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高校三年 冬休み―3 (白羽 和彦)

 由梨絵に連れられ、雅之の家に来ていた。

 雅之も驚いた様で、目を丸くしていた。

 俺も安奈と健介が居る事に驚いたが、それ以上に健介は由梨絵が来た事に驚いていた。

 ソファーから立ち上がり、すぐにその場を離れた健介は、引き攣った笑いを由梨絵にむけている。


「もしかして、恵利ちゃんが言ってた迷惑な人って健介先輩だったんですか」

「そうなのよ。迷惑なのよ」

「駄目ですよ。健介先輩。迷惑掛けちゃ」

「お、俺は迷惑なんてなぁ」


 健介が雅之を見てそう言うが、雅之は何の反応も見せずお茶を啜っていた。

 そんな雅之を見て、安奈は軽く苦笑する。由梨絵はすぐさま健介の傍に移動し、なにやら説教を初めていた。

 お茶を啜っていた雅之はソファーから立ち上がると、俺の方を見て軽い口調で言う。


「何か飲む? って、言ってもお茶しかないけどね」

「それじゃあ、お茶貰おうかな」

「来るなら、来るで言ってくれれば飲み物用意してたのに」

「いや。来るつもりじゃなかったんだけど、由梨絵ちゃんに捕まってな」

「そうなんだ。それじゃあ、今日は年越しそば食べていってよ。毎年、僕が作ってるんだ」


 少し自慢そうに雅之がそう言う。それだけ、腕に自信があるんだろう。

 俺も少し興味があったので、雅之の作る年越しそばを食べる事にした。

 まだ、外は明るく、年越しそばを作るまでまだ時間があると言う事で、皆で雑談を楽しんだ。

 それから、暫くして、恵利が安奈と由梨絵を連れて買い物に出かけた。

 連れてと言うよりか、二人が着いて行ったと、言う方が正しいだろう。

 残された、俺と雅之と健介は、のんびりと話をしていた。


「しかし、ビックリだぜ。まさか、由梨絵が来るとは」

「俺もビックリだよ。由梨絵に会ってユキの家に連れてこられるなんて」

「そうだね。まさか、和彦まで大晦日に来るなんて思わなかったよ」

「悪いな。忙しいのに」

「別に、大して忙しくはないけどね」


 雅之はそう言い微笑む。それに対し、不満そうな表情を浮かべる健介は、ため息を吐く。

 軽く首を傾げる雅之はそんな健介に訊く。


「どうかした?」

「いや。大して忙しくないって言ったからさ」

「忙しくなかったでしょ?」

「いや。結構大変だったぞ。大掃除。それに、手伝ってないのに、和彦まで食うのか? 年越しそば」


 かなり不満そうな表情だ。

 引き攣った笑いを浮かべる俺は、雅之に目で助けを求めた。

 すると、それに気付いたのか雅之が言う。


「まぁまぁ。和彦には色々お世話になってるし、僕としても皆で美味しく年越したいし、いいじゃない」

「でもよ。俺、大掃除手伝ったんだぜ」

「だって、健介はその分、年越しそば一杯食べるじゃない」

「まぁ、そうだけどさ」


 不満そうに唇を尖らす健介は、小声でブツクサと言いながらお茶を口にはこんだ。

 雅之はクスクスと笑っていたが、俺は何だか申し訳なかった。

 偶然、由梨絵にあって来ただけなのに、年越しそばをご馳走になるなんてと思って。

 帰ろうとも考えたが、それでも興味があったのだ。雅之の作る年越しそばに。

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