表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蜂蜜とミルクティー  作者: 暁 柚果
〈 2 〉
11/100

11.とある会社……という偶然

 接待を含めた合コンとは何ぞや?


そもそもとある会社のお得意様の息子の御曹司が合コン好きらしく、彼を接待するために企画された合コンらしい。

派手好きな性格で、そのために女性陣は着飾って望むことになったらしい。

合コンという名の接待。杏実たちは素人のコンパニオンのようなものと推測される。

そしてその……とある会社とは――――――



困った。

非常に困ったことになった。

杏実はこの場にいた中心人物を、直視できずにいた。間違いなくその人物は、『スクラリ』にいたころの常連さんなのだ。

すなわち、このとある(・・・)会社とは、杏実が長年働いてきた『スクラリ』のある親元である商社だったようなのだ。

もちろん隠れる必要はない。もう店員では無いし、あれから2年も経っている。第一、杏実が知っていたからと言って、この人物がただのカフェのアルバイトを覚えているわけもないだろうし、今日の山川仕様の容姿ではどう考えてもばれることはないだろう。

わかってはいるけれど、万が一……こんな度派手な格好をしているのが同一人物だと、知られるのはなんだか恥ずかしい気がしたのだ。


「くれぐれも粗相のないようにお願いしますね」

そういって、その問題の人物は「なんかあったら僕らこれだからさ~」と首を切る真似事をする。やはり会社員というのは、大変なもんなんだな……と思う。

山川たちは(杏実を除いて4人)は、「はーい!」と黄色い声で返事をしていた。まるで練習していたかのように見事に揃ったその声は、気合のほどを感じる見事なものだ。

反対に、杏実はため息しか出ない。


「もうすぐ出先から、直接合流するやつが来るはずなんだけど…」

「平田さんですか?!」

「え! 平田さんも来るの!!」

山川の大学の友達だというサラサラヘアーの細身の女性と山川が、嬉しそうに幹事の男性と話す声が聞こえてきた。

ぼんやりとその光景を見ていた杏実だが……なんだか聞きなれた名前であることに気が付く。


(平……え……平田さん!?)


そうか……こんなチャラい(とは失礼か?)企画を考えそうな人物とはあの人に違いないではないか。しかしそれが本当なら、これはちょっとまずい気がする。

常々杏実や他の女性に軽口をたたいていた平田だが、なんとなく彼の女の人に対する鋭さは並みじゃない気がしていたのだ。もしかすると平田なら"これ"が杏実だと気か付くかもしれない。そしてそうなれば間違えなくコテンパにからかわれるに違いない。


「いや……平田主任は今日急に無理になったんだ」

「ええ~!!!」

辺りに一斉にブーイングの嵐が鳴り響いた。


(来れないんだ……)

それを聞いてほっと胸をなでおろす。


「なんでですか~? 今日は平田さんの企画でしょ?」

やはり杏実の平田への人間的評価は間違っていないらしい。


「うん……まあそうなんだけど。代わりに別のホープが来てくれることになってるからさ!!なんせ異例の出世頭、平田主任と同期にしてさらに上を行く課長様だよ」

「わぁぁ~!?」

「きゃ~!!」

完全にテンションの下がっていた女性陣の声色が明るく回復している。


「しかも……平田と同様、結構なイケメンだぜ。まあ……この手のことには、ちょっと期待できないけどゴニョゴニョ……」

語尾を濁し始めた幹部には気が付かず、山川たちは機嫌を取り戻したのか嬉しそうに仲間同士で話をし始めた。


(平田さんも主任だったんだ…)

スクラリにいたときからモテるとは思っていたけど、社外まで及んでいたとは恐れ入る。「御曹司との玉の輿」……と言っていた山川は、実は平田との接点も狙っていたのかもしれないとも思う。

それに"主任"という言葉にある人物が重なってドキッとした。


(朝倉さん……)

彼も主任だったのだ。それに"同期"という言葉にも無意識の間に心臓がどきどきと早鐘を打ち始めた。


(まさか……ね)


そんな都合のいいことあるわけがない。大きく首を振ったとき、後方から――――聞きなれた低音の声が聞こえた。


「悪い。遅れた…」


(この声……っ!)


恐る恐る振り向く。その瞬間はまるでスローモーションのように思えた。


「課長! お疲れ様です」

そこには長身の男性……細かいストライプの入ったダークブルーのスーツをパリッと着こなした――――朝倉が立っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ