安奈編 第三十一通 初詣
年も明け早朝から、雅之と初詣に着ていた。大勢の人が集まり賑わい、中々中に進む事も出来ず、私と雅之は立ち往生していた。
恵利は後から来ると言っていたが、この様子だと合流するのは難しい。健介も、朝早くに彼女との待ち合わせに行き、ここで落ち合う事になっているらしいが、多分見つけるのは一苦労だ。
それでも、雅之が一緒なので何でも楽しく感じた。
「やっぱり、人が多いね」
行列の先を見ようと、私は背伸びをしながら言った。一方、雅之は甚く落ち着いた感じで言う。
「そうだね。もっと早く家出ればよかったかな?」
「う〜ん。どうだろう。早く出ても変わらないんじゃないかな?」
背伸びを止めため息交じりにそう言うが、実際は雅之と一緒に居られる時間がもっと続いて欲しいと願っていた。
一向に進まない人混みの中、私は雅之に訊く。
「恵利ちゃん一人で大丈夫かな?」
「多分、大丈夫だよ。僕より確りしてるから」
雅之はそう言って笑った。私も釣られて笑った。
その後、雅之が去年自分に起った事を面白おかしく話してくれた。
私とのメールが始まった時の事や、初めて会った時喫茶店で食べたジャンボパフェの事とか、健介が振られた時の事と彼女の出来た時の話し、文化祭の話し、それから告白された時の話し。笑いながら話してくれていた。
私も話を聞きながら笑ったけど、雅之は一年で色々な出来事があったんだと想った。
ようやく、私達の番が回って来た。私も雅之も五円玉を投げ入れ、手を合わせた。
雅之がどんな事を願っているか分からないが、私は、
(雅之といつまでも一緒に居られますように)
と、願った。願った所でその願いが叶うわけでも無いが、いつまでも一緒に居られる様な気になった。
取り合えず、やる事はやったので私は明るく笑いながら言う。
「さぁ、今度はおみくじを引こう!」
雅之からの返事を聞かず、私は雅之の腕をひきおみくじ売り場に急いだ。おみくじ売り場に着いた時には、雅之は苦しそうに肩で息をしていた。
「ハァ…ハァ……」
「大丈夫?」
俯いたまま息をする雅之に私は心配になり声を掛けた。もしかすると、昨日痛めた腰がまた痛むんじゃないかと。
でも、雅之は微笑み、
「大丈夫……」
と、答える。あんまり大丈夫そうに見えない雅之に私は言う。
「そう? 大丈夫そうには見えないけど?」
その言葉に、雅之は更に笑みを浮かべた。本当は無理をしているのだと、分かっていたが私は言う。
「マサが、大丈夫って言うならいいんだけど……。無理はしないでよ」
「うん。わかってるよ」
雅之はそう言い、おみくじを引いた。私もおみくじを引き結果を見た。
中吉と言う、中途半端な感じになったが一応雅之に報告した。
「どうだった? 私は中吉だったよ。大吉じゃないのは、ちょっと残念だけど、凶じゃないだけましだよね」
「そうだね。僕は吉だったよ」
雅之は私におみくじを見せた。マジマジとおみくじを見た私は、
「失物、家の内にありだって。失くした物があるなら、家の中を探し回るといいね」
と、言って雅之の顔を見た。その瞬間、雅之と視線がぶつかるが、雅之がすぐに視線を逸らした。
私はすぐにおみくじを見て言う。
「あ〜っ。恋愛は時を待つべしだって、どういう事かな?」
「さぁ? 取り合えず、焦るなってことじゃないかな?」
「そうなのかな?」
私がおみくじを返すと雅之はそれを財布にしまった。
その後、何とか恵利達と合流した。
ついでに、私の恋愛は『根気強く待つべし』だった。