安奈編 第二十四通 もうすぐクリスマス
沖縄からようやく帰ってきた私は、ベッドにうつ伏せに倒れこみ枕に顔をうずくめる。
暫くして、私は取り合えずシャワーを浴びて、後片付けを始めた。そして、机の上においた携帯に目が付いた。修学旅行中、雅之にメールが出来なかった私は、すっと手を伸ばし携帯を右手に持つと、ゆっくりと雅之にメールを打った。
『久し振り。元気だったかな? 実は、修学旅行に行ってました。しかも、携帯を寮に忘れたまま。ごめんね。もしかして、私からのメール楽しみにしてたかな?』
メールを送信し、カレンダーを見た。十二月のカレンダーは、クリスマスツリーとプレゼントの絵が描いてあって、もうすぐクリスマスなんだと感じさせる。
今年は、雅之と一緒に過したい。心の内にそんな思いを秘め、私は雅之がクリスマスの予定を聞いてこないか楽しみにしていた。
『いいな〜。修学旅行……。僕の学校は修学旅行無いからな』
「そっか……。マサの所は修学旅行無いんだ……」
メールに目を通し、おもむろにそう呟いた私は、ベッドに腰を下ろしメールを打つ。
『そうなんだ〜。マサの高校、修学旅行無いのか〜。残念だね』
その後も、雅之とメールをしながら私は部屋の片付けをしていた。すると、部屋をノックする音が聞え、手を休めてドアを開ける。
そこには、明るい顔の久美子の姿があった。向かい合う私と久美子は、顔を見合わせたまま沈黙が漂う。私は、その沈黙を破り、
「どうしたの? こんな時間に」
と、声を掛けた。すると、何の躊躇も無く私の部屋に上がりこむ久美子は笑いながら言う。
「まぁ、お構いなく」
「お、お構いなくじゃ無くて! 何しに来たのよ!」
「まぁまぁ、お構いなく」
「だ〜か〜ら〜」
お気楽な態度で私の部屋に入り込む久美子は、ベッドの上に腰を下ろし机の上の私の携帯を手に取る。
雅之とのメールの内容を見られたくないと、思った私は焦り久美子から携帯を奪い返した。
「ちょっと、何するのよ安奈〜」
「何するのよは、私の台詞でしょ! ビックリした」
「その驚きようですと、また例のメル友とメール中でしたな」
図星をつかれ私は仰け反り、久美子の顔を見る。妙な笑顔を見せる久美子は、立ち上がり私に歩み寄り肩を叩きながら言う。
「それで、彼とは今どうなってるわけ?」
「どうって……。別にどうもしてないよ」
「それじゃあ、クリスマスはどうするのよ。もうすぐでしょ?」
「それは……」
口ごもり俯く私にため息を吐く。何だか、馬鹿にされた気がしたが、何も言い返せなかった。
黙り込む私に久美子が笑顔で、
「そんな安奈に、力を貸すわよ」
と、言った。何の事だか分からない私は、首を傾げ怪訝そうな表情で久美子を見る。
その時、私の携帯が鳴る。雅之からのメールの着信音に気付いた私は、すぐさまメールを見る。
『うん。オヤスミ。また、明日』
そのメールの内容を盗み見た久美子は、「はは〜ん」と小さく言って頷くと不適に笑う。嫌な予感が頭を過ぎる私は、苦笑しながら久美子を見つめる。そんな私から携帯を素早く奪った久美子は、私から距離をとり素早くメールを打ち込む。いきなりの事で私は呆気にとられ状況を把握できずに居た。
気付いた時には、久美子が「送信」と、笑顔で叫んでいた。
「ちょ! 何してるのよ!」
「何してるのって、クリスマスの予定を聞いたのよ」
「エッ! ちょ、何勝手な事!」
頭が混乱し騒いでいると、久美子の手の中で私の携帯が鳴る。もちろん、雅之からの着信音。
明るく笑う久美子は携帯を差し出し、
「ほら、返事が返ってきたよ」
と、言った。すぐに携帯を取りメールを読む。
『大丈夫。クリスマスは空いてるよ』
「エッ、クリスマスは空いてるんだ。それじゃあ、プレゼント考えなきゃ」
メールを見た私は、雅之がクリスマスに予定が無いと言う事に浮かれ、混乱していた頭がいつしか嬉しさで一杯に変わっていた。
そんな私を呆れたといった感じの表情で、
「さっきと態度が違うぞ」
と、久美子が言った。私は完全に久美子の事など忘れすぐにメールを送った。