第九十六話 始動する手筈を整えろ
薪も予想していなかった出来事があった。そしてそれを知った薪は頭を抱えた。
転入生、全員の名と顔を知った。それが衝撃の理由。五木紫火、双葉月小刃(ふたばづきしょうは、天童笠來、飯島栗依、空染派棟計五人の転入生。いや、五祇、といっておこうか。そう、転入生全てが眞匏祗。流石の薪もこれには警戒するとかいう問題ではない事態を察した。
「何が目的で・・・?」
「ふふ。まぁ、命令、かしら?」
飯島栗依が答える。それに続いて紫火が小さく答えた。
「愨夸の・・・ね」
「何を言っているの!?」
その言葉に穂琥が反応を示した。愨夸が命令!?そんなはずはない。
「愨夸は・・」
「穂琥」
「・・・っ。・・・」
薪に制されて萎縮する穂琥。気持ちがわからないでもないが、向こうが一体何を目的にそうしているのかわからない以上、余計な手出しはしないほうが良い。
「ふむ、それで。どうするつもりですか?」
儒楠が薪に尋ねる。その普段使わない敬語に薪は少し不機嫌そうに儒楠を睨んだ。
「まぁ、まぁ、そう怒らずに。どうなさるおつもりですか?」
「ったく・・・」
「お前、なぜそいつに敬語を?何か特別なことでもあるのか?」
「いんやぁ?自分が認めた相手だ、別にいいだろう?」
意味ありげに笑う儒楠に尋ねた笠来が不機嫌そうに顔をしかめて睨んだ。
「はーい!皆さん、注目~!」
一瞬、儒楠が言ったかと思ったがどう考えてもこれは薪が発した言葉だったので正直全員驚いた。いや、転入生側のほうはさして変わる様子はなかったが。
「本日これより数日間、オレは学校を休みます!以上!」
そう言い放つと薪は颯爽と教室を出て行った。取り残されたみんなはただ固まって唯一耐性を持っている籐下と儒楠が顔を見合わせた。
「アイツって本当に時々予測をはるか彼方にこえていくよな・・・」
「そうだな・・・それにいつも振り回されているわ・・・」
「ご苦労様です・・・」
苦笑いする籐下と儒楠だった。