安奈編 第七通 再会
あの事件以来、私のメールを送る回数は激減していた。まぁ、メールの殆どが雅之とのやり取りだったので、雅之のアドレスを無くした私にはメールをする相手などそんなには居なかった。
久美子や和美は『過ぎた事は忘れて新しい恋を探そうよ』的な事を言っていたが、私にとっては初めて訪れた運命の出会いだった。確かに、初めは嫌々ながらのメールだったけど、雅之と対面した時に、ピーンときたのだ。
そんなこんなで、雅之とメールが出来ない日々が続くまま一学期が終了した。他の皆が嬉しそうに教室を出て行く中、私は肩を落し一人席に着きため息を吐く。
そんな私を見かねたのか、久美子と和美が私の傍にやって来て優しく言葉を掛ける。
「元気出せって安奈。いつまでも引き摺ってると、新しい恋も見えてこないぞ」
「別にいいもん……。それでも……」
「安奈は可愛いんだからすぐにいい人が見つかるって、以外に近くに居たりするんだよ」
「まだ一度しか会ってないのに……」
「聞いてないし……」
私は完全に自分の世界に入り、久美子と和美の言葉など殆ど聞いていなかった。その後、私が気付いた時には久美子も和美も居なくなっていて、余計に気分が落ち込んだ。
そして、夏休みも大分消化し、私は実家に戻ってきていた。丁度、雅之と待ち合わせした駅を降りて、少し複雑な街道を進んだ所に私の実家があり、もしかしたら雅之に会えるんじゃないかと少し期待もあった。
私が帰ってくるなり、母は嬉しそうに出迎えてくれた。あんまり、実家に帰らないからこうなるのだろうが、一応何度か家に連絡を入れるようにはしていた。
「安奈。今日は彩夏も帰ってくるから、久し振りに家族全員そろうわよ」
初耳だろうが、私には五歳年上の姉が一人居る。名前は彩夏。今はデザイナーとして働いているが、上手くいっているのかはよくわからない。なんせ、会うのも久し振りだからだ。
「それで、彩ネェは上手く言ってるの?」
「それがねぇ、母さんもよく分からないのよ。あんまり連絡寄越さないからねぇ」
「へぇ〜っ。そうなんだ」
私は洗濯物を畳みながら母に軽く相槌を打つ。その後も、私は母と他愛もない会話を進めた。
昼下がりになり、一通り家事を手伝った私は母に買い物を頼まれ、久し振りに通る道に胸躍らせる私は、一軒の本屋の前に見覚えのある姿を発見した。チラッと見えただけだけど、私は思わず声を上げていた。
「あっ! マサ!」
私の声に雅之が振り返る。その瞬間、私は嬉しくて飛び上がりそうになった。また、雅之とメールが出来る。そんな事ばかり考えていた。
「安奈……」
少し元気の無い声でそう言う雅之。俯く雅之に、謝らなければと思った私は、両手を合わせて雅之に頭を下げる。
「ごめん! 私、携帯無くしちゃって……。買い換えたんだけど、マサのアドレス分からなくて……」
「な…なんだ。そうだったのか……」
私の言葉に少し元気を取り戻す雅之は、ポケットから携帯を取り出しアドレスを教えてくれる。本当に嬉しく、私は自然と笑顔になり別れ際に雅之に微笑みながら言った。
「これで、またメールが出来るね」
この後、すぐに雅之と別れ、私は家に向って歩き出していた。母に頼まれた買い物も完全に忘れ――。
少し遅れましたが、安奈編『第七通 再会』どうでしたでしょう?
結構、頑張って執筆してるのですが、思う様に進んでおらず、少々手間取ってますが何とか、皆様の期待に答えられる作品に仕上げたいと思っております。