第八十九話 被った衣を剥ぎ取れ
それなりの時間が経過した。しかし中々薪が出てこない。険しい顔をする眞匏祗組。籐下は不安な表情をしながら二人の様子を伺う。(薪の話では眞匏祗は『祗』で数えると教わったが別にどっちでもいいんじゃね?とか言っていた気がする)
「ただの・・・病じゃないのか・・・?」
「ん~、アレは多分病じゃないよ」
質問した籐下に儒楠が答えた。そうこうしている間に扉が開く。そして妙に意気消沈しているクラスメイトを見て首をかしげた。
「悪いね。オレが脅した」
「なにやってんだか」
呆れたような顔をする薪。それから霧醒のほうへ歩み寄る。そしてにやりと笑って言う。
「オレを計りたかったのか?まぁ、どうでもいいけど。妹さんは治しておいたよ。数時間くらいで眼が覚めるよ。あぁ、話があるなら後で聞くから後ほどね」
それだけ言うと薪は帰ることを決めたらしくさっさと玄関へ向かっていった。それから思い出したように振り返り、クラスメイトに声をかけた。
「あ~、儒楠の奴がキレたらしいけど本来はそういうキャラじゃないから理解しとけ~」
「え、あっおい!」
唐突にそんな事を言いながら立ち去っていく薪をどこか恥ずかしそうに追いかける儒楠の姿は少しだけ滑稽に見えた気がした籐下だった。そしてはっと置いていかれたことに気づいた穂琥が慌てて駆けて行く様は本当に面白くてこれが眞匏祗という恐れなければならない種族だということがぴんと来ないじゃないかと小さく笑うのだった。