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高校三年 冬休み―5 (倉田 雅之)

 一月一日。

 年も明け、朝から神社の前で大勢の人に囲まれていた。

 今年も初詣に来ていたのだ。だが、去年と違い今年は一人で、安奈は隣に居ない。

 ちょっと訳有りで、安奈とここで待ち合わせているのだ。でも、この混雑では見つける事は難しいだろう。

 健介と由梨絵ともこの神社で会う予定だが、果たして会えるのだろうか。

 そんな不安を頭に過ぎらせながら、大勢の人に流されてゆく。

 完全に流れに身を任せる僕は、遠くで名前を呼ばれたのに気付き足を止めた。

 何処からか分からないが、確かに安奈が僕を呼ぶ声が――。

 辺りをキョロキョロとしていると、突然右手首をガッチリとつかまれ、引っ張られた。


「うわっ!」


 驚きの声を上げた瞬間、目の前に安奈の顔が現れた。


「やっと捕まえた。もう、見つけるの大変だったんだから」


 着物姿の安奈の姿に見惚れる僕は、完全に安奈の言葉など耳に届いていなかった。

 少し首を傾げる安奈は、僕が話を聞いていないのに気付いたのか、頬を膨らます。


「もう! 私の話しきいてないでしょ!」

「あっ、ごめん。つい、見惚れちゃって――」


 我に返った僕がそう言うと、安奈は恥かしそうに赤面し顔を隠す様にする。


「う〜っ。恥かしいよ。そんな事言われちゃ」

「だって、本当のことだし」

「もう、マサったら」


 安奈が軽く僕の右肩を叩いた。

 そんなに強くないが、僕はフラフラっと後ろに一歩下がってしまった。

 その瞬間、人の波にさらわれ流されてゆく。

 ビックリした様に、安奈は僕の後を追いかけてきた。


「もう。ビックリしちゃったよ」

「僕もビックリだよ。まさか、流されるなんて」


 何とか合流できた僕と安奈は、ようやくお賽銭を投げ入れ手を合わせた。

 去年はどんな事を願ったかな、何て考えながら今年も安奈と一緒に居られますようにと願う。

 安奈は何を願っているのか、随分と長い間手を合わせていた。

 お賽銭の後は、去年と同じ様におみくじを引いた。

 去年は吉だったが、今年はどうだろう。そんな事を考えながらおみくじを引くと、何と大吉だった。


「おっ! 大吉だ。新年早々、嬉しいな〜」


 嬉しさのあまり笑みが自然とこぼれた。

 そんな僕を見つめる安奈は、羨ましそうに言う。


「いいな〜っ。よ〜ぃ。私も大吉引くぞ!」


 張り切りながら安奈がおみくじを引いた。

 結果は――。


「やった! マサと同じ大吉だ!」


 そういいながら安奈が抱きついた。一瞬ドキッとした。

 顔はみるみる赤くなり、恥かしくなり安奈の顔を直視できなかった。

 安奈はそんなの気にしていない様で、嬉しそうにおみくじを見ている。


「恋愛は、相手を愛すべしだって。マサのはどう?」

「僕の? 僕のは、相手を信じれば良しだって」


 僕は自分の恋愛の項目に書かれた言葉を読む。

 すると、少し悲しそうな表情を浮かべ、安奈が聞く。


「マサ、私の事信じてる?」

「エッ。当たり前じゃない。疑う事なんて無いよ」

「本当に?」

「本当だって」


 僕がそう言って微笑むと、安奈も安心したように笑みを零した。

 それから、何とか健介と由梨絵と合流し、のんびりと家でおせちなんかを食べて過した。

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