏実を引き寄せた。


「おい。そんな急に立ち上がるな」

朝倉は不機嫌そうに顔をしかめてこちらを見ていた。手には先ほどの”冷たい犯人”と思われる、缶コーヒーが握られていた。

目は覚めていた……が、この状況に頭が全くついていかない。


「え……と?」

「私どうして…」


(何をしてたんだっけ?)


「まだ酔いは覚めて無いようだな。ったく……あんな量で酔っぱらうって、どんな身体してんだ……」


(酔う?)


確かに足元がふわふわしているし、身体も熱くほてっている気がする。てっきり周囲が温かいのだと思っていた。


「私……お酒飲んだんですか? ダメですよ……お酒は。以前、お菓子でも酔っぱらって…」

「なんだそのふざけた体質」

「ふざけ……? ふふふ……そうですね」

杏実はその皮肉な表現に、思わず笑ってしまう。やはり酔いが醒めないという事なのか、まだぼんやりしていた。


(思い出さなきゃ……考えなきゃ…)


そう思ってもふわふわとした心地よさが気持ちよく、いつもより楽しい気持ちに傾いて"まあいいか"と思わせてしまうのだ。

ぼんやりとベンチに座って周りを見渡すと、人通りも多くここは駅前のようだ。

しかし……あまり見覚えがないので、杏実の最寄駅ではないらしい。


(ここ……どこだろう……)


そして、一番奇妙なことに気が付いた。


(あれ?)


なぜ朝倉と一緒にいるんだろう――――――?

ずっと会いたかった……でもなぜ?


「朝倉さん?」

「は?」


返事が返ってくる。夢じゃない!?


「どうして私朝倉さんといるんですか? 私……何してたんだっけ? ここどこですか……?」

その声に朝倉はますます眉間に皺が寄り、不機嫌そうな様子となった。

いつもなら怖いと思った表情なのかもしれないが、今は特に何も感じない。お酒の効果はすごい。

しかし申し訳ない気持ちになって……少し自分でもこの状況についてぼんやり考えてみた。


(???)

だめだ、さっぱり思い出せなかった。


その様子を察してか、隣で朝倉の長いため息が響いた。

そして杏実の腕を掴むと、再び立ち上がらせる。朝倉が腕で杏実をしっかり支えてくれていたので、今度はふらつくことなく立ち上がることができた。


「家、どこだ?」

「え? 私ですか?」

「お前以外誰がいる。送ってやるからさっさと案内しろ」

「え?」


(朝倉さんが送ってくれる……?!)


「……おい。まさか家もわからないんじゃないだろうな?!」

状況についていけないで戸惑う杏実に、凄味のある声と鋭い視線でにらまれる。


「いえいえっ……わかります!」

とっさに返事をする。今度は怖かった。

一瞬酔いが醒めたように感じる。頭の中の霧がゆっくり晴れていくように感じたのだ。

きっと思い出すのも時間の問題だろう。

それまではとりあえず彼についていってみよう。

杏実がとりあえず感謝の意味を込めて笑顔を作ると、朝倉は再び顔を不機嫌そうにしかめてから「だったらさっさと案内しろ」と杏実の腕を引いて歩き出したのだった。



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