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安奈編 第二十七通 祝福の白い粉

 大分、辺りも静まり返りちらほらとライトが辺りを照らし始めていた。

 日も沈み少し寒さを感じるが、雅之と居られるこの時間が止まってしまえば良いのにと、願い続けていた。

 あれから、静かに寝息を立て続ける雅之の子供の様な寝顔に、何だか心が和んだ。

 それから暫くして、雅之が目を覚まし驚きながら体を起こした。

 始めは私と目も合わせ様とせず、申し訳なさそうな表情を見せていた。だから、私から雅之にゆっくりと口を開いた。


「もう、大丈夫? いきなり倒れちゃうから驚いたよ」

「ご……ごめん」


 申し訳なさそうな小さな声でそう言い、頭を深々と下げる雅之。

 でも、あれは私が計画的にやった事なので、雅之に謝られる理由なんて全く無かった。


「もういいよ。私、気にしてないから」


と、言って優しく微笑んだ。その言葉に雅之はゆっくりと頭を上げ、私と一瞬目が合ったが雅之は急に辺りをキョロキョロと見回し始めた。

 何かを探しているみたいだが、私には全く検討も付かなかったが、ふと雅之の持っていた紙袋の事を思い出した。

 私も雅之へのクリスマスプレゼントを紙袋に入れて持ってきており、雅之も大事そうに紙袋を持ち歩いていたのだ。

 その紙袋を手に取った私は雅之に確認する。


「もしかして、これ探してる?」

「あっ!」


 驚いたような声を出した雅之に、私は紙袋を渡した。

 紙袋を受け取った雅之は、暫しオドオドとして紙袋の中身を確認し、何やらホッとした表情を見せる。

 そんな雅之に、私はクリスマスプレゼントの入った紙袋を差し出した。


「これ、クリスマスプレゼント。何にしようか迷ったけど、結局マフラーにしちゃった」


 雅之が喜んでくれるか、不安だったが私はそれを表に出さず微笑み続けた。

 ゆっくりと紙袋を開く雅之は、中からマフラーを取り出し嬉しそうに微笑み首に巻き、


「ありがとう。嬉しいよ」


と、言った。その言葉を聞いただけで、私も嬉しかったし、喜んでもらえたと、安心した。

 ホッとする私に、今度は雅之が紙袋を差し出した。

 私はその紙袋を見てから、雅之の顔を見つめた。少し緊張の見える雅之は恥かしそうに言う。


「これ、僕からのクリスマスプレゼント」


 雅之の手から紙袋を受け取った私は、静かに紙袋の中を確認した。

 中には長方形の箱の様な物が綺麗に包まれており、それが何なのか全く予想がつかなかった。

 私は器用に箱の包みを剥がした。そして、中から出てきたのは真っ白な箱だった。その箱を開けると、綺麗な木箱が姿を現した。

 私はすぐにオルゴールだと気付き声を上げた。


「すご〜い。手作りのオルゴールだ」


 オルゴールをまじまじと見る私は、雅之に聞く。


「マサが作ったの?」

「うん。和彦の知り合いの所で」

「そっか。嬉しい。世界で一つだけのオルゴールだね」


 そう言って微笑み、ゆっくりとオルゴールの蓋を開けた。

 小さな音で静かにジングルベルのメロディーを奏でるオルゴールは、時折音を外すが全く気にならない。

 私も雅之もオルゴールの音に耳を傾け、時が静かに過ぎて行く。

 暫くして、オルゴールの音に誘われたかの様に、白い粉の様な物が一つ、また一つと舞い降りてきた。冷たく柔らかなその粉は、真っ黒な夜空を鮮やかに煌かせる。


「……雪」


 私はふとそう呟き空を見上げた。そんな私に雅之も軽く相づちを打つ。


「そうだね」


 静かに流れるオルゴールの音を聞きながら空を見上げた私と雅之。

 その雪は私と雅之の事を祝福している様に感じ、自然と笑みがこぼれた。


「綺麗な雪だね」

「そうだね。夜空を舞う桜の花びらの様だね」


 その言葉を聞いた瞬間、私は笑いを堪える事が出来ずクスクス笑いながら、


「う〜ん。それは、ちょっとクサイかな?」


と、言った。雅之は一瞬で顔を真っ赤にし、恥かしそうに顔を背けた。

 そんな雅之を見てると更に面白かった。


「顔が真っ赤だよ。恥かしいなら、言わなきゃよかったのにね」

「本当だよ。ちょっと、いい言葉だと思ったのに……」


 肩を落としうな垂れる雅之に、私はスッとベンチから立ち上がり言う。


「でも、私は好きだよ。さっきの言葉」

「エッ!」

「だって、なかなか言えないよ。あんなクサイ言葉」


 雅之をからかう様に、私はそう言いオルゴールの蓋を静かに閉め、もう一度クスクスと笑った。

 雅之は顔を真っ赤にしながら、


「何だよ。もうその話はいいよ」


と、言った。まるで子供の様な雅之が、私は更に好きになった。だから、もっとからかってみたかった。


「え〜っ。でも、面白いじゃない」

「僕は全然面白くないよ……」


 本気で落ち込む雅之を元気付けてあげようと、私は雅之の頭を軽く撫でながら言った。


「よしよし。そんなに落ち込まないの」

「よしよしじゃないよ。それに、落ち込ませてるの安奈じゃないか」

「ごめんごめん。もう言わないから」


 私は両手を合わせそう言って、雅之を見つめた。

 雅之は別に怒っている様子も無く、とても楽しそうな表情をしていた。

 そんな雅之に私は優しく言う。


「それじゃあ。そろそろ、帰ろうか」


 結局、遊園地を楽しむ事は出来なかったけど、こうして雅之と長い間一緒に居られた事が嬉しかった。

 私はそう思いながらゆっくりと足を進めた。

 その時、雅之の声が背後で響く。


「安奈!」


 ドキッとした私は、ゆっくりと振り返った。胸が鼓動を立て緊張が走る。

 もしかすると、告白されるんじゃないだろうか。そんな思いに私は微笑み返事を返す。


「何? どうかしたの?」


 私の言葉の後、沈黙が続いた。時間が止まった様な静けさに私は胸の鼓動だけが聞えていた。

 そして、雅之がゆっくりと口を開いた。

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