第八十四話 刀を交える澄音を感じ取れ
儒楠にそろそろ剣技の披露をすると伝えると意気消沈して黙り込んだ。
「じゃぁ、ちゃんと刀、手入れしておけよ。オレ、セーブできる自信ないから」
「自信・・・」
けらけらと笑って学校へ向かう。
学校ではどうも例の『魔法使い』の話が随分と盛り上がっているようだった。人とは本当に面白い物だ。薪はそんな風に思う。
そしてふと。薪が教室の床に手を当てる。その直後に凄まじいまでの地震が起きる。腹の下から揺らぐ大きな地響き。教室中が振るえる。
「何!?地震?!」
「この揺れ普通じゃないよ!」
叫び声が聞こえる中、教室の窓が数枚割れて何かが入り込んでくる。それにクラス中が奇声を上げる。飛び入ってきたのは真っ黒いローブを身にまとった『ヒト』。そしてローブから見える手には長い刀身が見える。その殺気にピリッと教室の中が震える。困惑する教室内でその刀身だけが奇妙に光り輝いていた。
その刀身がきらりと光放ちクラスの中の男子に勢いよく振りかざされる。フードの隙間から見えた僅かな瞳に恐ろしい殺気の炎を垣間見る。襲われた男子はその恐怖で身体が震えている。
―カキンッ
教室中に響き渡った金属のぶつかる澄み渡った音。
「思い切ったことをするな」
薪が刀を構え、振りかざしてきた刀を受け止める。余りの勢いに気圧された男子は尻餅をついて震えている。その様子を僅かにだけ確認して薪は相手を吹っ飛ばす。刀を振り上げるとフードの奴は勢いよく後退する。
金属がぶつかり合う音。それは洗練された美しさを誇る中、当たると確実なる死が待っているのだろう。
相手による凄まじい勢いの一閃。それを受け流して相手へ刀を振りかざす。それを同じく刀ではじき返す相手。そういった剣技の攻防。余りの出来事に言葉すら、呼吸すら忘れてしまいそうになるほどの圧倒的勢い。
そうして再び、高い金属音が鳴り響いた。その後に地面に叩きつけられる金属の音。乱入してきた者が持っていた刀が薪によって弾き飛ばされた。
「さぁて。終わりだな」
薪が刀を相手の首下に突きつける。教室内の空気が少しどよめいた。