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高校三年 夏休み―1 (鈴木 安奈)

 一学期があっと言う間に過ぎ、早くも夏休みに突入した。

 そして、私は久美子、和美、冷夏の三人とまたあの駅前に来ていた。

 旅行鞄を足元に置き、何度も携帯で時間を確認する。朝も早いため、人気はさほど無く、静かだった。


「まだ眠いよ……」


 久美子が眠そうに目を擦りながらそう言う。

 その様子に呆れた様な表情を見せた和美が半笑いしながら言う。


「お前、何時にねたんだよ」

「う〜ん。四時くらいかな? 中々眠れなくて……」

「浮かれすぎだろ」


 ため息を吐いた和美は右手を額に当てた。

 そんな会話の後、遠くで恵利の声が聞こえた。声のする方に顔を向けると、恵利が右手を大きく振りながら走ってきて、その後では二人分の荷物を持った雅之の姿があった。


「安奈さ〜ん。久し振りです」

「そうだね。久し振りだね」

「この娘は誰ですの?」

「あっ、私、倉田 恵利です。お兄ちゃんが色々お世話になってます」

「そうですの。雅之さんの」


 恵利が丁寧にお辞儀をし、冷夏もお辞儀を返した。

 雅之は、荷物を足元に置き息を荒げながら私に訊く。


「あれ……。和彦は?」

「まだみたいだよ」

「そっか。健介もまだ見たいだし……」


 雅之がそう言った直後、健介のがらがらの声が響いた。


「オーッ! 皆集まってんな!」


 振り返ると健介が笑いならが手を振っていた。その隣には由梨絵の姿もあり、ニッコリと微笑んでいた。

 久美子、和美、冷夏の三人は少し驚いていた。何であんな男に彼女が居るんだと。

 初詣以来だが、由梨絵は少し綺麗になった様な気がする。


「久し振り、由梨絵ちゃん」

「お久し振りです。安奈さん。初詣以来ですね」

「そうだね。元気だった?」

「はい。元気でした」


 私と由梨絵はそんな会話で盛り上がっていた。暫くして、和幸がやってきた。小型バスに乗って。

 私達は荷物をバスに乗せ、バスに乗り込んだ。

 結構、車内は広々としていて、快適だった。私はもちろん雅之と隣りあわせで座った。

 その後には、恵利と由梨絵が座って、何故か健介は一人ぼっちに取り残されていた。


「いいの? 健介と一緒じゃなくて」


 雅之が寂しそうにしている健介を気遣って由梨絵にそう聞いたが、由梨絵は笑顔で答えた。


「帰りは隣に座るんで大丈夫です」


 そう言う問題じゃないと私は思ったが、何だか面白かった。

 私が笑っていると、恵利が不思議そうに訊く。


「そう言えば、前々から訊こうと思ってた事なんですけど、安奈さんはお兄ちゃんの何処に惹かれたんですか?」

「エッ、何処って……」

「アーッ。私もそれ気になってた。何で今まで聞かなかったんだろう?」


 などと、久美子が不思議そうに首を傾げる。何故か私に集まる皆の視線。

 私の頭は混乱し考える事が出来ず、頭の中が真っ白になった。

 その後、何と言ったか覚えていないが車内に笑いが起きたのだけは覚えている。

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