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高校三年 クリスマスパーティー―2 (鈴木 安奈)

 パーティーを抜け出し、近くの公園まで来ていた。

 十二月の夜は流石に冷え込んで、薄着で雅之の家を飛び出してしまい、私は少し後悔した。

 でも、何であんな事で怒っちゃったりしたんだろう?

 今考えると不思議で、呆れて言葉もでない。

 身を縮めベンチに座った私は、白息を吐きながらふと夜の公園を見回す。

 所々に立つライトが穏やかな光を放ち、虫がその周りに漂っていた。そんなライトの光を見つめた後、私は空を見上げた。

 真っ黒な空に、点々そ光を放つ星々。月は微かに光を放ち、他の星々よりも明るく輝く。

 そんな夜空に見惚れていると、首に暖かいものが触れた。と、同時に雅之の声がする。


「そんな薄着で外に出ると、風邪引いちゃうよ」


 振り返るとそこに雅之が居た。ニッコリ笑い、私を心配するような目をしていた。

 私の首には、去年のクリスマスに私がプレゼントしたマフラーが。


「これって……」

「そう。去年貰ったやつ。校則で学校にマフラーとか持ってけないけど、普段外に出る時はいつも巻いてるんだ。ずっと、安奈と居られる気がするから」

「マサ……。ありがとう」


 何か感激だった。こんな下手なマフラーを、いつも持ち歩いてるなんてと思うと。

 涙が出そうになるがそこは堪え、私は微笑んだ。

 少し呼吸の荒い雅之は、私の隣に座り深々と息を吐いた。

 私を探すために走っていたのだろう。


「ごめんね。私――」

「何で謝るの?」

「エッ、だって、私が勝手に怒って――」

「何言ってるんだよ。そのおかげで、こうして二人っきりになれたんだよ」


 雅之の言葉に少しドキッとした。

 まさか! 襲われるんじゃ!

 何て私は考え頭の中は混乱する。

 そんな私に、夜空を見上げながら、


「何だか、久し振りだよね。こうして、二人だけでゆっくり話すのって。最近は、色んな人達と一緒だったから」


と、笑顔で言う。

 確かに、三年に上がってから、私と雅之の二人だけで居るのは少なくなっていた。

 だから、こうしてゆっくりと話しをする事は極端に少なくなっていたのだ。


「それに、色々忙しくてメールのやり取りも少なくなってたし、話したいこと沢山あるし」

「そう言われてみれば、そうだよね。私達、進路の事とかで忙しかったもんね」


 何だか、メールのやり取りを沢山している日々の事を懐かしく思いながら、私はそう言った。

 その後、私と雅之は今まで話せなかったことを話した。

 沢山沢山今までにないくらい話した。

 暫く話して、雅之は思い出したように声を上げる。


「あっ、そうだ。忘れない内に、これ」


 小さな正方形の綺麗に包装された箱を私に手渡す。

 私の事をニコニコしながら見る雅之に、私も微笑を返して包みを開いた。

 包みを開くと小さな木箱があり、私はその蓋をゆっくりと開く。

 箱の中央には小さく綺麗に煌く星のネックレスが寝かされていた。

 私はそれを手に取り、


「うわっ。可愛い。ありがとう、マサ」


と、言った。雅之は嬉しそうに微笑んで答える


「いいよ。安奈が喜んでくれて」

「それじゃあ、私からは――」


 私はそこまで言ってから、軽く雅之の唇に唇を重ねる。

 一瞬時が止まった様に周りが静まり返り、風で揺れる木々の葉の音だけが響いた。

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