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眞匏祗’  作者: ノノギ
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第九十八話 違反の限度を知れ

 後を追っていたクラスメイトを撒いて落ち着いたときに儒楠が薪に尋ねる。


「で?何だって?あれ、マジで怖かったぞ」

「はは。悪いな。さて。この格好だとまずいな」


薪はふっと風を全身に取り巻く。穂琥はてっきり替装するのかと思ったらそうでもなく、服装は普段の学生服だし変わったのは全体的な顔の印象と髪型。そのまま薪は表門へと向かう。


「あ!君たち!おっと・・・。さっきの子達か・・・」


表で待ち構えていたマスコミの男。穂琥と儒楠を見て興味がうせたようにしたが、薪を見てはじめてみると興味を示した。


「この学校に超能力者がいるって噂を聞いたんだけど知らないかい?」


楽しそうにそして嬉しそうに尋ねてくる男。


「はん。いるわけないだろう。あほか?」


薪の切り返しに男のみならず穂琥も儒楠も籐下も驚く。


「おいおい、このご時勢にそんな物信じているのかよ?幾らテレビといえどそんな事にそこまで全力で投資する価値があるのかねぇ?」


今までの相手してきたしどろもどろしていた学生たちとは全く違う薪という存在に戸惑う様子を見せる男は口をぽかんと開けて固まっていた。


「さて。じゃぁまぁ。それが仕事だから仕方ないといわれたらオレも何もいえないし。そこで聞きたいんだけどこのことは誰か知っているのかい?」

「ん?いや、調査するまでは下手に言えないからね」

「そうか、良かった」


薪はにこやかに笑う。男はそれに疑問そうな顔でゆがめる。


「はは。そんなに固くならなくていいよ。あ、大人に対して言う言葉ではなかったな・・・。すみません。教えますよ、超能力者。それは眞匏祗と呼びます」

「ほぉい!?」


突然暴露した薪に穂琥が反応して思わず薪の頭をはたく。


「痛いな・・・。何すんだよ」

「いやぁ!それコッチの台詞!!」

「まぁ、いいから見ていろ」


穂琥の怒号を叫びながら薪に攻撃をしているがそれを無視して薪は手を前に出してそこに光の弾を生成する。それを見た男は驚いてそして歓喜した顔をした。それと同時に儒楠がテンションを下げた。


「あぁ、そうですか・・・」


そんな事を言っている声を聞いて穂琥もテンションを下げて儒楠に向かった。


 薪の手に生成された光の弾は高らかと天に向かい橙の光を巻き上げる。その美しい橙の光が男のほうへと落ちてくる。そしてそれが直撃する。その光で男は空へと放り投げられる。そして地面に叩きつけられる。見るからに痛そうなその姿に穂琥は眼を細めた。しかし男はすくっと立ち上がり辺りを不思議そうな顔で見回している。


「あれ・・・?ここは?何でわたしはここにいるんだ・・・?」

「さぁ?知りませんよ」

「それもそうだな。おっと!もうこんな時間!?早く局へ戻らないと!」


男は焦ったようにその場を立ち去っていった。今の段階ではこの状況を理解できていないのは籐下だけのようだった。


「あの・・・?」

「今のは忘却の業だよ」


儒楠がそういうと少し納得したような顔で籐下が頷く。薪を見ると少し落ち込んでいるように見えた。それをみて儒楠は高らかと笑った。薪はそれに苦笑いをした。


「眞匏祗って言うのは人間を傷つけてはいけないんだよ。オレが作った法律、はは」


最後乾いた笑いを出す薪に籐下も苦笑いをする。


「うわぁ、罪悪感。これきえねぇよな~」

「当たり前だろう」

「はは・・・。まぁいい。落ち込んでいる場合じゃないな。次いくぞ」


薪がそういって姿を元に戻す。首をかしげている三人を放っておいて薪は方向を定めている。


「勿河をはめた奴を見つける。とはいっても簡単には見つけられないな~。こら、また違反を犯すしかないかな~・・・」

「はは、悪になったなぁ?」

「まぁなぁ?父の血かな?」

「ははは、皮肉たっぷりだな!」

「ふん」


薪はにやりと笑ってそういった。その会話を聞いた籐下は首をかしげるしかなかった。


 薪がその場ですっと立つ。その静かな気配に穂琥は息を呑んだ。そう、静か過ぎるのだ。怖いくらいに。まるで嵐の前の静けさ、そういった恐怖心を抱くような静かでそれでいて苛烈な気配を薪が漂わせる。そして。薪を中心に音波のような波が広がった。余りのその衝撃に籐下は尻餅をついた。穂琥は膝を折って地面に手を着いた。儒楠だけがその場に立っていた。


 身体にのしかかる重力。それが消えてやっと立つことが出来るようになった籐下が軽い息を切らしながら立ち上がる。


「大丈夫か?近かったからきつかっただろう・・・?」

「あ、あぁ・・・平気・・・」


籐下は薪の差し出した手を受け取ってやっと立ち上がった。


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