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蜂蜜とミルクティー  作者: 暁 柚果
〈 1 〉
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1.カフェ「スクラリ」

 プロローグ


「申し訳ないが……軽い女は嫌いでね」

 目の前で辛辣な言葉がつづられるのを、ただ見ていることしかできなかった。



「君には二度と会いたくない」

 二年ぶりに会えた想い人……見ているだけしかできなかった憧れの人。


 どうしてこんな風になってしまったんだろう――――――? 







――― 二年前



「え? 辞めちゃうの?」

「はい・・・・・・」


 PM8時ジャスト、この時間に決まって店長は奥の部屋に休憩に入る。

 ここは名の知れた商社の1階にあるオープンカフェ『スクラリ』


 オープンカフェとはいうが、今どきのスタバのようなフレーバーティーやキャラメルうんぬん……などというネーミングのおしゃれなメニューはない。アンティーク調の家具が置かれたレトロな雰囲気の喫茶店。純喫茶というには歴史はないのだけど・・・・・・


 制服は白シャツにひざ下のタイトスカート、黒のパンプス。化粧は禁止で髪は黒髪、1つにまとめる。とにかく服装も地味・・・・・・というのも、このオカマ(・・・)な店長「男はみんなオオカミ」のモットウからきている。

 店長曰く、"この商社には男性が多いので悪い虫に引っかからないように"という少々思い込みすぎな気もする配慮かららしいのだが、その徹底ぶりは店員が店内で偽名を使わなければいけないことからも伺える。


 私はちなみに、千歳 杏実(ちとせ あみ)。だけど名札には「アメ」と書かれている。


 なぜかというと……千歳杏実…あみ…あみ…アメ。そう、"千歳飴"からきている。

(って小学生!?だけど、これも店長独断)


 まったく自分も男なのに、いったい何があったんだ・・・?と突っ込みたいところだけど、お得意様である商社社員にとっては何よりスクラリは近く、コーヒーや紅茶も文句なく美味しいので人気のカフェなのである。



 あらためて私、千歳 杏実。25歳。

 身長は159センチ。

 真っ黒の長い髪に、平凡な顔つきと中肉中背。そして少し特徴のある黒縁メガネをかけている。

 事情があって、ここ数年おしゃれには無縁の生活。

 ここでアルバイトを始めて、もう6年になる。ほとんど毎日働いていたこともあって、アルバイトとはいえ、ほとんどのことは1人でできるから、店長にも並ぶバリスタと言われている。



 客足が途絶えたのを見計らって、店長が休憩に入る準備をし始めた。杏実は店長を呼び止めると、前々から言わねばならなかったことを告げた。

 この春から祖母のいる介護付き住居型有料老人ホームに、就職が決まったのだ。


「じゃあ、就職決まったんだぁ~。もしかして今もたまにボランティアに行ってるっていう?」

「……はい。もともと祖母もいますし、顔なじみの職員からも是非といわれて」

「そっか~よかったじゃなぁい」

 店長はそういって杏実の背中をポンと叩いた。


「アメちゃん、やっと念願の保健師になれたんだもんねぇ……。あんた、学費もなんもかも自分でやりくりしてたじゃない。でも残念だわぁ……アメちゃんみたいなベテランさんがいなくなると」

「……す…すみません」

「あら? 謝ることないのよ~。でもやめても、いつでも遊びに来なさいよ。もう家族みたいなもんじゃなぁい~」


 そういって店長はポンと杏実の肩をたたき、「んじゃ~休憩してくるわん」と奥の休憩室に消えていった。

 オカマだが、本当に部下思いのいい人なのだ(…オカマなのにはよけいか)




 一人で店番をしていると、入口に常連さんが顔をのぞかせた。


「いらっしゃいませ」

「アメちゃ~ん!」


 ………来た!?


 明るい栗色の髪に負けないぐらいの、華やかな声色と王子様のようなさわやかな笑顔が、こちらに向かってきた。


 彼は商社社員の常連、平田さん。入社6年目。

 目を引く明るい栗色の髪に大きな二重の目、透き通るような白い肌にパーツのバランスが絶妙な端正な顔立ち。背は175センチぐらい。とにかく笑顔がさわやかで、イケメン。「光の王子様」と呼ばれている。

 一日に名前を聞かない日はないほど商社女子社員のなかでは噂の的で、アルバイトの杏実までも知りたくなくても情報が入ってくるのだから、相当な人気なのだ。

 個人的な親しい間柄ではない杏実対しても、いつも軽いノリで近づいてくるので杏実自身は戸惑ってしまうのだが、誰に対してもそうなので勘違いしてしまう人もいるらしい。


 正直……ちょっと苦手な存在だ。

 悪い人ではないのだけど。


「あれ……お客さんいないの? アメちゃん一人?」

「平田さん、いらっしゃいませ」

「うんうん。会いたかったよ」

「はぁ……?」


 あ……会いたかった?


「僕を待っててくれたんだぁ……マイスイートキャンディー~!!!」

「マ……マイ?」

 毎度のことながら、この軽さにはどう対応したらわからない。


 ばしっ


「って!」

「あほか。おまえは……店員さん困ってんだろ!?」


 ドキッ

 ――――――この声…


 平田は頭をさすりながら後ろを振り向く。杏実も同時に声の方向に顔を向けた。

 平田の後ろには、書類を丸くまとめて腕を上げる彼――――”朝倉 颯人(あさくら はやと)”の姿があった。





疲れた日常にほんわかできるような…ビタミンとなるようなベタな恋愛小説を目指します

初めての物書きでつたない文章ですが、どうかお付き合い下さいませ…

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