安奈編 第一通 間違いメール
ここからは、『鈴木 安奈』の視線から進む『間違いメール』のストーリーです。本編で見れなかった安奈の友達や安奈の表情が見られるかも知れません。
それでは、楽しんで読んでみて下さい。
私が目を覚ますと、携帯に一通のメールが届いていた。知らないアドレスからのメールだったけど、そのタイトルが『登録したよ』だったので、一応内容を読んでみる事に。
『あの、一応アドレス登録したけど、この後どうしたらいいのかな? 健介の方に届いてるか不安なんだけど』
健介と言う名前を見て、これが間違いメールである事を確信した。少し迷ったが、私はメールが間違って届いている事を、相手に伝えようとメールを打った。
『あの〜。メールが間違って届いてます。もう一度アドレスを確かめて見てください』
その後、少し間があってからその間違いメールから返事が届いた。
『すみません。最近、携帯を持ち始めたもので、間違ってアドレス入れたみたいなんで、以後気をつけたいと思います。本当にすみませんでした』
この内容を軽く読み流し、私は学校へ行く準備をした。
私は鈴木 安奈。今年、高校二年になったばかり。
一時期は、陸上部に入っていたけど先輩とイザコザがあり、今はサッカー部のマネージャーをしている。成績は自分で言うのも何だけど、結構良い方。運動もまぁまぁ出来る方だと思う。
学校へ行く準備が済み部屋を出ると、友達の久美子が笑顔で私の事を出迎えてくれた。
フルネームは川島 久美子。私は『久美ちゃん』って、呼んでいる。
知り合ったのは一年の頃で、同じ陸上部に所属してた。結局、私はやめちゃったけど久美子はまだ続けている。おさげが似合う可愛らしい娘で、私の一番の友達。成績は少し悪いけど、運動に関しては右に出るものは居ないと噂されているらしい。
「おはよう。久美ちゃん」
笑顔で久美子に挨拶をすると、久美子も笑顔で挨拶を返してくる。
「おはよ〜う。そう言えば、昨日はごめんね」
「昨日? 何の事」
申し訳無さそうに両手を合わせる久美子に、私は首を傾げながら聞き返す。すると、久美子が小さな声で言う。
「ほら……。メール……」
「メール? あっ、そう言えば、途中で返ってこなかった」
「ごめん。実は途中で寝ちゃって」
申し訳ないと手を合わせ頭を深々と下げる久美子の姿に、私は笑顔で言う。
「謝らなくていいよ。久美ちゃんは部活で疲れてたんだから」
「でも……」
まだ申し訳無さそうな表情をしている久美子。私は何とか話題を変えようと、今朝の出来事を話す事に。
「そう言えば、久美ちゃん聞いてよ。今朝、間違いメールが届いてて、びっくりしたよ〜」
「間違いメール? 世の中には居るんだね、間違えてメール送る人」
先程まで申し訳無さそうな表情をしていた久美子は、瞼を閉じ腕を組みながら首を縦に振っていた。いつもの久美子らしくなってきて、私は嬉しくて自然と笑みがこぼれる。
「それで、その後どうなったの?」
「どうなったって、それっきりだよ」
私の言葉に不満そうな表情を見せる久美子。何が不満なのかわからないけど、私はこの場を切り抜け様と携帯の時計を見て言う。
「アッ、早くしなきゃ遅刻しちゃう」
そう言って私が駆け出すと、久美子の声が背後で聞こえる。
「アーッ! コラーッ! 逃げるな〜っ」
2階の一番端の教室が私のクラス。もちろん、久美子も同じクラスで、席も前後と並んでいる。
私と久美子が教室に入った時には、すでに半数の生徒が登校してきていた。勉強をしている者も居れば、お喋りをしている者もいる。
そんな中、私と久美子は自分の席に着き、先程の間違いメールの話になる。
「それで、その間違いメールの主は男? それとも女?」
私は曖昧な記憶を辿り、その質問の答えを探す。そして、導き出された答えを久美子に述べた。
「多分、男かな」
「男か。カッコイイかな? もう一回メールして、写メ送ってもらおうよ」
一人で盛り上がる久美子に対し、私はと言うと――あんまり乗り気じゃなかった。知らない人とメールをすると言うのに、結構抵抗があったからだと思う。そんな私の気持ちなど察する事無く、久美子は話を進める。
「それじゃあ。早速、メールを送るわよ!」
「送るって、私の携帯は……!?」
鞄に入れた携帯を取り出そうとした私は、鞄の中に携帯が入っていないのに気づいた。そして、ふと久美子の方を見た時、私の携帯を発見した。何かを目論む様な笑みを浮べる久美子の手の中にある私の携帯。私はハッとし、素早く携帯を奪い返すが時すでに遅し――。
携帯の画面に映る送信完了の文字に私はガックリと肩を落とした。そして、久美子にゆっくりと言葉を放つ。
「ちょっと久美ちゃん! どうするのよ! これで、変な人だった私……」
「大丈夫だよ。文章からして結構、真面目な男よ」
「顔も分からないのに、真面目かなんて分からないわよ……」
不貞腐れた様に私は頬を膨らまし、久美子の顔をジッと見つめた。それでも、笑みを浮べる久美子は、「大丈夫、大丈夫」と連呼しながら自分の打ったメールを私に見せ付ける。
『これも、何かの縁ですし、よかったらメル友になりませんか?』
久美子の送ったこのメールが全ての始まりだったのかも知れない。
安奈編『第一通 間違いメール』は、どうだったでしょう。結構、全力を尽くしているのですが、イマイチ読者に楽しんで貰えているのか、わかっておりません。
安奈編はまだ続きますが、他にもリクエストがあればお聞かせください。あと、アドバイスや指摘なども待っております。
それでは、長々と失礼しました。