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眞匏祗’  作者: ノノギ
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第九話 自覚の無い眞匏祗との出会い

 先程であった二人の子ども。摩訶不思議でいまだに信じられないその存在にどこか頼ろうと思ってしまうのは何の心理か。兎に角。そんな二人についていけばきっと何か道が開けるかもしれないと思ってここまでついてきたが、一体この二人の口論はいつまで続くのだろう。幸奈はただ、そこにたって二人を見ているだけだった。


「だぁかぁらぁ!」

「仕方ないだろう!仮にも女だろう!」

「仮って何よ!仮って!立派な女です!」

「仮だろう!お前の何処が女だ!」

「立派な女性じゃない!!」


最初の論議から大分外れた話になっている。感情論で言い争いをしているのが原因だろうと、幸奈はそれを見ている。


 そもそもこんな口論になったのも今から30分前の事。口論の優勢に立っている男の子とそれに必死に喰らいつく女の子。男の子が薪、女の子が穂琥。そして幸奈の三人は寝床について話を始めたはずだったが気づいたら口論になっていた。穂琥と幸奈はホテルを借りてそこに行けと薪が言う。しかし、穂琥の言い分は薪の家に行くという。


「寝るところだってねぇだろう!」

「あるもん!二個!」

「二個じゃ足りないだろう!?」

「足りるもん!私達は布団!薪は屋根!」

「オレは外か!」


この二人は口論をしているのか漫才をしているのかわからなくなってきた幸奈だった。そしてそんな二人を見て少しおかしくなってしまった。


「ぷふ・・・」


うっかり声に出てしまってそれが理由で二人の口論という名の漫才はを終焉を迎えた。


「あ・・・ゴホン・・・。済ません。コイツと一緒にホテルに泊まってください。ホテル代などは気になさらないで結構ですので」


薪はそう言って穂琥を差し出す。そんな彼の態度に幸奈は疑問を覚えていた。幸奈が年上ならば敬語を使うことになんら疑問を感じることは無いのだが、この少年は先ほどまではそう言った態度は一切無く、突然こんな態度を示した。そんな不思議な少年に混乱を抱いたままだ。


「では、オレは情報を集めに行きますので、失礼します」


薪はそう言って姿を消す。幸奈は呆然と彼の背中を目で追ってから足元で不貞腐れている少女に手を差し伸べる。


「あ、どうも。ありがとうございます、幸奈さん!」


かわいらしい笑顔で幸奈の手を取る。この少女は会ったときから態度が変わっていない。なら、特別なのはあの少年か。


「仲、いいですね」

「え?そう見えます?あんなので?」

「えぇ。とても。素敵なご兄妹だと思うわ」


穂琥は一瞬、驚いた。薪と穂琥の関係で兄妹だと言ってきたのは幸奈が初めてだ。そのことを幸奈に伝えるとやわらかい笑みを見せた。


「大人が見れば恋人には見えないわ。とても仲良しには見えるけどね。貴女がとても彼の事を慕っているということも」

「え・・・そ、そんな事までわかっちゃうんですかぁ~?照れちゃうなぁ・・・」


穂琥は頭をかく。大切な兄。大好きな兄。だからずっと一緒に居られる。不安なんて何も無くて。


 穂琥と幸奈は薪に言われたとおりホテルに入る。部屋に入ってゆっくりとくつろぐ。そうしてゆったりとしていまだに信じられない中に身を投じているのだと考えると実感がわかない幸奈だった。そもそも、一緒に来るようにと薪に言われたからここにいるが、一体何故一緒に行くべきだったのか、説明を受けていない幸奈は少し不安ではあったけれど、この穂琥という少女然り、何故か幸奈も薪という少年を信じてしまう、信じさせる力を持っているように思えた。とにかく。今は何もわからない。きっと彼はそれを説明してくれるはず。それを信じて幸奈は休むことに決めるのだった。


 翌朝、いつ帰ってきたかわからない薪に起こされて不機嫌に答える穂琥。

「なぁにぃ?」

「幸奈さんは?」

「奥」

「そうか」


穂琥の指差した扉を見て薪は肩を落とした。


 支度が出来たらしい幸奈が部屋から出てきた。そしてそんな幸奈に薪は少し考えてから尋ねる。


「ねぇ、幸奈さんさぁ。ま、あの時は記憶を消すつもりだったし、そのまんまでいったけど。敬語ってオレ、嫌いなんですねぇ~。でもやっぱ人間だし、目上には敬語かな?って思ったけど。やっぱり嫌いなもんは嫌いだ。だから、いいですかね?普通に」


本当に年上というものをかなぐり捨てたその発言に幸奈もだが穂琥も驚く。ここまでぶっちゃけて言い切ることの出来る薪が凄いとすら思う。


「構いませんよ・・・」


幸奈としてはきっと理解できたこと。薪の態度の変調に。


「それで、幸奈さんさ」

「幸奈、で結構です」

「そう。じゃぁ幸奈さ」


幸奈に言われたとはいえ、簡単に敬称を剥奪させたよ、コイツ・・・と思う穂琥だった。


「はっきり言ってあんたは危険な状態にあるんだよ」


瞑、邑頴が一体何を思って幸奈に魂石を与えたのかわからない。主と称してそれに付き従っているあのもの達がそのことで動き出さなければいいのだが。ともかく色々と危険が生じるということ。


「だから日常生活ではオレが絶対に護る。それは約束する」


強く放たれたその言葉にどれだけの深い意味が篭められているのかは、会ったばかりの幸奈にはきっとわからないだろう。それでもいいのだ。ただ、今のこの薪の言葉さえ、信じてくれるのなら。


 幸奈にはとりあえず宝探し、という題目でここへきたということにした。まぁ、あながち間違いではない。痲臨は眞匏祗たちにとって宝玉に等しいのだから。


 そうして薪と穂琥は移動をすると幸奈に伝う。幸奈は不安そうな顔をしながらも連れて行って欲しいと願い出る。薪はそれをまるで言ってくると予想していたかのように即断で許可を出す。薪が術を行使する。妙な浮遊感に襲われるのだった。


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