高校三年 冬休み―4 (鈴川 由梨絵)
近くのお店まで買出しに出ていた。
買うものは兎に角一杯あるらしく、私と安奈さんは恵利ちゃんについてきたのだ。
恵利ちゃんは、「大丈夫だよ」と言っていたが、安奈さんは「いいよ。一緒に行くよ。去年大変だったから」と、笑顔で言い、恵利ちゃんが負けたといった感じが見受けられた。
お店では色んな調味料を買いだめしていた。安い時に一杯買っておくのが、倉田家の決まりなんだって、恵利ちゃんは言ってたけど、多分今日のは買い過ぎだと思う。
私も安奈さんも恵利ちゃんも両手一杯に袋を持っていて、その袋の中は調味料だらけだった。
「ちょっと、買いすぎちゃったかな」
「恵利ちゃん。ちょっと所じゃないよ。砂糖なんて五キロ分買ってるよ」
「砂糖はすぐになくなっちゃうの。だから、それ位買いだめしておくのがいいのよ」
「本当?」
「本当よ」
半信半疑の私に、胸を張り堂々とそう言う恵利は、白い歯を見せ微笑んだ。
やっぱり、買いすぎたんだ。と、私は思い笑みを返した。
安奈さんはそんな私と恵利ちゃんの会話を聞いて「フフフフッ」って、含み笑いをしている。
「どうかしたんですか? 安奈さん」
「ううん。別に大した事じゃないの。ただ、二人とも仲が良いんだなって、思って」
「そうですね。大親友ですよ」
安奈さんの言葉に、私はそう答え「ヘヘヘヘッ」って笑い声を上げた。
三人で何と無く笑って、細い街道を歩いていた。でも、やっぱり大量の調味料は重く、両手は痛くてたまらなかった。
「た、ただいま」
疲れ切った声で恵利ちゃんが玄関を開け叫ぶ。
すると、明るい声で返事が返ってくる。
「おかえり、冷たいお茶が用意されてるよ」
白羽先輩だった。何て気の利く先輩なんだろう。
それに比べて、健介先輩は――。何をしているんだ。
と、思いながら、リビングに向った。すると、何と健介先輩が倉田先輩(雅之)にソバの麺打ちを教わっていた。
私も安奈さんも恵利ちゃんも驚いた表情をしていたのだろう、白羽先輩が笑いながら答える。
「驚いたろ。来年は来れるか分からないから、今の内に雅之のそばの作り方を覚えるんだってさ」
「そんな、一朝一夕で覚えられるものじゃないよ」
「そうだね。それでも、諦めないって所が彼らしいけどね」
落ち着き払い少し笑みを見せる白羽先輩。
健介先輩と違い、ここら辺はカッコいいって感じる。
暫く麺打ちをする健介先輩を私達は眺めていた。
汗を滲ませながら、必死に麺打つ健介先輩は、少しだけカッコよく見えた。
それから、何時間かが過ぎ、ようやく年越しソバが完成した。
汁は倉田先輩が作ったが、麺は健介先輩が作ったので、太さがバラバラで太いのがあれば、細いのもあった。
「初めてにしては、良い感じだよ。僕なんて、食べられるものじゃなかったからね」
少し落ち込む健介先輩を励ますように、倉田先輩はそう言った。
白羽先輩も「誰だって、初めから上手くいくことはないさ」と、いって笑って年越しソバを食べていた。
でも、倉田先輩の作った年越しソバが食べられなくて少し残念そうだった。
私も倉田先輩の作る年越しソバが食べられなくてちょっぴり残念な気持ちになったが、健介先輩が一生懸命打った麺は美味しく感じた。