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安奈編 第三通 二人の後輩

 五月も半ばに差し掛かり暑い日が続く。そのせいか、私はサッカー部の練習中、お茶運びで行ったり来たりと走り通しだった。そして、練習が終わり私が片づけをしていると、二人の女の子が近付いてきた。二人とも私よりも幾分背丈が低く、一人は髪を一つ結びにし、もう一人は少々長めの髪をしている。

 二人とも、一年で新しく入ってきたサッカー部のマネージャー。髪を一つ結びにしてる娘が、北山きたやま さくら。少々長めの髪の娘が大野おおの 香澄かすみ

 桜は結構活発で、よく私の手伝いもしてくれる。一方の香澄は、人見知りをするのかあんまり私とは話してくれない。

 そんな二人に、私は優しく微笑みかけ言葉を掛ける。


「どうしたの? 手分けしてチャッチャと片付けちゃいましょう」


 なぜか、ガッツポーズをする。ハッとして、握っていた拳を緩め恥ずかしさに顔がカッと熱くなる。すると、桜が噴出すように笑い出し、それにつられる形で香澄も笑い出した。


「アハハハハッ。先輩、顔真っ赤ですよ」

「フフフフ……」

「う〜っ。恥ずかし〜っ」


 小声でそう言った私の言葉は、二人の笑い声にかき消され、二人に聞こえていないようだった。それから、ひと段落つきようやく桜が本題を切り出してくる。


「あっ、そんな事より、先輩はもうあがって良いですよ。片付けは私と香澄でやりますから」

「エッ、でも、二人で大丈夫?」


 心配する私に、桜は自分の胸を右手で叩くと、堂々とした口調で言う。


「ドーンと任せてください」

「ドーンとって、言われても……」

「任せてください。私達も早く仕事覚えたいんです」


 不安そうな私の声に、暖かな可愛らしい声が返事を返す。それが、香澄の声と分かった瞬間、私は少し驚いた。まさか、香澄が私に話しかけると思わなかったし、こんなに可愛らしい声だなんて知らなかったから。多分、この時初めて香澄の声を聞いたと思う。驚く私に、香澄は首を傾げ明るい桜の声が響く。


「だから。今日から一週間は私と香澄で片づけしますよ。それじゃあ、お疲れ様です」


 無理やり返される羽目になり、暇になった私は取り合えず雅之にメールを送った。


『最近は、この時間でも外は明るいね。私の性格みたい(笑) 今日は疲れたわ。何度も麦茶を作らされて……。全く、マネージャーは家政婦じゃないのよ(怒)』


 そのメールを送り暫くし、雅之からメールの返事が届く。


『大変だね。もう、五月も半ばだからね。ずいぶん暑くなってきたから、喉が渇くんだろうね』


 私もすぐに返事を返す。


『そうだよね。もうすっかり夏だよね。私も日焼けしないようにしなきゃ! マサも日焼けしないようにね』


 いつもは片づけをしながらで、返事を送るのが遅かったが、こうやってメールの返事をすぐに返せると何だか落ち着いた。それが、なぜかはわからないけど、雅之とメールをしているのが楽しかったのかもしれない。

 校門前で携帯を握り締め雅之のメールを待つ私は、もう一つ待っているのがあった。それは、久美子の事だ。今日は、久美子と帰る約束をしている。まぁ、同じ寮で暮らしてるんだから、一緒に帰らなくても何て私は思う。

 そして、先に来たのは雅之からのメールだった。


『僕は帰宅部だから、日焼けはしないと思うよ』


と、そこに久美子が颯爽と現れ、メールの内容を盗み見て不適に笑い出す。


「フフフフフッ」

「く、久美ちゃん! いきなり現れてメールの内容を盗み見ないでよ!」


 久美子が突然現れ私の心臓は、バクバクと張り裂けそうなほど勢い良く鳴り響く。そんな私に、久美子は鋭く右手の人差し指を向け言い放つ。


「甘い! 甘過ぎるわ!」

「あ、甘いって、私とマサはまだそんな関係じゃ!」


 久美子の言葉になぜか動揺する私に、久美子は差し出した人差し指を自分の額に当てながらゆっくりと言う。


「フフフフフッ。二人とも今年の紫外線の強さを甘く見すぎてるわ!」

「エッ…。し、紫外線……」

「そうよ。今年は凄いらしいのよ。気をつけるように教えてあげなさいよ」

「う…うん。わかった」


 少々、ホッとする私の胸の内では、まだ心臓の鼓動が鳴り止まずにいた。

 随分と更新が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。楽しみにしていた皆様には、本当に申し訳ないと思っております。次回からはもっと早く更新できるように頑張ります。

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