番外編パート1 告白の返事は?
数枚の桜の花びらを、手の平に握り僕『倉田 雅之』はゆっくりと、重い口を開く。
「安奈……」
「なに?」
僕の声に安奈は優しく答える。
「実は……伝えたい事があるんだ……」
「伝えたい事?」
安奈は軽く首を傾げ、顎に右手の人差し指をあてる。
僕の頭の中で整理されていた、安奈への言葉はいつの間にか真っ白になって消えていた。だから、シンプルにこう言うしかなかった。
「君が好きだ」
暫く安奈からの返事は無く、僕は怖くて安奈の顔から目を背けていた。そんな僕の右手を安奈が握り締める。突然の事に僕はパニックに陥り、更に頭の中が真っ白になる。
だが、僕はその目ではっきりと見た。安奈の目から零れ落ちる透明な雫を――。
その涙が意味する事が何なのか分からなかったが、胸が痛んだ。
「ごめん!」
僕はそう一言安奈に言い、手を振り解きその場を離れようと立ち上がる。そして、走り出すと同時に安奈の声が聞こえる。
「待って!」
その言葉に僕の足は止まる。フラれる、そう確信し僕はゆっくり振り返った。その瞬間、安奈が僕に抱き付き涙を流しながら言う。
「やっと聞けた……。私も好きだよ……」
「エッ!?」
フラれると確信していた僕は、その言葉に何て答えていいのか分からずにいた。反応を示さない僕に、安奈は軽く口付けをする。突然の事に驚き慌てる僕は、混乱し目を回し気を失ってしまった。
その後、僕が目を覚ましたのは安奈の膝の上で、沢山の桜の花びらに囲まれていた。
「やっと目が覚めた?」
僕の顔を覗きこみ、安奈が優しく微笑む。僕は安奈の微笑む顔を見て実感した。僕達は両思いなんだと。ぼんやりする僕に、心配そうな声で安奈が言う。
「どうしたの?」
「別に、何でも無いよ」
「そう? でも、キスで倒れるなんて、今度からキス出来ないね」
悲しげな瞳をする安奈に、僕は焦りながら答える。
「そ、そんな事無いよ! さっきは、突然だったから」
「本当かな?」
僕の事をおちょくるかの様に安奈は微笑む。僕がムスッとした表情を見せると、安奈は笑いながら言う。
「冗談だよ。そんなにムスッとしないの」
「別に〜。ムスッとしてないよ〜」
そう言った僕に、安奈がもう一度口付けをしてくれた。今度ははっきりと覚えている。安奈とのキスの事をしっかりと――。
『番外編パート1 告白の返事は?』は、如何だったでしょう?
本編では語られなかった告白直後のお話でしたが……。わかってもらえたでしょうか?
まだまだ、番外編は続きますが長々とよろしくお願いします。