高校三年 二学期―8 (加藤 健介)
もう、二学期も終盤に差し掛かった。
終盤と言うよりも殆ど終わりに近いが、俺はある事で頭を悩ましていた。
そのある事とは、今年ももうすぐやってくるクリスマスの事だ。
去年は手作りオルゴールをプレゼントしたが、果たして今年は――何を上げるべきか。
だから、俺はこの悩みを解消すべきため、今日も雅之の席の前に居た。
「ウムムムッ! どうしたものか!」
「あのさ、何でいつも僕の席の前で考えるんだよ」
少々迷惑そうな表情を見せる雅之は、俺の方をジッと見てため息を吐いた。
それでも、俺はその場を笑い退け言葉を続ける。
「ナハハハハッ! 気にすんな! それに、お前も安奈ちゃんへのプレゼント決まってないんだろ?」
「まぁ、そうだけどさ」
「だろだろ。だから、一緒に考えようぜ!」
「そこで、何で一緒に考える事になるんだよ」
呆れた様に雅之がそう言い頬杖をつく。
そんな雅之を宥めながら、俺はピリピリとする教室を見回した。
この行動には二つの理由がある。
一つ目はこの教室内の様子を窺う事。
二つ目はある男を探す事。
だが、その男はこの教室内には居なかった。
「チッ、奴は居ないか」
「奴? 多分、屋上だと思うよ。健介の探してる人って」
「またか……。しょうがねぇ、行くぞ雅之」
「何で僕まで」
「いいからこい!」
ほぼ無理やり強制的に雅之を教室から連れ出し、屋上へと向った。
廊下を歩いている者など限りなくゼロに近く、屋上に着くまですれ違ったのは一人の先生とだけだった。
それだけ、三年生はピリピリしているのだ。
屋上のドアをあけると同時に、俺は目の前の男に声を掛けた。
「また、屋上でお昼寝か? 和彦」
和彦はその言葉にスッと体を起こすと、呆れた様な口振りで、
「またとは何だ? それじゃあ、俺が毎日昼寝してるみたいだろ?」
と、言った。だが、ここ最近、和彦はよく屋上で昼寝をしている。
ここ最近と言うよりも、二学期後半に入ってほぼ毎日と言っていいほど屋上で寝ている。
その為、探す手間も省けるし、色々とコッチにとっては都合がいい。
「それで、何か様か? ユキまで連れて」
「それがよ。今年のクリスマスプレゼントの事で相談を」
「今年も? 今年は自分で考えたほうがいいんじゃないか?」
「五月蝿いな! 来年は自分で考えるから、今年まで参考にさせろよ!」
「来年まで付き合ってるかな?」
ふと雅之がそんな事を洩らした。その瞬間、俺はギロリと雅之の事を睨んだ。
すると、雅之は苦笑いを浮かべ、距離をとった。多分、殴られると思ったんだろう。
俺もそのつもりだったから。だが、俺が殴る前に和彦が雅之の額にデコピンをくらわせた。
バチンと、凄い音がし雅之が「ギャッ!」と、変な悲鳴を上げて額を押さえたまま蹲る。
「うう〜っ。和彦。不意打ちなんて汚いよ」
「今のはユキが悪いんだぞ。変な事いうから」
「でも、時々不安になるんだよ。いつか振られるんじゃないかって」
少し深刻そうな表情でそう言う雅之に、和彦が大分呆れた様に言う。
「大丈夫だって。お前と鈴木の場合は。お互いがお互いの事を思ってるんだからな」
「そうだな。俺もマサと安奈ちゃんは、何だかいつまでも一緒に居そうな感じがするな」
「多分、今頃、鈴木もユキとおんなじこと言ってるような気がするな」
冗談ぽくそう言った和彦は、大きな声で笑った。
俺も和彦に負けじと大声で笑ったが、「うるさいよ」と、雅之に言われてしまった。