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高校三年 二学期―9 (川島 久美子)

 朝から安奈がため息を吐いていた。

 学校に着くまで何かを考え込む様に、俯いたままで、何回電柱にぶつかっていただろう。

 大抵、こういう時はろくでもない悩みを胸に秘めているのだ。

 その為、今日は安奈を誘って屋上で昼食を食べる事になった。もちろん、和美や冷夏も一緒だ。


「そんで、今日は何? また、安奈か?」

「エッ! またって、それじゃあ、私がいつも迷惑掛けてるみたいじゃない!」

「う〜ん。まぁ、ほぼ当たってるかな」

「久美ちゃんまで! 酷いよ〜」


 私に助けを求めるような視線を送る安奈に、私は苦笑してみせた。

 落ち着いた様子の冷夏と和美は、弁当を広げそれを口に運びながら私と安奈の方を見ている。


「それで、今日はどういたしましたの?」

「私、あんまり寒いの好きじゃないんだ。早く用件を話してくれよ」


 確かに十二月で冷え込み、屋上は結構寒かった。私も本当はあんまり寒いのは好きじゃない。

 だから、さっさと話を済ませようと、安奈の両肩に手を置き訊く。


「それで、今日はどうした? 朝からため息ばかり吐いて、電柱には激突して。もしかして、雅之の事か?」

「まぁ、それもあるけど……。実は、クリスマスプレゼントどうしようかなって」

「そうですわね。もうじきクリスマスですわね」


 少し嬉しそうな声でそう言う冷夏は、目を輝かせながら安奈の方を見つめている。

 一方、和美は全く興味が無いといった感じで、私の方を見ていた。

 私も安奈に言われるまで、もうじきクリスマスだと言う事に気付かなかった。


「そっか。もうそんな季節か」

「それで、何あげようかな?」

「知らん! いっそ、私がプレゼントって言ってみたらどうだ?」


 早めに話しを切り上げようと、和美がそんな事を言った。すると、安奈が真顔で考え込んだ。


「ちょ、ちょっと! あんた、本当にするつもりじゃないでしょうね!」

「エッ? 駄目?」

「駄目に決まってるでしょ! 何言っちゃってるのよ!」


 焦りながら私は安奈を止めた。少し残念そうな表情を見せる安奈は「じゃあ、何がいいかな?」と、私の目を見つめながら言う。

 そんな事、私に聞かれてもと思っていると、冷夏が不思議そうに問う。


「去年は何をプレゼントしたんですの?」

「去年は、手編みのマフラーをプレゼントしたんだ。マサ今も持ってるかな?」


 ちょっと不安そうな表情を見せる安奈は、ため息を吐き暗い表情に変わった。

 多分、何か嫌な想像でもしたのだろう。私も、和美もそんな安奈の行動に少々呆れていたが、冷夏だけは違った。

 優しく安奈の頭をなで、


「大丈夫ですわ。安奈が好きになった人ですもの。きっと大切にしてますわ」


と、優しい口調で言った。安奈は少し目を潤ませながら頷くと、明るく笑いながら言う。


「うん。そうだよね。ありがとう冷夏ちゃん」


 笑顔の安奈に冷夏も笑顔を返した。私も和美もこの二人の間に入ることが出来ず唖然とした様子で二人を見据えていた。

 その後も、安奈と冷夏はプレゼントの話しをしていて、かやの外の私と和美は弁当を食べて話しに加わる事は無かった。

 

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