安奈編 第二十五通 手編みのマフラー
私は、雅之へのクリスマスプレゼントのマフラーを編んでいた。
何をプレゼントするか迷った末の決断だった。手作りの方が気持ちが伝わるはずだと、私は考え手編みのマフラーにしたが、意外と難しかった。
学校でも、寮でもずっと編み続けるが中々上手くいかない。私って不器用なんだと、この時初めて気付いた。
もうすぐ、クリスマスだと言うのに、未だに半分も編めてない私は、最終的な決断を下した。
「エッと、久美ちゃん。私、今日から少し学校休むね」
毎朝、迎えに来てくれる久美子に、私は明るく笑いながらそう言った。
クリスマスまであと四日。この四日間は寮でずっとマフラーを編む事にしたのだ。でなきゃ間に合わないと、はっきりわかっていた。
そんな私に怪訝そうな表情を見せる久美子は、
「サボりですか?」
と、言って首を傾げた。私は久美子を見ながら言う。
「サボりだけど、こうでもしないと、間に合わないの」
「だからって、サボるか普通」
「いいから! 取り合えず、今日からクリスマスまで学校休むから、後の事は任せるね」
「わかりました〜。風邪引いたって嘘ついておくよ」
「お願いね」
私は久美子に手を振った。久美子も軽く手を振った。すぐに、部屋に戻った私は、網掛けのマフラーを編み始めた。
静かな部屋の中に響く時計の音を聞きながら、着々とマフラーを編み上げる私。
それから、三日が過ぎ、ようやく私はマフラーを完成させた。クリスマス直前で何とか完成する事ができ、安心した私はベッドで眠りに就いていた。目を覚ました時には夕暮れ時で、外は暗くなり始めていた。寝ぼける私の視界に、一人の女が居る様だがイマイチ誰なのかわからない。一度目を擦り、私は目の前の人物に驚いた。
「ちょ、ちょっと! 久美ちゃん! 何で人の部屋に勝手に上がりこんでるの!」
「鍵開いてたよ」
のん気な久美子に、私は反射的に、
「エッ、そうなの?」
と、答えてしまった。そんな私に、呆れた様に久美子は言う。
「全く、無用心だよ」
「今度から気をつけるよ……じゃなーい! 何で、久美ちゃんが部屋に居るのよ!」
「だから、鍵が開いていたっていってるじゃない!」
その後、暫し口論が続いた。久美子が言うには、様子を見にきたら鍵が開いていて、無用心だと部屋に入ると私が寝ていたと、言う事らしいが、普通は入らないでしょ……。
ようやく、落ち着きを見せた私と久美子は、話を始める。
「それで、マフラーは編みあがったの?」
「少し変だけど、一応完成はしたよ」
「間に合っちゃったのか。残念だ」
「まさか、間に合わなきゃ良かったって思ってるわけ?」
軽く久美子を睨んだ私は、お茶を啜った。あどけなく微笑む久美子は「まぁまぁ」と、言いながらマフラーを手にとって見ていた。
「安奈って、意外と不器用だね」
「うん。そうなんだ。私もマフラー編んで初めて不器用だって気付いたんだ。結構ショックだな……」
「ショックって、別に気にする事でも無いでしょ?」
久美子に首を振りながら私は答える。
「また、マサにマフラー編もうと思ってたけど、もう二度と編めそうに無いのがショックで……」
「そうですか。それは、残念ですな」
少々呆れ気味で久美子がそう言った。