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安奈編 LAST MAIL 二人の想い

 雅之の家を突然訪問して三日後、私と雅之は初めて会ったあの駅の前で待ち合わせをしていた。

 今日は外で花見をしようと言う事になったのだ。

 しかし、この駅前はいつも人が賑わっていて、何処も彼処も待ち合わせをしている人ばかり。この様子だと、雅之を探すのも大変だと、思った矢先雅之の姿が私の視界に入った。

 私が声を掛けようとすると、雅之の方が先に微笑み手を振りながら言う。


「おっ、安奈。コッチコッチ」


 雅之に微笑み返した私はすぐに駆け寄り、


「ごめん。ちょっと遅くなっちゃった」


と、言った。別に遅れたわけじゃないけど、雅之がどういう反応を見せるのか見てみたかったのだ。

 雅之は笑顔で私の事を見据え、全然気にしてないといった態度で言う。


「気にしてないよ。僕の方が早く来ただけだから」

「今度からは私が、早く来るんだから」

「別に、勝負じゃないんだから……」


 気合を入れる私に、雅之が笑いながらそう答えた。

 そんな雅之と私は楽しく繁華街を見て回り、色々なお店を巡った。ちょこっと道に迷ったりもしたけれど、私達は何とか目的地の公園に辿り着いた。


「結構、遠かったね」


 私は少し雅之が心配になり、雅之の顔を見ながらそう言う。すると、雅之がニコッと微笑んだ。

 安心した私は、


「桜見られるといいね」


と、言って公園を見回した。意外と人の少ない園内に、私は少し不安になっていた。

 あと、健介の情報と言うのも、あんまり信用できないと、以前雅之が言っていたのを思い出し更に不安になる。

 本当に桜が見られるのだろうかと。

 そんな私の不安を他所に雅之は明るく言う。


「さぁ、行こうか。確か、奥の方で桜が咲いてるって」

「でも、健介君何処から、そんな情報手に入れたのかな?」


 私の当然の疑問に、軽く首を傾げ雅之が答える。


「何処からだろう? 僕も気になってたんだよね」

「まぁ、細かい事気にしてもしょうがないよね。さぁ、行こう」


 雅之に微笑みかけた私は、急かす様に走り出す。そんな私の背後で雅之の声が聞こえた。


「ちょっと! 待ってよ」


 私は立ち止まり振り返ってから、雅之に微笑み叫んだ。


「早くしないと、置いてくよ」

「だ、だから、ちょっと待ってって……」


 息切れしたような雅之の声が聞こえた私は、少し意地悪したくなり、聞こえないフリをして背を向け走り出した。

 暫くして、雅之の声がしないのにふと足を止め振り返る。すると、遠くの方に小さく写る雅之の姿があった。

 動かない雅之にちょっと、やり過ぎちゃったかもと思った私は、大声で叫ぶ。


「マ〜サ〜。どうかした〜」


 私の声に反応した雅之は、軽く私の方に手を振り言う。


「何でもないよ〜。今、行くから」


 走り出す雅之の姿を見ながら、私は微笑んだ。

 雅之は私の所まで来ると、ゼェゼェ、言いながら芝生に寝そべる。

 その雅之の隣に座った私は優しく言う。


「大丈夫? 無理するからだよ」


 無理をさせたのは私だが、この時は全くそんな事感じていなかった。

 そんな私と雅之の傍には大きな桜の木が立ち尽くし、静かに流れる風に吹かれ花びらを舞い散らしている。

 煌びやかに舞うその薄桃色の桜の花びらに、私はふと言葉を漏らす。


「綺麗だね」

「うん……」


 私の言葉に相づちを打つ雅之に、私は笑みがこぼれた。

 微かに聞こえる木々のザワメキに耳を傾ける私は、この時間が永遠に続けばいいと願っていた。

 そんな私の横で重々しく体を起こす雅之に、私は声を掛けた。


「無理しないで、休んでた方がいいよ」

「うん。もう、大丈夫だよ」


 雅之はそう言い私に笑みを浮かべる。私もそれに微笑み返し、ゆっくり桜を見上げる。

 私と雅之の間に沈黙が続く。何だか時間が止まった様な錯覚を覚える私は、不意に雅之の顔を見た。

 複雑そうな表情の雅之に、私は声を掛ける事は出来なかった。

 そんな時、雅之が急に口を開いた。


「安奈……」

「なに?」


 平然を装う私は、いつもと同じようにそう答え雅之を真っ直ぐ見据える。

 少し間が空き、雅之が言葉を続ける。


「実は……伝えたい事があるんだ……」

「伝えたい事?」


 私は少し首を傾げ、顎に右手の人差し指を当てる。

 平然を装う私だが、この言葉を聞いた瞬間、胸が激しく鼓動を打つ。

 息を呑む私に、雅之が口を開く。


「君が好きだ」


 この言葉で私はもう何も考える事は出来なかった。嬉しくて、嬉しくて涙が出そうだった。

 それを、必死で堪え返事をしようとするが、声を出そうとすると涙が零れそうだった。だから、静かに雅之の右手を握り締めた。

 その瞬間、私の目からは大粒の涙が流れ出た。もう堪える事が出来なかった。

 だが、雅之は急に私の手を振り払い言う。


「ごめん!」


 雅之は立ち上がり走り出す。そんな雅之に私は声を絞り叫んだ。


「待って!」


 ゆっくり足を止めた雅之は、静かに私の方に体を向ける。

 その雅之に私は抱き付き、ささやく。


「やっと聞けた……。私も好きだよ……」

「エッ!」


 驚き固まる雅之に、私は軽く口付けをした。その瞬間、雅之は気を失った。


「エッ! ちょ、ままマサ!」


 始めは焦ったが、落ち着きを取り戻した私は、雅之の頭を膝に乗せ桜の木の下で目を覚ますまで待った。

 その間、雅之との思い出に浸る私は、舞い降りてくる桜の花びらを何度も見送った。

 暫くして、雅之が目を覚まし、


「やっと目が覚めた?」


と、雅之の顔を覗き込みそう言った。微笑む私の顔を見て、ぼんやりとする雅之に、私は心配になり声を掛ける。


「どうしたの?」

「別に、何でも無いよ」


 雅之は微笑みながらそう言う。

 そんな雅之をからかう様に私は言う。


「そう? でも、キスで倒れるなんて、今度からキスできないね」


 少し悲しげな表情を見せると、雅之は突然焦りだし早口になる。


「そ、そんな事無いよ! さっきは、突然だったから」

「本当かな?」


 雅之をからかう私はそう言って微笑む。私がからかっているのだと、わかった雅之はムスッとした表情を見せた。

 そんな雅之を笑いながら私は言う。


「冗談だよ。そんなにムスッとしないの」

「別に〜。ムスッとしてないよ〜」


 そう言った雅之に、私はもう一度口付けをした。空を舞う桜の花びらに祝福されながら、私と雅之はお互いの想いを感じた。



 全ての始まりは、雅之からの間違いメールだったけど、本当は間違いメールなんかじゃなくて、あれが私達を結ぶ運命の赤い糸だったと、私は信じている。




                                             END

 遂に安奈編も完結してしまいました。如何だったでしょうか?

 本編と違った視線で読む事が出来、面白かったのでは無いかと僕はそう思っております。

 安奈編も長い話になりましたが、まだ番外編は続けたいと思います。これからも、よろしくお願いします。

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