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高校三年 夏休み―4 (白羽 和彦)

 午後。

 皆は颯爽と海に行く準備を済ませ、海に出て行った。

 雅之は、まだ少し仕事が残っているらしく、俺は雅之を食堂で待っていた。

 もちろん、安奈も一緒だった。何だか嬉しそうな安奈は、ニコニコと微笑んでいた。

 そんな安奈を見ていると、本当に幸せそうに思える。

 俺が、ふと笑うと安奈がそれに気付き恥かしそうに言った。


「い、今、私の事見て笑った? 私そんなに変な顔してた?」

「違うよ。幸せそうだなって思ってさ」

「エッ?」


 俺の言葉に少し首を傾げた安奈は、その意味を悟り赤面しながらも笑みを浮かべ答えた。


「うん。今、とっても幸せだよ。人生で一番」

「人生で一番か。でも、人生まだまだ長いぞ? 今が一番幸せで良いのか?」

「うん。マサと一緒に居られるこの時間が、私にとっては一番幸せな時だと思うから」

「そっか。やっぱり、鈴木はユキと一緒になって正解だったかもな」

「エッ?」

「ほら、鈴木もユキと出会って中学の時よりも何か生き生きしてる感じがするし、ユキも鈴木と会ってから凄く生き生きしてるし、羨ましいね」

「和彦君も、春奈が居るじゃない?」


 安奈がニコニコ笑いそう言うが、その言葉が俺の胸にグサリと突き刺さる。

 最近、まともに会う事も出来ず、これ以上春奈とやっていけるのだろうかと、悩んでいたのだ。

 その為、少し表情を曇らせた俺に、安奈がすぐに気付いた。


「どうかしたの?」

「いや。ちょっとな」

「私で良ければ、相談に乗るけど?」

「そうだな。一人で抱え込むより、話した方が楽になるかもな」

「うんうん。そうだよ。さぁ、話して」


 急かすように安奈がそう言う。俺は思っていた事を全て安奈に話した。

 すると、呆然とした表情で安奈が言う。


「へ〜っ。和彦君も寂しいって思ったりするんだね」

「そりゃ、人間だからな」

「そうだよね。和彦君も一応人間だもんね」

「ん〜っ。俺の事今まで何だと思ってたんだ?」

「そりゃ、何でも出来る天才君?」

「何でも出来るね……」


 俺は少し呆れた。そんな俺に、安奈は微笑んでいた。

 そこに、丁度仕事を終え雅之がやってきた。すぐにイスに腰を下ろして「はふ〜っ」と息を吐いていた。

 安奈はニコニコ微笑ながら雅之に声を掛けた。


「お疲れ様。どうだった?」

「大変だったよ。色々と」


 笑顔を見せる安奈に、雅之も笑顔を返す。ニコニコと微笑みあう二人が、俺は少し羨ましかった。

 羨ましそうにそれを見ていた俺に気付いた安奈と雅之は、急に恥かしそうに目を背け俺の方に目をやった。

 俺がニコッと微笑むと、雅之が微笑み言う。


「そ、そういえば、何の話してたの? 僕が来る前、二人で話してたみたいだけど」


 誤魔化そうと雅之がそう言う。俺はそれが可笑しく、笑いながら雅之を見据える。

 雅之は少々焦りながら俺に言った。


「な、何だよ。笑う事無いだろ!」

「そうだよ。笑う事無いじゃない」

「いや。何だか誤魔化し方が下手だなって思ってさ。二人ともよく似てるよそう言う所」


 俺がそう言うと、雅之と安奈は顔を見合わせ赤面した。

 この二人を見ていると俺の悩みなど、何処か吹っ飛んでいった。


「さぁ、俺達も海に行こう。皆待っているから」

「エッ! でも、さっきの話しの続きは?」


 安奈が驚いたように声を上げるが、俺は笑いながら答えた。


「もういいんだよ。二人を見てると、俺もまだ上手くいける気がするんだ」

「何の話?」

「だから、もういいんだって。ユキの気にするような事じゃないさ」

「え〜っ。教えてくれてもいいだろ? 友達じゃない」

「さぁ、行くぞ!」

「ちょ、ちょっと待ってよ二人とも!」


 俺と雅之にそう叫んで安奈が駆け寄った。その後、俺達は海に行き日が暮れるまで遊んだ。

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