高校三年 一学期―2 (鈴木 安奈)
高校三年になり、早一ヶ月が過ぎた。
相変わらず、雅之とはメールでのやり取りが続いており中々会う事が出来ない。
お互い忙しい時期だから、しょうがないとは思うけど、私は雅之に会いたくてしょうがなかった。
今日も、いつも通り学校には来ているものの、心ここにあらずと、いった感じで全く授業に集中できてなかった。
昼休みに私の事を心配して、久美子と冷夏が屋上に誘ってくれた。
気分を変えて屋上でお昼を食べようと言う事になったのだ。久美子と冷夏、共に違うクラスになったのに、二人ともいつも私の事を心配してくれる。
「どうしたの? 最近、ずっとぼんやりしてるけど、あのメル友と何かあったの?」
「メル友じゃないよ。もう、私の彼氏だよ」
「はいはい。それで、その彼氏と何かあったわけ?」
「別に何にも無いよ。いつも通りだよ」
私は何事も無い様にそう言って笑った。少々、眉を顰める久美子は、冷夏の方に顔を向けた。
二人は目を合わせると軽く首を傾げた。なぜ、首を傾げたのか私には何と無く分かった。
だから、何か言われる前に口を開いた。
「最近、マサに会ってないなから、少し寂しいんだよね」
その言葉を聞くなり、久美子が呆れた様に、
「何よ、それだけ?」
と、言った。
久美子はそう言ったが、私にとってはそれはとても辛い事だった。
初めての恋。
初めての彼氏。
初めて好きだといえる人。
全てが初めてで、不安だった。
本当に、私と雅之は上手く行くんだろうかと。
そんな時、私の携帯が激しく震えた。
「噂をすればって奴?」
「彼なら、心配ないですわ」
「そうかな?」
「大丈夫よ。直接会って話した事は――! そうだ。ねぇ、今度皆で会いに行かない?」
突然、思いついたように大声を張り上げ久美子がそう言う。
驚く私はあたふたとし、口が上手く回らない。
そんな中、冷夏が久美子の意見に賛同する。
「それ、いい考えですわ。私も一度会ってお話がしたかったんです」
「そうだよね。どんな感じの奴か私達で見極めよう!」
「ちょ、ちょっと! 勝手に話を!」
私の言葉など聞かず、久美子と冷夏は話を進める。
と、そこに先程まで居なかった人物まで加わっていた。
「おうおう。それで、いつ会うんだ?」
「今週の日曜は?」
「あ〜っ。日曜日はちょっと、駄目だ。土曜日になんねぇか?」
「土曜日でしたら、ワタクシ暇ですわ!」
「なら、土曜日で決定だな」
「駄目よ。私、土曜日は記録測定の日だから!」
「ちょ、ちょっと! 何でカズちゃんまで混ざってるの!」
いつの間にか話しに加わっている和美に、私はそう言うが久美子も冷夏も全く気にしていない様子で話をする。
しかも、和美にいたっては何故か仕切り始めていた。
もう何を言っても無駄だと、私は確信した。
その後、久美子、冷夏、和美の会議により、今週土曜に雅之に会う事に決まり、私はそれをメールで送った。
今回、安奈の目線で物語を進めましたが、どうでしたでしょう?
雅之と安奈の二人の目線での物語は皆さんもう慣れてると思いますので、次回は加藤 健介の視線で物語を進めたいと思います。
雅之や安奈とは、また違った感じの物語となると思いますので、是非目を通していただけると嬉しいです。