高校三年 三学期―4 (白羽 和彦)
もうすぐ、卒業式だ。
大学入試も終わり、合格発表を待つだけとなった俺は、息抜きのため公園に来ていたが、そこで思わぬ人物と鉢合わせになった。
「おっ、和彦。何してるんだ?」
ゴツゴツした声の男 健介。
彼がこの公園で何をしているか分からないが、暇だったため話をする事にした。
「俺は、軽い息抜きだ。お前は何してるんだ?」
「素振りだ。練習とかサボってると、腕がなまるだろ? だから、こうして素振りする様にしてるんだ」
「バッティングセンター近くにあるだろ。そこで、球打った方が良いんじゃないか?」
俺のこの発言に健介が呆れたように首を振り不適に笑みを浮かべ答えた。
「お金がありゃ、そっちに行ってるさ。今、金欠で苦しいんだよ」
「そうなのか。それじゃあ、俺がおごってやるよ」
何と無く、受験で溜ったストレスを発散させたかった。
その為、バッティングセンターに行こうと誘ったのだ。
俺の言葉に少し嬉しそうに笑みを浮かべる健介は、明るく答えた。
「良いのか! おごってもらって!」
「ああ。俺も、少しストレス解消したいからな」
「珍しいな。お前がストレスなんて」
「受験で色々モヤモヤしててな」
俺がそう言って苦笑いを浮かべると、健介は「そうか」と小さな声で言い、なにやら表情を変え力強く言う。
「よし。俺が、スカッとするバッティングの仕方を教えてやる」
「いや。いい」
健介が言い終わる前に、俺は即答した。
教えてもらうと、何だか余計にモヤモヤするだけだ。
それに、自分が思いっきり振れればそれで良いと思う。
少し落ち込み気味の健介を連れ、バッティングセンターに来た。
「さて、まずは健介の腕前でも見せてもらおうかな?」
「見せてやろうじゃないか。俺の腕前を!」
自信満々で健介は140キロの場所に入っていく。
結構、近くで目の当たりにすると、140キロは速く感じる。
俺には多分打てないだろう。
そう思っている矢先、快音が響く。
流石は元野球部。軽々と球を打ち返してゆく。
「凄いな」
「な〜に。この程度、この俺に取っちゃ朝飯前だぜ」
「それじゃあ、俺は100キロ位から挑戦するかな」
「初心者はその方が良いぞ」
俺を小ばかにする健介に、少し腹が立った。
そして、その怒りを全てボールにぶつける。
快音が連続で鳴り響く。すると、健介の「おお〜っ」と、驚いた様な声が聞こえる。
最後の一球も軽々と弾き返した俺は、自信満々に健介の方に行く。
「やっぱり、一年の時に野球部に誘っとくべきだったな」
「誘っても入らないって。元々、部活入る気はなかったから」
「ムムッ! なぜ、そんなに運動出来て部活に入らん」
「事情は色々さ。それより、練習しないのか?」
「ムッ! やるさ! やるに決まってるではないか!」
健介はズカズカと歩いてゆき、また140キロの球を打ち返していた。
その後も、俺と健介はバッティングセンターに快音を響かせた。