高校三年 卒業式 (前編)
卒業式当日。
いつもより早く目を覚ました安奈は、暫し天井を見つめていた。
だが、ジッとしていると落ち着かず、安奈はベッドから立ち上がり制服に着替えていた。
「卒業式か……。緊張するな……」
制服のボタンをとめながらそんな事を呟く安奈は、ふと携帯を手に取った。
『マサ、起きてるかな?』と、思いながら携帯を開く。
すると、携帯が急に激しく震えた。驚いた拍子に、携帯が宙に舞う。
左手で携帯を取ろうとしたが、それは空を切り、何とか右手を伸ばして携帯をキャッチする。
間一髪だ。
ホッと胸を撫で下ろす安奈は、弾みで閉じた携帯を開いた。
メールのマークが着いている事から、メールが届いたのだと気付く。
「誰だろう? 朝早くから」
そんな事を呟きながらメールを開いた。そこには、マサと名前が打ってあり、雅之からのメールだと気付いた。
「マサ、起きてたんだ」
少し嬉しそうに、安奈はメールを読んだ。
『おはよう。まだ、寝てたかな? ちょっと、早く目が覚めてさ。何だか緊張気味。卒業証書貰う時こけたらどうしようとか考えちゃうよ。あ〜…不安だらけだ〜』
「フフフッ。な〜んだ。マサも私と同じだ」
嬉しそうに含み笑いをしながら、安奈はメールの返事を打ち返した。
『おはよう。私も、今日はちょっぴり早く目が覚めたんだ。マサにメール送ろうか悩んでたら、マサからメールが! びっくりして思わず携帯を投げちゃったよ。何とかキャッチしたけどね。そうそう、私も卒業式が不安なんだ。大勢の前で恥じはかきたくないよ〜』
メールを送った後、安奈は朝食の準備をする。
その間も、雅之と何度かメールのやり取りをかわしあった。
楽しい時間と言うのはアッと言う間で、すぐに久美子が部屋の前まで迎えに来る。
「安奈〜。早く! 早く!」
「分かってる! そう言うなら、もっと早く来れば良いのに……」
軽く愚痴を零す安奈は、ちゃんと戸締りしたか確認して、靴を履き外にでた。
少し苛立った様子の久美子に、「お待たせ!」と、笑顔で言う。
呆れた様にため息をつく久美子は「急ぐわよ!」と、言って歩き出した。
安奈はそんな久美子の背中を見て、軽く笑い後を追った。
朝から上機嫌の安奈に対し、ちょっと不満そうな表情の久美子。
少し久美子の事が気になった安奈は訊く。
「久美ちゃん。どうかしたの?」
「別に〜。何処かの誰かが、朝からイチャイチャメール何かしてるからさ!」
「イチャイチャって、何でメールしてたの分かったの?」
「そりゃ分かるわよ。あんたが、いつも以上に上機嫌だから」
「でも、イチャイチャなんかしてないもん」
安奈はそう言い頬を膨らます。すると、久美子が振り返り呆れたようにため息をつく。
「はいはい。わかったわよ。イチャイチャしてないのね」
「何よ。その投げやりな言葉は」
「さぁ〜っ、卒業式頑張ろう!」
「もう! 話し聞いてる」
「聞いてます、聞いてますよ〜」
投げやりな態度でそう言う久美子は、安奈に背を向け歩き出す。
その時、安奈はふと向こう側の歩道に目が行く。向こう側の歩道を二人組みの小学生が歩いていたのだ。
二人とも小学校低学年と言った感じで、何だか凄く危なっかしい。
今にも道路に飛び出しそうだったから。
「何だか、心配だな」
ふと、そんな事を呟いた安奈は、車のエンジン音に気付き振り返った。結構大型のトラックが、これまた結構なスピードで走ってくる。
子供達はそれに気付いたいない様で、未だじゃれあっている。
その時、一人の男の子がバランスを崩し道路へと体が投げ出された。
『危ない!』と、思った時には体が動いていた。
卒業式……。
色々な事を思い出します。楽しかった思い出や、辛かった思い出。
いよいよ、次回で『間違いメール 番外編集』も、幕を閉じます。長かったですが、最後まで読んでもらえると、嬉しいです。